自動車保険金を水増し請求していたビッグモーターによる不正の疑いを認識しながら取引の再開を決め、批判を浴びた損保ジャパンですが、2022年6月の定時株主総会をもって、損保ジャパンから社外取締役をなくしていたことに注目が集まっています。

 

先立つ21年11月の提案では「グループ全体の監督は株主を代表するSOMPOの取締役に一元化することで、一貫した経営戦略を実行するガバナンスの実効性を高める」ことなどを理由にあげていたそうです。

 

当時は話題にならなりませんでしたが、今から振り返れば異例の判断といえるとメディアで報じられていました。

 

大半の金融機関は企業の形態を持ち株会社制に移しても、傘下の銀行や事業会社には社外取締役を残してきました。

 

東京海上は、親会社の東京海上ホールディングスとは異なる社外取締役を置くほか、三井住友銀行でも三井住友フィナンシャルグループとは別の社外取締役が当然いて、関係者は「幅広い事業領域に目配りする持ち株会社と本業に徹する事業会社とでは違った監督の目線が必要だ」と指摘しているそうです。

 

介護や海外など事業の幅を広げてきたSOMPOは独特のガバナンス(企業統治)体制を築いてきましたが、持ち株会社の最高経営責任者(CEO)と最高執行責任者(COO)が全体を統括し、国内の生損保や海外ビジネス、介護などそれぞれの事業会社における戦略の立案や投資判断は「オーナー」と呼ぶ責任者に権限を移していたそうです。

 

調査委の報告書は再発防止策として、損保ジャパンで廃止された社外取締役の復活も提言しています。

 

2万人以上の役職員を擁し、損害保険という公共的な性質を持つ商品を取り扱う以上は「社外の第三者的な知見を経営に生かす必要性が大きい」としています。

 

但し、ここまで問題が表面化している現在、制度を整えるだけでは不十分だろうとも指摘されています。

 

報告書は多額の保険料を差配するビッグモーターとの関係を深めたい営業に対し、契約者の利益を優先すべき保険金支払い部門の発言力が及ばない社内の力学を浮き彫りにし、主体的に取り組むべき法務・コンプライアンス部門は所管外の問題と判断しており、社外取締役の是非を語る以前に改めるべき点があるだとうとメディアで指摘されていました。

 

「数字を稼ぐ営業が一番力が強くて査定等々の部署は従わざるを得ない」という論理は損保全社に根強く蔓延っていますからね。

 

保険代理店も社外取締役を採用しているところが増えています。

 

会社組織としては当然のことですが、ちゃんとものが言える「ご意見番」の必要性を再認識すべきかと思いますね。

 

#ご意見番