【F2】宮田莉朋、イモラで試した新しいアプローチ。間一髪の接触回避で飛び出した自己考察
5月17~19日に行われた2024年FIA F2第4戦イモラの直前に実施された囲み取材にて、「コースをしっかりと理解していいレースにしたい」と語っていた宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)。しかし、イモラではマシントラブルに見舞われ十分にマイレージを重ねることができないままフリー走行を終えることになった。
2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権、そしてスーパーGT GT500クラスのダブルチャンピオンである宮田にとって、FIA F2の開催されるサーキットはELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズで経験したスペイン・カタロニアと、WEC世界耐久選手権でスポット参戦したベルギーのスパ・フランコルシャンを除けば未経験の地となる。
それだけに、各サーキットの限界をフリー走行の短い45分間で掴むことが予選、そしてスプリントレースとフィーチャーレースを制する上での鍵となることから、宮田はチーム側にフリー走行のランプランについて要望を出したという。
「予選に向けてはショートラン(アタックシミュレーション)も大切ですが、まずはコースを覚えるということに重点的を置いて周回数を重ねたいと考えました」と、第4戦イモラ終了後に実施された囲み取材で語った宮田。
チーム側も宮田の要望を尊重し、周回数を重ねるランプランで臨むはずだった。しかし、イモラのフリー走行ではステアリング上のディスプレイ表示が消えたほか、センサートラブルによりエンジンリミッターのポジションが変わってしまうといった予期せぬマシントラブルが多発した。計時上、宮田はフリー走行で15周を走行したことになっているが、その多くの周回がピットから出ては戻るというアウト・インラップとなった。
全開走行に臨んだ周回もあったが、それもトラブルを抱えた状態かつ、速さに影響する部分にもマシントラブルの影響があったこともあり、コースへの理解が十分とは言い切れない状況でフリー走行を終え、30分間の予選に臨むことになった。
予選ではライバル勢にトラックリミット違反によるタイム抹消が続出するなか、トラックリミット違反のなかった宮田は暫定12番手で予選を終えた。しかし予選終了後に、複数名のトラックリミット違反によるタイム抹消が取り消しとなり、修正暫定結果及び正式結果において宮田は16番手となった。
この経験を「トラックリミットなんか関係ないというくらいに縁石も使えるようにならないとイモラは速くは走れないんだということは勉強になりました」と宮田。
「たとえば、ターン14と15のシケイン(ヴァリアンテ・アルタ)をヨーロッパで走り慣れたドライバーたちは当たり前のようにイン側をカットしていきます。そうしないとシケインのふたつめ(ターン15)がキツくなるからです。さらに、データ上のコーナリングスピードは同じでも、イン側の縁石をカットするか否かで距離が変わることから、タイムにも大きくゲイン(得られる部分)があります」
「それだけに、ターン14でシケインをできるだけカットして短距離でターンインし、ターン15は出口に向かって早めに加速するという走り方が欠かせませんが、これも日本にはあまりないコースレイアウトでしたね」と宮田。予選での学びを得て、スプリントレースとフィーチャーレースではシケインのインカットも「使えるだけ使おう」という意識で臨んだと振り返った。
【ターン14のボラードギリギリまでインカットするポールシッターのガブリエル・ボルトレート(インビクタ・レーシング/マクラーレン育成)】
25周のスプリントレースを終え、さらに経験と学びを得た宮田。タイヤ交換義務を有する35周のフィーチャーレースでは、セットアップにも大きな変更も実施し、上位浮上を狙った。ただ、2周目のターン3(タンブレロふたつ目)でコースオフを喫したデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)が、続くターン4で宮田のすぐそばで強引なコース復帰を行う。あわや接触という状況となるなか、回避行動に出た宮田はコースオフを喫し、17番手から21番手までポジションを下げてしまう。
このハウガーのコース復帰は、宮田の回避行動がなければ接触に至ったものだった。ただ、コースオフ直後の宮田は自分を責めていたと、その時の心境を振り返る。
「自分は(ハウガーが)ラインは残してくれないだろうという思い、少しワイドなライン取りをしました。その結果、グリップを失ってコースオフしてしまった、という認識でした。コースオフ直後は(ハウガーが)ラインを残してくれていたかどうかもわからなかったので、相手を信用して自分も順位を失わないようにすべきだったかなという思いでした」
「アクシデントなどでレース結果が変わっても、相手がどうであれアクシデントに巻き込まれる場所に自分がいたのが悪いという考えだったので、『やってしまったな』という自責の念を抱きながらのフィーチャーレースでした。ただ、レース後にチームと話すと、『ハウガーから謝罪はあった?』と聞かれました」
「チーム側も『あれは絶対に接触するアクシデントだったし、なぜペナルティが出なかったのかがわからない』と、抗議ではないのですがFIA国際自動車連盟に説明を求めるほどで、そこでようやく自分は間違ったことはしていなかったんだと知りました。ちなみに、彼からは謝罪とかはありませんでした」
その後のレースペースは上位勢と遜色なく、コースオフまで宮田が先行していたダムス・ルーカスオイルの2台が7位と8位に入ったこともあり、コースオフがなければ宮田の入賞の可能性は十分にあった。フリー走行、予選、スプリントレースで着々と学びを得た宮田の好走が期待されただけに、ヨーロッパラウンド初戦のイモラは悔しさが募る一戦となった。
そんなイモラでの一戦を終え、早くも次戦となる第5戦が5月23~26日にモナコのモンテカルロ市街地コースで開催される。
「市街地コースのモナコですが、僕以外のドライバー全員がFIA F2、そしてFIA F3やフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパなどでモンテカルロ市街地コースの実戦経験があり、まったくの未経験者は自分だけです。また厳しいレースにはなると思います。それでも、どんなレースとも変わらず走り切ることを第一に、モナコでの周回を重ねたいと思います」と、宮田。
「また、モナコだけは予選が11台づつの組み分けになり走行時間も各組16分と短く、1セットのタイヤで予選を走り切るという方向になると思います。レースも走り切ることを第一に、焦らずチームと一緒に自分たちのプロセスを歩んで、将来に繋がるレースにしたいと思います」
グランプリレースの舞台としてモータースポーツの歴史と伝統の根付くモンテカルロでの宮田の戦いぶりに注目したい。