F1スチュワード、マックスの懲罰を詳細解説。「巧妙さ」と「威圧」の背後にあるシューマッハの影響 | 北海熊の独り言

F1スチュワード、マックスの懲罰を詳細解説。「巧妙さ」と「威圧」の背後にあるシューマッハの影響

最終盤のクラッシュが物議を醸したF1オーストリアGPでドライバースチュワードを務めたジョニー・ハーバートが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)に対するペナルティ裁定の意思決定について詳しく説明した。

 

残り8周のターン3で発生したランド・ノリス(マクラーレン)との接触事故を招いた「主な責任」があるとして、ハーバートを含む4名の競技審判団は10秒ペナルティと2点のペナルティポイントをフェルスタッペンに科した。

 

ノリスはリタイヤを余儀なくされ、フェルスタッペンは5位でフィニッシュした。6位以下とのギャップが10秒を優に超えていたため降格に至ることはなく、今回のペナルティが最終リザルトに影響を与えることはなかった。

 

スチュワード権限で科すことができるペナルティには10秒よりも厳しいドライブスルーやストップ&ゴーがあるが、レギュレーションやガイドラインは違反の種類に応じて適用可能なペナルティの種類を定めている。

 

マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、もっと厳しいペナルティを科すべきだったと間接的に主張したが、ハーバートは「重要なのは一貫性だ。我々はFIAの規則に従わなければならない。接触があれば10秒のペナルティが適用される。それが一貫性だ」と指摘し、次のように一蹴した。

 

「マクラーレンはもっと厳しくすべきだと言っているが、それはマクラーレンに限らずすべてのF1チームがやるゲームに過ぎない」

 

「これはFIAのガイドラインに基づき、我々がスチュワードとして適用できる最も厳しいペナルティだった」

 

「誰かが横転したりしていれば、どうなっていたかは分からない。今回のケースはコース外に追いやる、あるいは事故を引き起こす行為に該当するもので、10秒は我々が取り得た最大の制裁だった」

 

「あれは行き過ぎた動きだ、と言っても意味がない。一方のドライバーが他のドライバーを少しばかり押し出す際にちょっとしたミスを犯し、それが接触につながったのだ」

 

「ペナルティには段階を設けるべきではない。そうすると問題はよりややこしくなり、より主観的になるからだ。事故を細分化すると問題が増え、一貫性がなくなり、誰もが不満を抱くことになる」

 

ノリスは事故に至る前、ブレーキング中に進路を変更したとして、フェルスタッペンのディフェンスに不満を示していたが、ハーバートらスチュワードは接触へと至った事故以外のフェルスタッペンの動きを問題視しなかった。

 

「マックスのようなドライバーの良いところは、たとえ彼がそれに同意しないとしても、自分の武器を違う方法で使う道を見つけ出すところにある」とハーバートは語る。

 

「我々はスチュワードとして彼の制動時の状況を注意深く調べたが、(違反に繋がるような)ハッキリとしたものはなかった。巧妙だった。これによってランドは特定のコーナーで、右と左のどちらに行くべきかの判断が難しくなった」

 

「(今回のペナルティを受けてなお)彼はどうにかして調整し、別の方法を見つけ、対戦相手に対して同じプレッシャーをかけ続けるだろう」

 

ハーバートはフェルスタッペンを「打ち負かすのが本当に、本当に難しいハードなレーサー」と呼び、コース上でのライバルに対するスタンスを「威嚇的」と評した。

 

ハーバートによるとその「威嚇的」なドライビングは、ルイス・ハミルトン、ミハエル・シューマッハ、そしてアイルトン・セナのレジェンド3名に共通するものだという。

 

「それは武器の一部として常にマックスに備わっていたものだ。ここ暫くは彼が圧倒的な強さを誇っていたため、それを目にする機会がなかっただけだ」とハーバートは付け加えた。

 

 

フェルスタッペンに若き日のシューマッハを感じるか?と問われたハーバートは「そう思う」と答えた。

 

「例えば、ミハエルがデイモン・ヒルやジャック・ビルヌーブと起こした事件を思い返してほしい。彼は特定の状況から利益を得るためにあらゆることをした」

 

「マックスの父、ヨスはベネトンでミハエルと一緒にレースをしていたから、ミハエルがどんな風に振る舞っていたかを直接見ていたはずだ」

 

「私はヨスが若い頃のマックスにこう言ったのを想像できる。『サーキットでは全てのドライバーを威圧して追いやるようにドライブしろ。誰よりも厳しいドライバーとなってレースに勝て』とね」

 

「マックスのドライビングスタイルはヨスのアドバイスと、ミハエル・シューマッハと共に走った経験によってヨスの中で形作られた部分によるところが大きいに違いない」

 

「マックスのスタイルは今後も決して変わることはないだろう。それは彼の中に根付いているのだ」