(28)都市農業の推進について

 

(副団長)

 2020年の農林業センサスでは、5年前に比べて農業経営体数が減少する一方で、基幹的農業従事者の65歳以上の割合が上昇し、担い手不足と高齢化は同時に進行していることが窺えます。

 そのため、県内でも、生産意欲が減退し、離農を余儀なくされる農業従事者もいると聞いており、このままでは、本県の都市農業が立ち行かなくなるのではないかと危惧しています。

 一方、県内各地でも、畑や水田の見回りなど農作業の省力化を図るため、スマート技術を導入する取組が始まっています。

 都市農業が果たす機能や役割を次世代に継承していくためにも、県が担い手の育成・確保や生産性の向上、環境に配慮した持続的な農業生産の支援などに、しっかりと取り組んでいく必要があると考えます。

 そこで、本県農業を取り巻く環境の変化に対応して、都市農業の推進にどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。

 

(黒岩祐治知事)

 まず、都市農業の推進についてです。

 本県の農業は、全国に比べて農家1戸当たりの農地面積は小さいながらも、高い技術力を生かして、魅力ある野菜や果実などの農産物を効率的に生産しています。

 こうした、本県の都市農業を維持・発展させるためには、若手農業者の育成・確保を図るとともに、更なる生産性の向上や、脱炭素にも配慮した持続可能な農業の実現を支援する必要があります。

 これまで、県は、農業技術センターの普及指導員が、農業者の技術力に応じたきめ細やかな栽培指導を行うなど担い手の育成に努めてきました。

 また、湘南ゴールドのような付加価値の高い新品種の開発や、点在するビニールハウスを自動で集中管理するスマート技術の普及などに取り組んできました。

 今後は、若手農業者に対し、新規就農時に必要となるトラクター等の導入を補助するなど、新たな担い手の確保に向けた取組を強化していきます。 

 また、産地の特性に合わせて、草刈ロボットやドローンなどのスマート技術の導入を支援することで、地域ぐるみでの生産性の向上を図ります。

 さらに、太陽光発電等を利用したビニールハウスの暖房装置の導入を進め、化石燃料に依存しない持続的な脱炭素農業モデルを普及させていきます。

 県はこうした取組により、本県農業を取り巻く環境の変化に対応した都市農業を推進し、県民の皆様に新鮮で安全・安心な食料を提供してまいります。

 

(副団長)

 知事からは、農業の担い手の確保について本県の取組を伺いました。

 農業の担い手が減少する中では、個人以外に企業の参入を促進していくことも重要だと考えますが、企業が農業参入するにあたっては、スケールメリットを生かせる大面積のビニールハウスを建設できることが要件となるケースがあるとも聞きます。

 そのビニールハウスの建設について、本県が建築確認を所管する市町村では、高さが8m以下、面積が5,000㎡以下など一定の基準を満たさない限り、建築物として取り扱い、建築確認を要することとされています。

 そこで、こうした現行の規制を見直すことで、新たな企業の参入を促進することも、都市農業の推進につながると考えますが、知事の見解を伺います。

 

(黒岩祐治知事)

 それでは再質問にお答えいたします。

 まず、ビニールハウスの件でありますけれども、ビニールハウスの建設については、建築基準法上の取扱いが自治体で異なっておりまして、農地と住宅や店舗などが近接する場合がある本県では、近隣への影響なども考慮して、高さや面積などに一定の制限を設けています。

 現在の基準は、平成25年4月に、現場の要望や技術発展などを勘案して見直したものですが、本県農業の担い手を確保し、都市農業を推進するため、近年の状況を踏まえた見直しが必要と考えています。

 そこで、今後、県内市町村と意見交換を行い、見直しの対象を農業振興地域に限定することなどで近隣への影響に配慮しつつ、高さと面積の上限については全面的に廃止する方向で早急に取扱いを見直してまいります。

 

(副団長)

 それでは要望させていただきます。

 まず、都市農業の推進についてです。

 農業の担い手の高齢化や減少に加えて、昨今の不安定な社会情勢による生産コストの上昇が、農業経営に負担となっており、本県の都市農業の存続が危ぶまれる状態にあります。

 都市農業を持続させ、次世代に継承していくためにも、新規就農者や企業参入を促進して担い手を育成・確保し、地域を挙げてのスマート技術の導入支援や環境に配慮した持続的な生産モデルの普及にも、県としてしっかり取り組むよう要望します。

 また、ビニールハウスの建設については、農業振興地域を限定した中で高さや面積について、市町村の意見を聞きながら、制限は廃止するとのことでありますが、出来るだけ早い時期に実現するよう要望いたします。