(市川)

 本県では、既にかながわ高齢者保健福祉計画にケアラーという言葉を掲げている。今後大切なのは、具体的な支援をどのように進めるかということだが、ケアラー支援は従来どおりでは済まない課題が多い。

 介護する方自身が自分の人生を歩んでいけるための支援ということを明確にすべきであり、そのためには、地域との連携も大事である。

 ケアラー支援は、福祉、教育、産業労働等、様々な分野に渡った課題を包含している新しい概念であることを共有しなければならない。

 県内市町村においても、独自に調査研究を行って施策を展開しているところもあるが、市町村だけでは限界があるとの声も聞いている。

 そこで、ケアラー・ヤングケアラー支援を県としても様々な計画に位置付け、県民の理解を得ながら、市町村とともにより具体的な支援に取り組むべきと考えるが、見解を伺いたい。

 

(黒岩知事)

 様々な課題を抱えたケアラー・ヤングケアラーに対する支援は、身近な市町村できめ細かく対応していくことや、福祉・教育・雇用など、様々な分野が連携して関わっていくことが重要です。

 しかし、ケアラー・ヤングケアラーへの支援は始まったばかりであり、市町村の支援体制も十分整っているとは言えないことから、県が広域的、専門的な立場から率先して支援に取り組み、市町村を後押ししていくことが必要です。

 これまでも、市町村がヤングケアラーの実態調査を行う際には、先行事例の情報を提供し、県教育委員会と連携しながら、協力してきました。

 今年度は、電話やLINEによるケアラー・ヤングケアラー専用の相談を開始するとともに、福祉における相談経験のある方などを「ケアラー支援専門員」として新たに配置し、市町村や学校、NPOなどの関係機関のネットワーク化を図っていきます。

 また、ケアラーの居場所である「ケアラーズカフェ」の立ち上げや、ヤングケアラーへの学習支援を行う団体を支援して、その成果を市町村に伝えていきます。

 今後、こうした取組を通じて得られたノウハウや課題を、市町村をはじめとした関係機関と共有しながら、さらなる支援策の充実に向けて検討していきます。

 また、各分野が連携して取り組めるよう、今年度改定予定の「青少年育成・支援指針」や「地域福祉支援計画」をはじめ、様々な分野の計画にケアラー・ヤングケアラー支援を位置付け、周知を図りながら、分野横断的に取組の実効性を高めていきます。

 ケアラー・ヤングケアラーが自分の希望する人生や日々の暮らしが送れるよう、市町村とともにしっかりと支援に取り組んでまいります。

 

 

(市川)

 地元からの声を紹介させてください。

 ヤングケアラーで言えば、小中学生は市町村立、高校生は県立高校に通っています。もちろん私立に通っている方もいますけれども。どちらかの学校で「この子はヤングケアラーだ」と気づいたとしても、県と市町村にはそれぞれの支援の仕組みがあり、連携がとれなければ、家族を支えることはできません。

 藤沢市のヤングケアラー調査でも、最も顕著だったのは、精神疾患を抱える家族をケアする子どもたちの存在でありました。精神障害の場合、支援は県の精神保健福祉センターと、保健所の役割です。藤沢市のように保健所設置市なら、市だけで支援が完結いたしますが、そうでない市町村は、県との連携なしには支援ができません。

 これはヤングケアラーだけではなく、精神疾患のある家族を持つすべてのケアラーに共通することだと思っています。

 さらに言えば、ケアラーの出現率が高かったのは、外国につながる子どもたちでした。特に、医療通訳については、市町村だけですべての言語をフォローすることは無理で、特定NPO法人の多言語社会リソースかながわ(通称:MICかながわ)に多くを負っていると聞いております。

 ケアラー支援で最も重要な介護の場合も、広域連携での運営が行われているわけでありますから、県と市町村での役割分担が一層重要になるわけであります。

 そういう意味では、県がケアラー・ヤングケアラー支援の位置づけを明確にすることは、市町村にとってもメリットがあることだと思います。ご答弁にもありましたように、しっかりと市町村がそれぞれの役割を担い、連携し、具体的な支援を行うよう要望いたします。