「旅たち」
大学進学で家を出る。
社会人になって家を出る。
結婚して家を出る。
家を出る理由はそれぞれだが、
大体は子供が家を出るパターンが多いのでなかろうか。
2006年4月16日、愛車のトヨタプレミオに乗り込み、22歳の息子、29歳の娘に見送られ横浜の我が家を後にする。
55歳で再婚し相手が住む北海道への旅たちだ。
仙台で太平洋フェリー「きそ」に乗船。
20時出航。
北海道苫小牧まで、14時間45分の大海原の航海が始まる。
洋室ツイン。トイレ、シャワー、テレビ、冷蔵庫などなどホテルとなんら変わることはなく快適な船旅のはずだったが、微熱あり体調不良。
ラウンジショーもシアターも何も観ることが出来なかったが、ジャグシー付きの展望大浴場には感動。
広大な星空を眺めながらお湯に浸かる。
これほどの感動は久しく感じたことはない。
体調不良とはいえ、大きな窓から広大な海を一望しながらの生ビールは格別。
船酔いもなく船上での朝を迎える。
20時出航だったので、暗闇から夜明けの大海原は言葉をのむほどの静寂さに溢れていた。
とうとう北海道に上陸。
ここから新たな人生が始まる。
そして16年が経った。
北海道での16年は、それはそれはよく揺れ動いた月日の連続。
それでも横浜に戻りたいと思う事は一度もなかった。
北海道が性に合っていたようだ。
息子も横浜から移り住むようになった。
北海道が人生の終焉になりそうだ。