チームオーダーに不満のオコン、原因は自分自身か…アルピーヌ「ハースに抜かれるリスクがあった」 | 北海熊の独り言

チームオーダーに不満のオコン、原因は自分自身か…アルピーヌ「ハースに抜かれるリスクがあった」

F1第9戦カナダGPでアルピーヌは、ピエール・ガスリーが9位、エステバン・オコンが10位入賞を達成した。ただレース終盤にチームがオコンに対してポジションをガスリーに明け渡すように指示を出したことについて、オコンは納得がいっていない様子だった。

 レース終盤、オコンは角田裕毅(RB)を交わして8番手に上がったが、その角田がスピンしたことでガスリーも入賞圏内の10番手に上がってきた。そして残り3周でオコンがダニエル・リカルド(RB)に抜かれて9番手に落ちると、その背後にはガスリーが迫った。

 そして70周のレースの69周目で、チームはポジション入れ替えを指示。ガスリーが9番手、オコンが10番手となったが、この時点で8番手リカルドとの差は約2秒。ガスリーは最終的にその差を1.3秒まで縮めたがバトルに持ち込むには至らず、むしろ後ろのオコンが0.292秒差に迫ってのチェッカーとなった。

 ガスリーにリカルドを攻略するチャンスを与えるためのポジション交換だったわけだが、オコンはそれが叶わなかったにもかかわらず、ポジションを戻す約束が果たされなかったことに憤りを示している。

「いや、あれは説明できないね」

「僕はドライバーとして常に指示に従ってきた。今回だってそうだ。僕はナイスガイなんだ!」

「僕は自分の仕事をしたけど、正直チームはそうではなかった。フェアじゃなかった。この展開にはとても苛立っている。色んな理由があると思うけど、今回は“疑わしきは罰せず”といったところかな」

 オコンはレース後にそう語っている。ただ、詳細を見てみると、アルピーヌが最終的にポジションを戻さなかった理由が浮かび上がってきた。

コース上の展開は?

 カナダGP終盤、ガスリーは10番手のリカルドを急速に追い上げ、数周にわたって攻め立てていた。一方で、外部からは分かりづらかったが、8番手を走っていたオコンはエネルギーマネジメントの問題に対処していたことでペースに悪影響が出ており、さらに後方から迫られてしまう危険性があった。

 角田のスピンによるポジションアップの後、オコンではリカルドに対して反撃できないと判断。そのため、68周目にオコンに対してガスリーを先行させるように指示を出した。問題があったとすれば、当初は指示の理由が説明されておらず、オコンが説明を求めることになった点だろう。

 レースエンジニアの説明にオコンは、ガスリーがリカルドを追い抜けなかった場合、ポジションを戻すように確約を求めた。

 そして最終的に折れ「オーケー、彼を先に行かせる。でも最後は正しいことをしてくれ」と付け加えた。

 オコンは69周目のターン7と8と間でガスリーを先行させた。ただガスリーがリカルドを追い抜くには残りの周回数が足りなかった。

 最終ラップの終盤には、オコンがガスリーからポジションを戻されることを期待していたが、結局その瞬間がやってくることもなかった。

 ラストラップの最終シケイン前でオコンにはこう伝えられた。

「エステバン、クルマの入れ替えは行なわない。最後までプッシュしてくれ」

 だからこそ、オコンは前述のように怒りを示すことになった。ただ、アルピーヌの再度入れ替えを行なわないという決断は、後方から迫っていたハースのニコ・ヒュルケンベルグにポジションを奪われる可能性を危惧していたことによるものだった。

チームの見解

 

 

アルピーヌのブルーノ・ファミン代表はカナダGPでの一件について、ポジションの入れ替えが容易なものではないと認識していると語る。そしてチームの無線やその後のコメントにかかわらず、気持ちを切り替えていると心配している様子はなかった。

「本当の意味での摩擦は起きていない」とファミン代表は語る。

「彼らはドライバーであり、片方のドライバーにチームメイトへポジションを譲れと頼むのは、基本的に簡単なことではないんだ」

「しかし我々はそれを実行した。チームのためにそれを選んだんだ。エステバンはエネルギーマネジメントに少し苦戦していて、エネルギーをかなり消費してしまっていたと思う。そして我々は後ろにハース勢を従えていた」

「エステバンが後ろ全員を遅くさせていた。それはテレビでも明らかなことだったし、我々はハースの2台に追い抜かれるリスクがあった。だからこそ、我々はあの指示を出した」

「彼らはレースが終わって色々と話しているが、翌日には我々は気持ちを切り替えている」

 なおオコンは第8戦モナコGPでガスリーと同士討ちを発生させたこともあり、今回のチームオーダーを巡るドラマがより注目された面もある。ただ、アルピーヌにとってこうした状況は初めてではなく、昨年の日本GPでのポジション交換でも怒りが渦巻いていた。

 ファミン代表は、チームが目指しているものは各ドライバーにとっての理想ではなく、チームの利益にあると強調した。

「彼らは彼らの結果やキャリアのために戦っている」

「しかしアルピーヌでは、目指すものは一つだけだ。それは非常に明確で、チームの利益が第一なんだ」