角田裕毅F1第7戦分析 : ライバルとのギャップを保ち、51周をハードで走り切り戦略を完遂 | 北海熊の独り言

角田裕毅F1第7戦分析 : ライバルとのギャップを保ち、51周をハードで走り切り戦略を完遂

F1第7戦エミリア・ロマーニャGPのスタート前のグリッド上で、RBのチーフレースエンジニアを務めるジョナサン・エドルズと立ち話をしていたら、最後にこんなことを言った。

 

 

「イモラはオーバーテイクが難しいコースのひとつ。しかも、今日のレースはみんな1ストップだろうから、いかにスタートポジションをキープするかが重要になる」

 しかし、そのスタートで7番手グリッドの角田裕毅(RB)は出遅れた。何が起きたのか?

「別にホイールスピンをさせたわけでもなく、スタート自体はそんなに悪くはなかったんですけど、周りと比べるとよくない。今シーズンはここまでスタートがよかったりよくなかったりと、安定していないので、それは改善していかないといけないですね」

 

 

スタート前のミーティングではスタートで履いたミディアムタイヤで20周は走る予定だった。しかし、スタート直後に8番グリッドのルイス・ハミルトン(メルセデス)にかわされた角田は、1コーナーで10番グリッドからスタートしていたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)にも先行を許してしまった。そのため、チームは戦略の変更を余儀なくされた。

 

「コンストラクターズ選手権で彼らと戦っている以上、戦略を変えるしかなかった。ハースがピットインしなかったらアンダーカット(先にピットイン)して、ハースがピットインしたらオーバーカットする(ピットインを先に伸ばす)予定でした。スタートで履いたミディアムタイヤのペースが悪くなかったので、どちらでも対応できました」

 

 そんななか、12周目に角田が動いた。前を走るヒュルケンベルグがホームストレートへ向かったのを確認すると、ステアリングを右に切って、ピットインした。ミディアムタイヤからハードタイヤに履き替えた角田。これを見て、ハースがヒュルケンベルグをピットインさせることは容易に想像できた。

 

 果たして、ヒュルケンベルグは翌13周目にピットイン。静止時間2.3秒だったRBに対して、ハースも2.5秒でヒュルケンベルグを送り出す素晴らしい作業を行った。しかし、先にフレッシュタイヤに履き替えてアウトラップを走っていた角田のペースのほうが、12周走行していた古いミディアムタイヤのヒュルケンベルグよりも速く、ピットロードから出てきたヒュルケンベルグを角田が鼻差で抑えて、タンブレロに進入することに成功した。

 

 

これでヒュルケンベルグに奪われたポジションを取り返した角田だが、まだ安心はできなかった。12周目にピットインした角田が1ストップ作戦を成功させるには、残り51周をハードタイヤ1セットで走り切らなければならなかったからだ。

 

「タイヤのデグラデーション(劣化)が大きかったので、正直、最後まで走り切れると思っていなかったです。2ストップになるかなとも考えていました。最後の15周は本当にタフな戦いでした」

 

 50周目には、角田と異なるタイヤ戦略で迫ってきたランス・ストロール(アストンマーティン)にオーバーテイクされるが、ヒュルケンベルグとの差は保ったまま、角田はタイヤをマネージング。フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の以外のトップ5チームの9人が上位を独占したレースで、最後の1枠となる10位でチェッカーフラッグを受けた。

 

「最低限ポイントを獲れたことはよかった。ファクトリーから多くのチーム関係者が来ていたので、その人たちが見ている前で入賞できたことはよかったです」

 

 10位入賞が最低限の仕事と言える角田に、次戦モナコGPではそれ以上の結果を期待するのは自然なことだろう。

 

 

Masahiro Owari