こんにちは、ちるますです。

石炭と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?「昔の燃料」「環境に悪い」「もう役目を終えた存在」……そんな印象が強いかもしれません。でも実は、2025年の今も、世界経済を支える“現役バリバリのエネルギー資源”なのです。

今回は、私たちが普段あまり意識しない石炭の経済的な重要性、そして脱炭素の波の中で揺れる世界の葛藤について、やさしく分かりやすく解説していきます。

☑石炭はまだまだ現役。世界のエネルギーの柱だった

現代の電力供給は再エネや天然ガスにシフトしている印象がありますが、国際エネルギー機関(IEA)の2024年データによると、いまだ世界の電力の約35%は石炭火力発電によってまかなわれています。特に中国やインドなどの新興国では、石炭が“経済成長のエンジン”として欠かせない存在。

日本でも、電力の約3割は石炭による火力発電が占めており、急にはやめられないのが実情です。石炭は「安くて安定供給が可能」という強みがあり、エネルギー安全保障の観点からも重要視されています。

☑なぜいまだに石炭が使われているのか?

一言でいえば「コストと安定性」。石炭は天然ガスや原子力と比べて、価格が安定しており、貯蔵や輸送も比較的かんたん。特に地政学リスクが高まる中で、「自国で備蓄しやすい燃料」としての価値が見直されています。

また、再エネは天候に左右されやすく、原子力はトラブル時のリスクが大きいため、石炭のような“確実に動く”エネルギーがバックアップとして必要なのです。

☑環境問題との板挟み、世界が抱えるジレンマ

もちろん、石炭の最大の課題は「CO₂排出量の多さ」です。石炭火力発電は、天然ガスと比べても約2倍の温室効果ガスを出すとされています。だからこそ各国は石炭依存からの脱却を進めていますが、現実はそう簡単ではありません。

たとえばインドでは、貧困層の生活を支えるために安価な電力が必要。その供給源が石炭なのです。欧州でも、ロシア産ガスが止まった影響で、一部の国が石炭火力の再稼働に踏み切っています。脱炭素と現実の生活、このバランスを取るのは非常に難しい課題です。

☑“脱石炭”と“クリーン石炭”のせめぎ合い

現在注目されているのが「CCUS(炭素回収・貯留)」という技術。これは石炭火力から出るCO₂を回収して地中に封じ込めることで、環境負荷を減らす試みです。2024年からは日本でも、JERA(東京電力×中部電力の合弁)が実証実験を始めています。

さらに、従来より効率の高い「高効率石炭火力発電(USC、IGCCなど)」が導入されつつあり、少しでも環境負荷を減らそうという努力も見られます。

とはいえ、「クリーンな石炭」はあくまで“相対的にマシ”というレベル。根本的な解決ではなく、あくまで“過渡期の対策”に過ぎません。

☑石炭産業は雇用の柱でもある

石炭をめぐる問題はエネルギーだけではありません。世界には、石炭関連の仕事で生計を立てている人が数百万人規模で存在しています。たとえば中国やインド、インドネシアでは、石炭採掘が地域経済を支える基盤となっており、単純に「やめよう」とは言いにくいのです。

日本でも、北海道や九州の旧炭鉱地域には「炭鉱の町」として発展してきた歴史があります。エネルギー転換にはこうした人々の再雇用支援や地域経済の転換もセットで考えなければなりません。

☑投資の視点から見る石炭の立ち位置

近年、ESG投資(環境・社会・ガバナンス)が主流になる中で、石炭関連企業は“投資先から除外される”傾向が強まっています。世界最大の年金基金GPIFも石炭関連企業の投資割合を縮小する動きを見せています。

しかし、短期的には石炭価格が高騰した時期もあり、一部の投資家にとっては「エネルギー危機時のリスクヘッジ先」として注目されることも。長期的には縮小傾向が見込まれる一方で、完全に“投資対象から外れる”とは限らないのが現実です。

☑石炭の未来は、完全終了ではなく“ゆるやかな縮小”

石炭を一気にゼロにすることは、政治的にも技術的にも難しい。しかし、少しずつ依存度を下げ、よりクリーンなエネルギーへ移行することは可能です。今後のカギは、「どう減らしていくか」と「その過程で誰を取り残さないか」にあると言えるでしょう。

これからの石炭は、「悪者」として追い出すより、「賢く卒業する」対象として見ていく必要がある時代に入っています。

それではまた、ちるますでした!