中野信治「角田裕毅は、ありとあらゆるテクニックを使っていた。本当に良い仕事をした」
元F1ドライバーの中野信治氏が今季第2戦サウジアラビアGPで見せた角田裕毅の奮闘ぶりについて「本当に良い仕事をしていた」と述べている。
結果として角田は11位フィニッシュとなり、2戦連続で惜しくもポイントを逸した形になったが「ポイントを取っててもおかしくなかった」と労いの言葉を贈った。
角田は第2戦サウジアラビアGPで16番グリッドからスタート。ミディアムの第1スティントで徐々にポジションアップした後、ランス・ストロールのマシントラブルにより、レースはセーフティーカー導入となる。このタイミングで角田はピットに入り、ハードの第2スティントに移行。SCのタイミングを利したこともあり、ピットアウト後は8番手まで一気にジャンプアップした。
だが今季のAT04は中団勢の争いでも競争力に乏しく、アルピーヌ勢の2台に抜かれ10番手までポジションを落としてしまう。レース中盤からはケビン・マグヌッセンに迫られながら、角田は懸命のバトルを続ける。だが残り4周のストレートエンドでマグヌッセンに抜かれ、11番手にポジションを落としてフィニッシュとなった。
中野信治氏は『DAZN』の『WEDNESDAY F1 TIME #5』で、入賞を目指して戦い続けた角田の戦いぶりについて「頭を使って本当に良いディフェンスをしていた」と語った。
「ケビンも(角田の駆け引きを)称えていましたけど、頭を使ってやっているんです。冷静に俯瞰的に見ることができている」
「後ろからストレートが明らかに速いケビンが来ている状況で、コーナリングスピードの速いところは裕毅にもあって。その速いところはうまく抑えて、最終コーナーの出口でトラクションがうまくかかっていたんで、そこでケビンのラインをわざとずらさせ、それで加速させないようにしていた。もうね、ありとあらゆるテクニックを使って抑え込んでいましたよね。本当、冷静にやれていました」
◼️角田裕毅がP10を死守するために見せた、抜き返すための判断とは
「(ジェッダの)セクター3は高速コーナーが続きますよね。そこではやっぱりダウンフォースが失われるんで。そこで(マグヌッセンとの)間を空けて最終コーナーまで詰めきらないようにして、最終コーナーで完璧な出口の立ち上がり方をすれば(トウに)入られない。絶妙なところを突いて走っていた」
「でも最後“入られるな”と思って、DRSを利用しようとした。瞬時に切り替えていましたね」
残り4周のターン1で角田はマグヌッセンに抜かれ、ポジションをP11に落としてしまった。このときの駆け引きについても中野氏は角田が精一杯の抵抗をしていたと強調している。
「ケビンはターン27で真後ろに来ていた。裕毅はここでイン側を抑えることができたんですけど、わざとアウトに行って“はい、来てください”と(インを)空けたんですよ」
「さすがにケビンもわかっていたと思うんですけど、これ以上スピードを落とすことができないんで(角田を)抜かざるを得ないですよね」
角田は一度マグヌッセンに抜かれ、直線区間のDRSを使って今一度10番手を奪い返そうとする。だが結果的にストレートスピードの差は明確で、角田はホームストレートでDRSを利用するも、奏功しなかった。
「裕毅はアウト側から一番ベストなラインで、立ち上がりに有利なラインを通っているんです。早めにアクセルオンができて、裕毅のほうから立ち上がって加速している。加速してDRSラインまで行くと(マグヌッセンの)真後ろまで来ているんです」
「裕毅は(ターン1で)抑えにいっている。やるべきことをちゃんとやっているんです。インを抑えにいっているけど、ケビンが見事としか言いようがないんですけれども、止めたんですよ、クルマを」
「(オーバースピードで)飛び出さずに止めているんです。ブレーキを(ロックさせず)リリースさせるタイミングも完璧で、フロントのグリップをもう一回復活させてギリギリのところでターンインさせた」
「これはもう技と技のぶつかり合いだったんで。裕毅も本当に良い仕事をしたと思う。できることはすべてやっていた。非常に良い戦いをやっていた」
「私としても裕毅に(可能なら)1ポイントあげたいですよ。取っててもおかしくないと言うか、取ってるよね?という走りだった」