【WRC】2025年から最高峰Rally1車両のハイブリッド廃止へ。コスト削減が目的 | 北海熊の独り言

【WRC】2025年から最高峰Rally1車両のハイブリッド廃止へ。コスト削減が目的

FIA(国際自動車連盟)は先日、世界モータースポーツ評議会で発表されたWRC(世界ラリー選手権)の将来的な方向性について明かし、Rally1車両のハイブリッドシステムが廃止される予定であることなどが判明した。

 WRCは近年、エントリー台数が減少している傾向にあるが、そういった競技の今後の方向性について検討・提言するため昨年末に設置された作業部会で、WRCの現状について広範囲な分析が行なわれた結果、今回の発表に至った形だ。またこの調査に際してはファンを対象にしたアンケートも実施され、1万を超える回答を集めた。そこで集まったデータも意思決定の一助になったという。

 FIAはWRCの将来について、ハイブリッドパワーの廃止や2026年からの新Rally1レギュレーション導入をはじめ、多くの提案をしたことを明らかにしている。特にRally1は議論の中心で、WRCがRally1を廃止してRally2に完全移行、もしくは“Rally2プラス”を新設する可能性も示唆されていた。

 ただ今回FIAが発表したところによると、Rally1車両は引き続きWRCの最高峰クラスを形成することになる。しかしその一方で、コスト削減のためにハイブリッドユニットの廃止や空力面やエアリストリクターでの制限を行なうとした。注目の2025年以降の競技規則と技術規則は、今年6月に発表される予定だ。

 2022年のRally1導入以来、コスト面は大きな問題となっていた。今季のレギュレーションでもRally1車両はバラストさえ積めばハイブリッドなしでも走れるようになっていたが、選手権ポイントを獲得することはできない。

 FIAの声明には、こう記されている。

「現行のRally1車両は2025年と2026年の両年、WRCの主力車両として継続されるが、コストとパフォーマンスを削減するための改良が施される」

「これには、プラグイン・ハイブリッドユニットの廃止と、その分を補うための総重量の軽減、エアリストリクターとエアロダイナミクスによる制限が含まれる」

 またRally2車両については現行の形態で継続されるが、Rally1車両との性能差を縮小する目的で、より大きなリストリクターやエキゾースト、パドルシフト・ギアボックス、リアウイングからなるWRCキットを装着して走行するオプションが与えられる。

 そして2026年からは、WRC最高峰カテゴリーであるRally1の技術規則が改定される。新レギュレーションでは、高コストや複雑さを軽減するために共通のセーフティセルが使用され、メーカーやチューナーは、Bクラス、Cクラス、コンパクトSUV、そして性能均等化のために重心や空力など厳しい技術基準に基づいて設計されたコンセプトカーなど、市販モデルをベースにした独自の車体を持つマシンを開発することができる。

 出力は330hpを目標とし、エンジン性能は全車両対象の基準トルクカーブによって制御される。そしてエンジンとトランスミッションはコスト上限が設けられ、Rally2同等の技術に制限される。空力効率も、開発とコストを削減するために制限される。

 またWRCでは将来的に電動カテゴリーが導入される可能性があるが、FIA技術部門にとっての責務は、新しいRally1規則を活用し、持続可能な燃料で走るRally1車両と同等の性能を達成できるような適切な技術規則を確立することだ。

 FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は次のように語った。

「WMSC(世界モータースポーツ評議会)メンバーはWRC作業部会の推奨事項を慎重に検討し、確立された一連の目標を支持することで一致した」

「WMSCの承認を受けた今、WRC委員会が提案の最終的な策定に取り組むことができる段階にいることは、選手権やその関係者、そしてラリーコミュニティ全体にとって重要なことだ」

「WRCファン参加型のアンケート調査の結果も、最終提案の策定プロセス中にWRC委員会によって慎重に考慮される。未来に適したWRCを作り上げるプロセスを継続する中で参加してくれたすべての方々に感謝したい」

 そしてFIAは、WRCプロモーションチームをFIA内で発足し、WRC関係者と緊密に協力して、「各イベント周りの宣伝機会を最大限に活用し、WRCの可能性を最大限に引き出す」ことも明らかにした。

 そしてイベント主催者においては、ラリーのルート選定の自由度が高まるという。ただ、イベント開始日やステージの長さに幅を持たせられる一方で、ラリーが日曜日のパワーステージによって終了するというフォーマットは維持される。

 この変更で既存のフォーマットに倣ったラリーに加えてスプリント寄りのラリーや長い耐久イベントが生まれる可能性もあるが、シーズン全体の走行距離は大きく変わらず、イベントはアスファルト、グラベル、スノーという3つの路面で構成される。