2023年11月20日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下、「改正法」という。)が衆議院本会議で可決され、成立したことが報じられました。

 

改正法の内容は多岐にわたりますが、保険業界への影響が注目される改正項目の一つとして、最善利益義務(最終的な受益者たる金融サービスの顧客や年金加入者の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべきとする義務)が挙げられます

 

最善利益義務は、従来から「顧客本位の業務運営に関する原則」の原則2において、同様の内容が定められていたものですが、これが改めて法律上の義務になったという感じです。

 

改正法では、最善利益義務について、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下、「改正金サ法」という。)2条1項において以下のとおり規定します。

 

その主な内容としては、「金融サービスの提供等に係る業務を行う者」は、「顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない」というものです。

 

改正法は、最善利益義務の主体を「金融サービスの提供等に係る業務を行う者」とし、金融事業者や企業年金等関係者について幅広く規定しています(改正金サ法2条2項)。

 

保険分野に関しては、保険業、保険募集などの業務について、「当該業務を行う者並びにその役員及び使用人」が対象となる旨規定しています(同項10号)。

 

そのため、保険会社、少額短期保険業者、保険募集人、保険仲立人などは全て最善利益義務の対象となります。

 

また、保険会社や保険代理店などの事業者のみでなく「その役員及び使用人」についても対象とされている点に留意が必要となります。

 

これまでは保険会社、保険代理店の管理責任が問われたものが個人の責任をより問われる感じでしょうか。

 

今回の改正については、金融行政の「形式から実質へ」の視野の拡大の一環と評価されると報じられていました。

 

金融規制の手法としては、伝統的には情報開示義務や書面交付義務など金融機関の行為の形式的な面をとらえた規制が重視されてきましたが、そのような義務を課すのみでは顧客保護・顧客本位の観点から不十分ではないかとの観点から、実質面をも重視した政策へと変化が生じつつあります。

 

最善利益義務については、「同義務を定めることによって、誠実公正義務と同様に、具体的な行為規制が捕捉しづらい行為を規制する際の指針としての役割を果たすことが期待される」とされていることもあり、各事業者においても「必要な手続が履践されているか」といった形式的な面のみを重視するのではなく、金融商品・サービスが顧客の最善の利益を勘案したものとなっているか、といった実質的な観点も含めて検討していくことが、これまで以上に重要になると報じられていました。

 

顧客本位の保険営業について「形式から実質へ」が求められていますが、浸透できていないことに問題がありますよね。

 

何のためにやるのか、それは「お客様のためにやるのだ」という認識を持つだけで実質的なPDCAにつながるのですが、今回の「最善利益義務」法制化で浸透して欲しいものです。

 

#最善利益義務