1 県政課題に対する知事の基本姿勢について
(4) 新たな地方独立行政法人の設立に向けた取組について
(団長)
当事者目線の障害福祉を実現するためには、施設の利用者の暮らしが豊かになることを第一に考えるべきであり、その前提として、今、園が直面している課題にもしっかりと対応し、あわせて、令和8年4月に設立を目指す新たな地方独立行政法人の趣旨や目的を、改めて明確に示すことが重要である。
そこで、中井やまゆり園が直面する課題をどのように解決して、新たな地方独立行政法人の設立につなげていくのか、見解を伺う。
(黒岩祐治知事)
次に、新たな地方独立行政法人の設立に向けた取組についてです。
新たな福祉改革を進め、当事者目線の障害福祉を実現することは、津久井やまゆり園事件を経験した本県の責務であります。
これまで県は、県議会の皆様とともに、「ともに生きる社会かながわ憲章」や、「当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」を制定するなど、着実に歩みを進めてきました。
中でも、県立直営の中井やまゆり園では、これまで施設の居室内に閉じ込められていた利用者が、日中、外に出て、地域の方々と触れ合いながら活動した結果、笑顔が見られるようになりました。
一方、アクションプラン等の停滞や、医療の不在とも言うべき、いのちに関わる深刻な問題の発生など、当事者目線の支援はまだ十分に実践できているとは言えません。
そこで、今年4月に、停滞しているアクションプランの取組を積極的に進めるモデル寮を園内に設置し、徹底的に当事者目線に立った支援を実践し、効果的な取組を園全体に広げていきたいと考えています。
また、いのちに関わる問題については、医療・健康管理問題改革委員会で検討を進め、健康管理に関するガイドラインを今年度中に作成するとともに、職員が様々な事故や健康問題をためらわずに報告できる仕組みを構築し、解決につなげていきます。
さらに、先月、私は園に出向き、職員から支援現場の生の訴えを聞いており、アドバイザーと職員双方の話を直接聞いた私が先頭に立って、職場環境の問題にもしっかり対応していきます。
こうした諸課題の解決と合わせ、県は、当事者目線に立ったやさしく、あたたかい支援を実現するため、福祉現場に科学の視点を取り入れ、例えば、日中活動が、どのような効果をもたらすのか、当事者の声や、表情、健康状態をデータ化し、再現性のある支援を確立していきたいと考えています。
全国に先駆けて、新たな福祉改革を進めるためには、大学、企業と連携した複数年にわたる研究や、専門人材の育成が必要であり、これまでの県立施設の延長線では困難です。
そこで、この改革を一日でも早く進めるため、新たに地方独立行政法人を令和8年4月に設立します。
この地方独立行政法人が、新たな福祉をつくるフロントランナーとして、当事者目線に立った支援を行うことにより、ともに生きる社会を実現してまいります。
(団長)
園が直面する課題への具体的な対応について答弁があった。
令和8年4月に地方独立行政法人の設立を目指す知事の決意を改めて確認したい。
(黒岩祐治知事)
地方独立行政法人の設立を目指す決意についてお尋ねがありました。
私は、当事者目線の障害福祉を実現し、誰もが自分らしく暮らすことのできる「ともに生きる社会」を作ることが、津久井やまゆり園事件を経験した本県の責務であると、何度も訴えてきました。
そのためには、これまでの福祉が抱えていた課題の解決に向け、福祉が大切にしてきた「やさしさ」や「思いやり」のある支援を科学的に分析してデータ化することなどにより、当事者目線に立った再現性のある支援の実現を目指していく必要があります。
また、中井やまゆり園では、医療の不在という問題が指摘され、いわば利用者のいのちが危機に瀕していると危機感を持っています。スピード感を持って一日も早く改革を進めなければなりません。
この改革を進めるには、大学や企業、医療関係者等と連携した研究や専門人材の育成が必要で、それはこれまでの県立施設の延長線では困難であり、新たな地方独立行政法人の設立が不可欠だと考えています。
引き続き、県議会の皆様と志を一にして、新たな福祉をつくるフロントランナーとなる地方独立行政法人を設立し、当事者目線の支援を実践することで、ともに生きる社会実現を目指してまいります。
(団長)
中井やまゆり園が直面する課題への対応に、知事が先頭に立って解決を図るとの心強い答弁があった。
県は、真(しん)の当事者目線の障害福祉の実現、ひいては、地域共生社会の実現を目指して、引き続き県議会とともに、着実に前に進めていくことを要望する。