【WRC】22年ぶりに記録更新。ラリー・スウェーデンの氷雪路で平均速度141km/h | 北海熊の独り言

【WRC】22年ぶりに記録更新。ラリー・スウェーデンの氷雪路で平均速度141km/h

WRC世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンの“ヴィンデルン2”で、とんでもない記録が誕生した。最終日に行なわれたSS18で、ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20 Nラリー1)が平均速度141.08km/hを刻んだのだ。これは、WRCヨーロッパラウンドにおける最速レコード。しかも、路面は氷雪路という信じがたい条件だった。

 

 実は、最速記録はその2本前の同ステージ、SS16“ヴィンデルン1”でカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)によってすでに更新されていた。
 
 ロバンペラの記録は140.73km/hで、2000年にマーカス・グロンホルム(当時プジョー206WRC)がグラベルのラリー・フィンランドで記録、保持していた138.2km/hというレコードを久々に更新。それを、エサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がSS18でブレイクしたが、直後にヌービルが塗り替えた形だ。

 

 もっとも、ロバンペラは最終日、ハイブリッドシステムが作動せず、エンジンのみで走行していた。つまり最高出力が134馬力程度低かったということで、完調ならばさらに速い記録が刻まれていた可能性もある。ヴィンデルンのステージは、ラリー開始前から今大会最速のステージになるだろうと言われていた。長い直線、または直線に近い高速コーナーが多く、5速全開の最高速域で走り続ける区間が多いからだ。ヌービルのマシンは190km/h以上に達し、ギヤ比の関係で頭打ちになるシーンも見られた。

 

 ラリー・スウェーデンに出場するマシンは、金属のスタッド(鋲)が打ち込まれたスタッドタイヤを装着する。硬く締まった氷雪路面にスタッドが食い込むことで、想像以上に高いグリップを発生するのだが、それでも雪壁と針葉樹に囲まれた林道を平均速度140km/h以上で走るのは異常だ。

 

【タイヤ1本あたり384本のタングステン鋼製の鋲が埋め込まれたピレリのスタッドタイヤ(ソットゼロ・アイスJB1)】

 

「速いとはいっても、直線をフラットアウトで走るのは退屈だよ。やはり、180km/hくらいでドリフトするようなステージのほうが楽しいね」と、ヌービル。

 

 実際、鈴鹿サーキットの130Rのようなコーナー(もちろん雪道)を、5速アクセル全開か、僅かに緩めるくらいで走り抜けるシーンもあった。WRCのステージは通常2回しか走らず、レースとは違い直前に練習走行などないため、未知なるグリップの道にいきなり全開で臨まなければならない。WRCドライバーは、一体どのような精神構造をしているのだろうか?

 

 ところで、今回の新記録について冒頭で「WRCヨーロッパラウンドにおける最速レコード」と書いたのにはわけがある。ヨーロッパ以外のイベントの記録はまだ破られていないからだ。

 

 WRCの最速平均ステージ記録は、なんと189.53km/h! それが刻まれたのは1983年ラリー・アルゼンチンのSS1で、ドライバーはスティグ・ブロンクビスト、マシンはアウディ・クワトロA2だった。そのステージの全長は81.50km。今回のラリー・スウェーデンの2日目の総走行距離に近い距離を、1本のSSで走ってしまったことになる。ちなみに、続くSS2は全長83.74kmで、平均速度184.72km/h。今も昔も、WRCはとんでもない世界なのだ。

 

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