【WEC】キャデラックのアール・バンバー「トヨタに勝つのは簡単じゃない」 | 北海熊の独り言

【WEC】キャデラックのアール・バンバー「トヨタに勝つのは簡単じゃない」

キャデラックのドライバーとして2023年のWECを戦ったアール・バンバーは、トヨタに勝つのは簡単じゃないと覚悟していたと語った。

 

2023年シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスは、フェラーリやポルシェ、キャデラックといった新規参入メーカーを退け、トヨタが7戦中6勝をマークした。

 

唯一トヨタが敗れたのはル・マン24時間レースのみ。100周年記念大会を前に予定外の性能調整が行なわれ、物議を醸す中でフェラーリに僅差で敗れた。

 

 ポルシェが2017年限りでLMP1クラスから撤退して以降、ハイパーカークラスが盛り上がってくるまで、トヨタは最上位クラスで実質唯一のマニュファクチャラーチームとして戦ってきた。一部にはトヨタの成功について、その強力なオペレーションとチーム体制を考慮せず、対抗馬がいないからだと考えてきた者もいるだろう。

 

しかしトヨタは今季、圧倒的な強さを見せ、その疑念を見事に払拭した。

 

 今年のル・マン24時間レースで3位を獲得したキャデラック2号車のドライバーであるアール・バンバーは、ハイパーカーの新メーカーが2023年にトヨタと同じレベルに到達するのは決して簡単なことではないと分かっていたと語った。

 

「僕たちがトヨタに追いつくためには冬にハードワークする必要があるが、同時にトヨタが非常に強くなることも予想している」

 

そう話したバンバーは、かつてポルシェのLMP1マシン、919ハイブリッドを駆り、トヨタと戦っていたドライバーのひとり。彼は当時からトヨタが強力なライバルだったと振り返った。

 

「(ポルシェが)17年にLMP1を去ったとき、彼らはすでに非常に高いレベルにあった。それから彼らはドライバーも何もかも、同じメンバーでやってきている」

 

「もし(ハイパーカークラスに)参入してきて、簡単に勝てると思っていたとしたら、それは安易すぎると思う。彼らは素晴らしいチームなんだ」

 

「F1に参入するようなものだ。1年目にレッドブルやメルセデスに追いつくことはできない」

 

「これほどハイレベルなマニュファクチャラーがいて、ハイレベルなオペレーションをしようとするのは、本当に素晴らしいことだと思う。僕たちはできるだけ早く彼らに追いつこうとしている」

 

バンバーの元チームメイトで、2023年はプロトン・コンペティションでポルシェのLMDh車両963をドライブしたニール・ジャニも、現在の成功におけるトヨタの体制の重要性を強調した。

 

 LMP1時代から継続してWECのトップクラスに参戦するトヨタと対照的に、ポルシェは今年が復帰1年目。ただ6年間のブランクがあり、ほぼゼロからのスタートを余儀なくされた。

 

「トヨタには多くの強みがあるが、何よりもまずオペレーションだ」

 

 ジャニはmotorsport.comのインタビューでそう語った。

 

「LMP1からメンバーは同じだし、その前はF1をやっていた。他(のハイパーカークラスチーム)は、それとはかけ離れている」

 

「彼らは同じ体制を保っているから、違う方法で問題を追求することができる。ポルシェには当時から残っている人がほとんどいない。クルマや性能調整だけでなく、それが彼らの最大のアドバンテージだと僕は思う」

 

 かつてはアウディのLMP1マシンで、現在はプジョー9X8のドライバーとしてトヨタと戦っているロイック・デュバルは、トヨタのアドバンテージはペースだけではなく、トヨタのGR010ハイブリッドがスティントを通して非常に安定しており、他車よりもタイヤに優しいことだと説明した。

 

「トヨタはまだ”何か”を持っていると感じている」

 

「僕はパフォーマンスについて話しているわけじゃない。パフォーマンスなら僕たちも近づくことができる。でも彼らの持つ経験が、タイヤマネジメントに活かされていると僕は思っている。彼らはその点で他と一線を画していて、それが違いを生んでいるんだ」

 

「レースや各スティントを通じて、彼らは僕たちに対して大きなアドバンテージを持っている。タイヤのデグラデーション(性能劣化)に関しては、彼らは本当に絶好調だからね。最終的には、予選で1周1秒速くても意味がない」

 

「求めているのは、1スティントでの一貫性だ。彼らはそれを可能にしている。(レギュレーションで定められている)パフォーマンス・ウインドウの中で、タイヤに攻撃的でなくてもパフォーマンスを発揮できるマシンを手にしているんだ」

 

「どんなコンディションでも、ダウンフォースを増やそうが減らそうが、彼らはその変化に影響されることなく、スティントを通してパフォーマンスを発揮できる」

 

「より”尖った”マシンもあるが、マシンが機能する範囲を外してしまうと苦戦を強いられる。トヨタは、その範囲がとても大きいんだ」