ポケットストーンでの本格的な研ぎの方法 | 北欧ナイフでお気軽アウトドア

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今日は、オイルストーン、それも特に小型の俗にポケットストーンと呼ばれる砥石を使っての研ぎをご紹介したいと思います。

 

 

おおよそ、多くのナイフ本では「研ぎに関しては、大きい砥石を用意したほうがいい」と書いてあり、それはそれで的を射ているのですが、小型のポケットストーンでもキチンとした研ぎが出来ない、というわけでは決してないのです。

 

 

ポケットストーンを使った研ぎは、やはりナイフ本でもよく出てきます。

が、その多くは「タッチアップ」にちかいもので、ポケットストーンを持って、ナイフをこすっていくような形を採ることが多いですね。

 

 

前口上はこんなところにして、さっそく実践してみましょう!

ちなみに、この実践には、プロのナイフメーカーである提灯じゃっくさんから教えて頂いたことを、ほぼそのまま反映させています。

 

 

使用する(実験台ともいう)ナイフは、Buckの105、パスファインダーと呼ばれるナイフです。

 

 

 

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ご覧いただいているように、かなり使いやすいナイフでして、大きさ、重量のバランスもグッドです。

多少ラフにも使えますし、一方で繊細で細かい作業にも問題なく使える。

安全性の高い、ナカゴのしっかりとしたシースが付いてくるのも魅力。

 

 

たまに私もやる、ストレートインデックスグリップ(握り手の人差し指をブレードバックに伸ばして添える)も、気持ちよく出来ます。

 

 

ナイフはともかく、次にポケットストーン。

 

 

これも、じゃっくさんを交えての、プチ研ぎワークショップにて、教えて頂いた砥石。

アーカンサスのトランスルーセント。仕上げ砥石(超仕上げ)でありながら、強力な研削力があり、研ぎあげると「うはー!」と思わず声を上げたくなる切れ味になります。

 

 

今回、写真に撮るため(映りやすくするため……)、あえてポケットストーンにはオイルを塗らずに撮影しています。

実践される際には、ちゃんとオイルを塗布してから研いでくださいね。

 

 

では、砥石の上にナイフをまず置いてみましょう。

 

 

砥石に対する角度は、斜めがいいと思います。

45°とか、色々言われたりしますけど、その辺りはやりやすい位置を探ってみてください。

 

 

さて、ここで注目して頂きたいのは、砥石とエッジとの関係。

エッジ面(ベベル面っていったほうが、分かりやすいかな?)が、上記写真では、砥石にぴったりくっついていません。

 

 

つまり、エッジと砥石の間に「隙間」があるんです。

これはたぶん、写真でも確認できると思うので、是非じっくりみてやってください。

 

 

この状態で研ぐと、「刃先」に砥石は当然ながらかかりません。

ベベル面の、カドッこだけが削れる、という感じになっちゃいますね。もちろん、全く研げていないわけです。

 

 

なので、角度を調整して、

 

 

こういう位置を割り出します。

これは十分目視出来るものです。またお手持ちのナイフによって角度は当然ながら変化します。

 

 

これが出来たらシメたもの。

研ぎの解説には「最初に角度を決めて、その角度を維持する」という金科玉条が書いてありますが、その「角度決め」は、このように目視しながらやれば完璧です。

あとは、実際に刃先(ベベル面)を研磨していくだけ……なんですが、ここも注意点があります。

 

 

この矢印のように、手前に引くような感じで研いでいきます。

人によっては、「横に引いていく動作」を意識したほうが上手くいく場合もあるかと思います。

その辺りも、練習するなかで、ご自身の最適解を見つけてみてください。

 

 

引きながら、キチンと「ベベル面が砥石にペタッとくっ付いているかどうか」確認しながら作業を進めます。ですので、ゆっくりと引いて全然大丈夫です。

 

 

研ぎの難所、アール部分であっても、「ペタッと砥石にベベル面がくっ付いているか」を確認しながらやっていけば、自然とナイフを握っている肘が、斜め後方に上がりキチンと研ぐことが出来ます。

研ぎの基本の「ブレードのカーブ部分では、肘を上げてベベルの角度を維持する」というのが、これです。

ちゃんと目視しながらやれば、これも問題なく出来るはずです。

 

 

ポイント部分に行くころには、かなり肘も持ち上がることになるはず。

 

 

ちょっとブレてしまっていますが、アールの最後~ポイントにかけてキチンと砥石にピタッとくっついて研げているのが分かると思います(にしても、一人で撮るのって難しいなぁ……)。

 

 

これを何度か繰り返せば、片面は終了です。

反対側のエッジを撫でてやれば、しっかりとバリが出ているのが分かるはず。

 

 

今度は反対側の面を研ぎます。

反対側の研ぎも、さきほどとやり方は同じ。

両利きだぜ! って人は、ナイフを今度は左側に置いてやればいいでしょうし(その場合、左手前に引きながら研ぐ)、右利きなら、今度はナイフを砥石の右手前に斜めにおいて、今度は優しく押しながら、右に引いていく感じで研げばいいでしょう。

 

 

裏面の研ぎは、砥石とベベル面をちょっと目視しづらい、というのはありますが、これも練習をすれば問題なく出来るようになります。

 

 

ちなみに、Buck105ですが、箱出しでも産毛が剃れる良好な刃がついていますが、若干刃先はザラリとしていました。

このトランスルーセントで、上記の方法で研いで「仕上げ研ぎ」をしてやると、怖いくらいによく切れるようになります!

 

 

中砥石などで仕上げる時も、この方法ですと、最初のベベル面を維持しながら綺麗に研ぐ、ことが出来るようになります。

 

 

あと、特筆すべきは、ポケットストーンは小型ですから、ポケットストーンを手に持って、反対の手でナイフを持ち、動かして研ぐなんてことも出来ます。

ポケットストーンを、目の位置だったり、ベベル面と砥石との密着がよく見える位置に持ってきて、それから研げば、さらに失敗は少なくなるかも。

 

 

ところで……この研ぎ方……気づいた方もいらっしゃるかと思います。

そう、ベベル面がやたら広い、北欧ナイフのスカンジグラインドの研ぎとおんなじなんですよね。

 

 

ベベル面の広さ・狭さによる違いはありますが、基本的に北欧のナイフもベベル面をベタッと砥石につけて、上記の感じでやっていけば、アール部分も綺麗に研ぎムラが少なく研ぎあげることが可能です(私は、最後に糸刃を入れちゃいますけれどもね)。

 

 

ま、とにかく、ポケットストーンはタッチアップだけじゃなくて、しっかりと本格的な研ぎも出来るってことです。野外で刃物を研ぐって、私はあまりやらないんですが、ポケットストーン(と、お弁当用醤油差しにオイルを入れたもの)なんかを持って行っても、役に立つシーン、多いと思いますよ。

 

 

 

じゃっくさんに教えて頂いたやり方に、自分なりの解説をつけてみたのが、今回の記事です。

個々人によってやり方に細かな違いはあるんですが、外国の人は、このタイプの研ぎ方をすることが多いように思えます。

 

 

そう、たとえば名作映画『タクシードライバー』の後半で、主人公がケーバーを研ぐ場面があるんですが、それも基本的に同じ研ぎ方だと言えましょう(彼はもっと素早く、表面→裏面→表面→裏面→……と、研いでましたが、やり方の基本そのものは同じだと思います。)。

 

 

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小刃がしっかりとついたナイフは、基本的にこのやり方で問題なく研げると思うので、是非気になった方は、実践してみてくださいね。

 

 

あっ、ちなみに、自分があれこれ砥石をかえ、ナイフをかえ、でやってみたんですが、やはり、オイルストーン(ベンチストーン)がやりやすいです。

多少力をかけて研いでも、刃先が石に沈まない硬さを持っているから、でしょうかね。

 

 

とはいえ、人によっては「水砥石でも全然いけるぜ!」って方もいらっしゃいましょうから、まずは試してみてください~。