【神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例が目指す理念の具現化について】

 

(筆頭副団長)

 条例の議決にあたって、県議会からは、施策の推進についての意見が付された。条例では、基本計画を定めるとしているが、当事者目線の障がい福祉等の実現には、実効性ある取組が必要である。

 また、県立障害者支援施設は、今後、この条例を規範に、当事者目線の障がい福祉を実践すべきであり、特に、利用者支援やガバナンスの問題を指摘されている、県立直営の中井やまゆり園は、民間施設の協力を得ながら、県が責任を持って早急に改善を図る必要があると考える。

 そこで、「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」が目指す、当事者目線の障がい福祉や地域共生社会を具現化するために、どのように取り組んでいこうと考えているのか、また、中井やまゆり園の再生に向けた、現在の取組状況と今後の方向性について、併せて、見解を伺う。

 

 

(黒岩祐治知事)

 次に、神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例が目指す理念の具現化についてです。

条例が目指す、「当事者目線の障がい福祉」を具現化するためには、県民の皆様の理解をはじめ、重度障がい者の地域生活移行の推進や、支える人材の不足といった大きな課題に取り組んでいく必要があります。

 そこで、障がいに対する地域の理解を促進するため、あらゆる世代が、障がい者と一緒に活動する機会を増やすとともに、条例の分かりやすい版「みんなで読める神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」などを活用し、県民全体への周知啓発を進めます。

 また、重度障がい者を受け入れることができるグループホームなどの地域資源や、本人が望む生活の実現に向けた相談支援体制の充実などを検討していきます。

 さらに、人材の確保については、福祉に関心のある学生や、福祉関係の経験のある高齢者などを、着実に就労につなげていくための方策や、専門性を有する人材の負担軽減が図れるよう、支援補助員を配置するなど、職員の定着に向けた環境整備の検討を進めていきます。

 こうした取組を、来年度策定する条例の基本計画にしっかりと盛り込み、条例の具現化を図っていくべきと考えています。

 次に、中井やまゆり園の再生に向けた取組状況と今後の方向性についてです。

「人権意識の欠如」や「マネジメント機能の喪失」といった指摘を受けた中井やまゆり園は、民間の支援改善アドバイザーの力を借りながら、現在、再生に向けた取組を進めています。

 この取組の中で、1日の生活をほぼ居室の中で過ごしていた利用者が、居室から出て、他の利用者と一緒に古い手帳の解体作業といった日中活動に参加したり、公共交通機関を使って、施設外の事業所に通うなど、変化が見られはじめています。

さらに、今月からは、秦野の駅前に活動の拠点となる場を確保し、公園清掃や花壇整備など、地域活動への参加などもはじめました。

 こうした利用者の変化を目の当たりにした園幹部職員はリーダーシップを発揮しはじめ、併せて直接支援に当たる職員も、利用者の可能性に気づき、意欲が高まるなど、園における改善の兆しが見えています。

さらに、この取組を継続していくために、現在、外部有識者等で構成する「支援改

革プロジェクトチーム」で、改革プログラムをとりまとめていただいています。

その内容は、支援方法の改善策や日中活動の更なる充実策に加えて、職員体制の見直しなども盛り込み、これを実践し、継続的な取組としていきます。

 生まれ変わった中井やまゆり園が、条例が目指す、「当事者目線の障がい福祉」を先頭を切って具現化していけるよう、園の再生に全力で取り組んでまいります。

 

(筆頭副団長)

 今後、実効性のある取組を進めていくためには、まずは県職員が率先して、当事者目線の障がい福祉に対する認識を深めていかなければならないと考えるが、どのように取り組んでいくのか伺う。

 

(黒岩祐治知事)

 当事者目線の障がい福祉の実現に向けては、まずは、県職員が「当事者目線」を深く理解し、実効性ある施策の実践につなげていく必要があると考えています。

 そこで、私がトップを務める県の共生推進本部において、幹部職員に対し、条例の理念をしっかりと伝えるとともに、職員一人ひとりに理念の浸透を進めるための効果的な方策について、意見交換を行っています。

また、新規採用職員をはじめとした若手職員に対しても、津久井やまゆり園の鎮魂のモニュメントを活用して、誓いを新たにした 上で、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念や、県が目指す「当事者目線の障がい福祉」の理解に向けた研修を行っているところです。

 今後は、障がい当事者を講師とした研修を実施するなど、工夫を重ねながら、さらに県職員の理解を深め、条例の目指す地域共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

(筆頭副団長)

 条例制定は、あくまでスタートである。ゴールではない。この条例が目指す理念をいかに具現化していくかが、今後の課題である。そのためにも県職員全員が条例の理念を共通認識し、目指す理念を具現化していくことを要望する。

 

(藤沢市肢体不自由児者父母の会のクリスマス会にて、私の後輩とそのお兄様と)