ルノー、F1エンジン供給者からの撤退を検討との報道「アルピーヌ・ホンダ」誕生の可能性も | 北海熊の独り言

ルノー、F1エンジン供給者からの撤退を検討との報道「アルピーヌ・ホンダ」誕生の可能性も

仏大手自動車メーカー、ルノーが、FIA-F1世界選手権におけるパワーユニット(PU)サプライヤーからの撤退を検討しており、供給先で傘下のアルピーヌが他のエンジンメーカーとの協議を開始したと英AUTOSPORTが報じた。

 

報道によるとルノーは、2026年型PUの開発を中止してアルピーヌをカスタマーチームに転換する計画を評価、検討しており、これを受けてアルピーヌのブルーノ・ファミン代表が「代替案の可能性」を探るためにライバルメーカーと話し合いを行っているという。

 

次世代パワーユニットの開発費がルノー本社の重荷になっているという噂や、現状でのパフォーマンス不足を次世代パワーユニットでも巻き返せないとルノー上層部が判断し、次世代パワーユニット開発から撤退するとの噂がパドックでは流れていた。

 

 

2014年のV6ハイブリッド・ターボ導入以降、ルノー製PUはタイトル争いに絡めておらず、現行スペックはホンダやメルセデス、フェラーリに比べて15~25Kw (20~33馬力)ほど出力が劣っているとされ、2026年に導入される次世代PUでの巻き返しが疑問視されている。

 

既に次世代PUの開発は進められておりサンクコストの発生は避けられないが、それでも巨額の費用を節約することは可能であり、また、FIA世界耐久選手権(WEC)のハイパーカープロジェクトへの技術ノウハウの転用によって開発コストの一部を回収するシナリオも考えられる。

 

ルノーに代わる代替メーカーについては、複数チームへの供給経験を持つ既存メーカーが第一候補になると思われる。ザウバーがカスタマーの傘から抜けるフェラーリ、そして同様にアストンマーチンへの供給が終了するメルセデスは有力候補と言える。

 

フォードと提携して初の自社製PUに取り組むレッドブル・パワートレインズも候補となり、既に会合を持ったと言われているが、新規のプロジェクトであることに加え、レッドブル・レーシングおよび姉妹チームであるRBへの供給が確定事項であることから、生産リソースやロジスティクスなどの観点から、更なる供給先を望む可能性は低いと考えられる。

 

供給先が見つからない場合、国際自動車連盟(FIA)はF1競技規定の定めに従い、”既存メーカーの中で最も供給数が少ないパワーユニット製造者”に対し、アルピーヌへの供給を要請することになる。

 

(※FIAが要請した場合、製造メーカーに供給義務が生じるが、製造メーカーの供給先に対する供給料金の上限を決める権限はFIAにはない。また、FIAに指名された製造メーカーが、色々な理由から増産能力がないと拒否した場合には協議をし、FIAに増産能力がないと認められれば、FIAは別の製造メーカーを再度指名することになる。そういうことから、製造メーカーが供給先と供給料金が折り合わない、又は、FIAが製造メーカーに強制的に供給を強いた場合、製造メーカーが撤退をチラつかせる事象が出てくることが考えられる。その時FIAは打つ手がなくなってしまうが、どう対処するのだろうか…)

 

アウディの供給先はザウバーのみだが、新規参戦メーカーは要請の対象外であり、このシナリオにおいてアルピーヌに供給する義務はない。

 

ホンダは2021年末を以て撤退したが、今もテクニカルパートナーという肩書でレッドブル及びRBにパワーユニットを供給しており、最終的にFIAが白羽の矢を立てる可能性は高い。この場合、「アルピーヌ・ホンダ」誕生の可能性が考えられる。

 

なお、仮にルノーがPUサプライヤーから撤退した場合、英国エンストンのチームが以降もアルピーヌを名乗るのかどうかも注目される。

 

 

アルピーヌのエンジン事情は流動的だが、ルノーのルカ・デ・メオCEOは最近、潜在的な買い手からの関心があるにもかかわらず、F1におけるアルピーヌの将来にコミットしていると明言した。

Autocar誌のインタビューでルカ・デ・メオは「それは私のスタイルではない。我々はこの一部であっても売却しない。お金は必要ない。私はあちこちでオファーを受け、マスコミで取り上げる人がいた。しかし、私たちは興味がない。愚かだし、そんなことはしない」

 

しかし、長時間のインタビューの中で、彼はルノーがターボハイブリッドエンジンのルールを一度もうまく乗り越えられなかったこと、そしてそれが現行のレギュレーションサイクルを通じてパフォーマンスを犠牲にしてきたことを言及した。

「ハイブリッド時代(2014年)が始まったとき、我々のエンジンは機能しなかった」とデ・メオは語った。「我々はレッドブルで世界チャンピオンになったが、ハイブリッドになると物事がうまくいかなくなった」

「2021年に開発したエンジンでさえ、毎周0.2秒から0.5秒のディスアドバンテージがあった。そして今年は、マシンで失敗してしまった。すべてを合わせると、必要な位置より1.5秒も遅れている」

エンジンを切り替えることで、アルピーヌはより安価で競争力がある可能性のあるパワーユニットを確保できるだけでなく、カスタマーチームになることで、F1への取り組みにヴィリー・シャティヨン・エンジン部門のレガシー要素が関与しなくなるため、将来的にチームを売却しやすくなる可能性もある。

パリ近郊にあるルノー・スポール・レーシングの本部であるヴィリーは、1970年代からフランスメーカーのF1エンジンを設計・製造してきた。

 

グランプリレースから撤退することは、同社の重点分野における劇的な転換を意味する。しかし、モータースポーツ活動には、まだ多くの可能性が残されている。

これには、現在、改良型メカクロームF2エンジンとスペックハイブリッドシステムを搭載したWECハイパーカーのパワーユニット開発支援も含まれる。

アルピーヌはAutosportの取材に対し、この件についてコメントを控えた。