★★★★★

 

 ノワール小説の印象が強い馳星周さんの作品ですが、

本作は全然ジャンルが違います。
「雨降る森の犬」や直木賞を受賞した「少年と犬」みたいに、人間ドラマもしっかり描けるんですよね。
しかも文章が上手。

 本作は一頭の競走馬カムナビに夢と情熱をかける人々の
人生をかけた物語が何重にも織り込まれたように描かれています。

 生産者、馬主、調教師、調教助手、厩務員、騎手。
人が手をかけてやらなければサラブレットは生きていけないし、存在意義を示すこともできない。

 しかし、きらめく才能を磨き上げられ
ひとたびG1にでも勝とうものなら、
その馬を取り巻く人間たちの環境や人生までをも
大きく好転させるような影響力をはなつ。
「G1に勝つ馬は神」という言葉の意味が
本書を読んでとてもよく分かりました。

 ですが、カムナビの活躍はそこで終わりません。
カムナビをうみだした牧場主の夢は
いまだ日本馬が勝利したことのない凱旋門賞に勝つこと。
そこへむけて物語はどんどん加速していきます。

 かなしい要素も含まれていますが、
総じて大変面白く読ませていただきました。
おすすめです。