>FNNプライムオンライン >“独裁者”とは何か 習近平とプーチン大統領の実像・統治手法を考える【小泉悠×気鋭学者】 >FNNプライムオンラインによるストーリー >・7時間
>米バイデン大統領が中国の習近平国家主席を指し「独裁者」と発言。
>「BSフジLIVEプライムニュース」では小泉悠氏と熊倉潤氏を迎え、独裁者の定義から習主席と露プーチン大統領の統治手法や国民との距離、そして日本のとるべき姿勢までを掘り下げた。
>プーチン大統領も習主席も、独裁者はなぜ「辞められない」のか
>新美有加キャスター:独裁体制には、中東の王国などに見られる君主独裁、プーチン政権などの個人独裁、中国共産党などの支配政党独裁、ミャンマーに見られる軍事独裁などがある。
>独裁は悪というイメージがあるが。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:人間の作ったシステムである以上、利点も欠点もある。
>もちろん現在の世界では圧倒的に欠点が多い。
>ただ、独裁・権威主義の国はリーダーが全て迅速に決定できる。
>また基本的にリーダーが同じで良くも悪くもぶれないため、アメリカの政権交代時のような予測不可能性がない。
>ただ、私も短い期間ロシアに住んだが、不都合はあっても日本のような民主主義国に住みたいのが率直な気持ち。
>反町理キャスター:何が違うのか。
>よく「息苦しさ」などと言うが。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:腐敗は日本にもあるが、独裁では腐敗が構造化される。
>独裁者に渡りをつけないと何も進まないので皆が裏ルートを作り、社会の隅々まで構造化された独裁のネットワークになってしまう。
>コネや賄賂がないと何も進まない社会。
>旧ソ連の国々の人が一番不満に思う点。
>熊倉潤 法政大法学部教授:中国は2010年代に反腐敗を徹底して政権の求心力を高めたように、時々自浄作用のようなものを働かせて支持を確認する。
>政敵を排除しようとする側面への一般庶民の見方は冷めていたとの指摘もあるが。
>反町理キャスター:独裁の方がうまくいく場合として思いつくのがコロナ対策。
>中国は武漢で、一時的にだが封じ込めに成功した。
>熊倉潤 法政大法学部教授:一時的な話で、その後、上海で都市封鎖に遭った人たちは大変な思いをした。
>ただ農村ではゆるく適用され、都市ほどひどい目に遭わず乗り切った感がある。
>農村の支持を重視する共産党にとって良かったと思う。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:軍事も独裁と相性がいい。
>自国民も外国人も多く死なせるような軍事行動をとるとき、ロシアのようにメディアを統制してしまえる。
>中国の科学技術の発展でも、特定分野への重点的な投資を国が強権的に行えるのでは。
>だが、それは国家体制にとっての効率の良さ。
>追求していくと、中国のコロナ対策のように末端の人々がとても苦しむ。
>国家にとっての効率の良さとそこで生きる一人ひとりにとっての幸せは、ある程度相反する部分があるのでは。
「中国には地球の人口の約6分の1の人が住むが、実際は秦朝時代から中国はずっと『1人』しかいない、驚くべき専制国家。高速で物を運べる機械のようなものだが、逆に言えばとても危険な機械だ」 艾未未(アイ・ウェイウェイ)
>本当はそのバランスをとらなければ。
>新美有加キャスター:プーチン大統領と習近平主席が独裁政治を行う背景は。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:プーチンは2000年に正式に大統領になった。
>当時のロシアは混乱と疲弊の極み。
>経済は疲弊、汚職ははびこり、人々の暮らしは貧しく、エリツィン大統領もレームダック状態。
>そこでプーチンという非常に強いリーダーシップを持った人が選ばれ、国民は期待したと思う。
>強権を振るって国力を回復するという彼なりの愛国心は間違いなくあったと思うが、刃向かう富豪を粛清し、反体制的なジャーナリストなどもプーチンの命令で殺されたと言われる。
>結果、安心して引退できなかったのでは。
>反町理キャスター:国が心配で?
>自分が心配で?
>小泉悠 東大先端研 専任講師:自分が心配で。
>自分の権力に絡め取られたという気がする。
>彼なりに一生懸命やったら、独裁者を続けるしかなくなってしまったのでは。
>少なくとも就任時点では、こんなに長くなるとは思わなかったと思う。
>反町理キャスター:習主席にも共通する部分はあるか。
>熊倉潤 法政大法学部教授:元々、中国共産党は民主集中制と呼ばれるピラミッド型の組織で、上の人が決めたら従うのが当たり前。
>その意味でずっと独裁者。
>だが、2010年代を通じて独裁が強まった。
>主席の任期を撤廃し死ぬまでやるモードになったのは、怖くて後継者も選べないのだと推測される。
>多くの人を失脚させ、自分への恨みが多いことはもちろん承知で、人間不信のような状況では。
>地方幹部時代からの近しい人たちで側近を固め、ますます独裁者らしくなっていく。
>票を操作しても、選挙がなくても、独裁者は人気を気にする
>新美有加キャスター:ロシアの出版社が、プーチン大統領のカレンダーを毎年販売している。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:国の命令ではないが経済活動として出しており、国民が見たいプーチン像がある程度反映される。
>ホッケーや柔道のシーン、また軍隊の前にいるイメージも必ず入る。
>強さ、頼りになる感じを見せたい。
>新美有加キャスター:習主席のカレンダー。
>2018年版は夫婦のツーショットが大半を占め、中華民族の偉大な復興を目指すスローガン「中国の夢」が書かれている。
>熊倉潤 法政大法学部教授:スローガンや、経済発展の様子、強い軍隊・強い国を作る夢などが表現されている。
>人民解放軍で歌姫とされてきた夫人もよく活かされている。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:私はプーチンってガチャピンっぽいところがあると思っていて。
>反町理キャスター:わが社のキャラクターをありがとうございます(笑)。
>それは?
>小泉悠 東大先端研 専任講師:この人、なんでもする。
>ピアノも弾き、海に潜り、モーターグライダーに乗ったり、上半身裸で釣りもしたり、とにかく体を張ってあらゆることをする。
>反町理キャスター:なぜ上半身裸で釣りをしなくちゃいけないのか。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:ロシアのおじさんはよく裸で釣りをする。
>そのようにプーチンは自分のフィジカルでアピールする一方で、習近平は肉体の圧を出したりしない。
>独裁者といっても本当にいろいろ。
>反町理キャスター:一応選挙で大統領に選ばれているから人気も気にするという意味で、民主的な部分が出ている?
>小泉悠 東大先端研 専任講師:票の操作がされているのは間違いないが、重荷であると同時に権力の源泉でもある選挙をプーチンは非常に気にする。
>例えば、本当は1~2割の得票率を7割に操作すれば、皆はやはりおかしいと思う。
>それを避けるため利益誘導やアピールをして見せるのだと思う。
>熊倉潤 法政大法学部教授:中国では指導者に求められる風格や雰囲気が若干違い、恰幅がいいとか、にこやかに話すような部分。
>最近は小学生に慕われる様子を演出することも増えた。
>支持を確認できる選挙がないからこそ、資源を最大限に活用し支持基盤を強めるのだと思う。
>新美有加キャスター:言葉による発信力は。
>演説の様子をどう見るか。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:プーチンは熱狂を呼び覚ます言葉使いをしたがる。
>国民との対話でも臨機応変な対応で、言葉遣いの上手い指導者という感じ。
>習近平は教科書的で、国家の指導者として言うべき内容をきちんと話すイメージ。
>反町理キャスター:習主席のスピーチは、聴衆の拍手もトレーニングされているような感じ。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:ソ連時代の書記長と国民の関係に近い。
>20世紀に生まれた共産党独裁国家がまだ続く中国と、建前上は一度それを壊して別の国にしたロシアとの違いが大きいのでは。
>熊倉潤 法政大法学部教授:中国では共産党話法というか、次々に出てくる用語を聴衆が理解して拍手、という完結した世界がある。
>また習主席は、内容や服装含め毛沢東を相当意識した演説スタイル。
>大変な知識量と文才のあった毛沢東は別格で比肩しうるかはわからないが、人々の評価は結構なところに来ているのでは。
>日本が認識し、ある程度付き合うべき「ユーラシアのノリ」とは
>新美有加キャスター:プーチン大統領は複数の大国や新興国が影響力を持つ「多極世界」を提唱し「新しい世界秩序」の構築を、習主席は鮮明な中国の特色を持ちつつ、民主主義に対する全人類共通の追求を体現しているとする「中国的民主」をそれぞれ主張。
>世界秩序に挑戦する動きを見せる両国の今後の連携は。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:ロシア人は90年代に西側モデルを採用して大混乱に陥ったと強く思っており、アメリカ型モデルに回収されたくない気持ち。
>中露は、アメリカ的秩序解体のために今は喧嘩しないでおこうと連携を強める。
>相互防衛義務を結ぶこと以外は何でもやる関係になる可能性がある。
>熊倉潤 法政大法学部教授:中国も、西側で言われるような体制ではないが自分たちは中国的民主をやっており、その点で西側から居丈高な説教を受けるのは嫌だという内容は、共産党100周年の演説にもあった。
>指導者から民衆までかなり共通して西側への不信感がある。
民衆はノンポリ・政治音痴ですからね。焚書坑儒が効果を発揮しますね。
>その点でロシアとかなり肩を組んでいけることになる。
>反町理キャスター:両国と国境を接する日本は、軍事的な圧力も受ければ経済的な結びつきもある。
>とるべき基本姿勢は。
>熊倉潤 法政大法学部教授:中国のことを考えれば、かなり柔軟にしてもいいのではと個人的に思う。
>以前小泉さんとの対談で「ユーラシアのノリ」という言葉を使った。
>大陸国家の合従連衡はかなり柔軟に動いている。
>日本はもちろんある程度距離を置きながら、付き合えるところはそのノリに付き合っていく感じがいいのでは。
>小泉悠 東大先端研 専任講師:中露は10〜15年前に我々が予想したよりも相当深い関係。
>一方で、離間しなければいけないほど軍事的に一体の関係にもならない。
>またウクライナに関して日本がロシアに制裁をかけてもかけなくても接近度合いは多分同じ。
>柔軟な「ノリ」の関係性を理解した上で、ある意味我々の無力さを認識し、そこを逆手に取って付き合うのが日本の戦略になると思う。
ウクライナはソ連崩壊により核兵器を放棄した。しかし、プーチン大統領は非核国ウクライナに侵攻し核兵器使用をちらつかせて恫喝した。
これにより我が国の非核三原則に依拠した安全神話は消滅した。非核三原則とは 核兵器を「持たない、つくらない、持ち込ませない」の三原則を指すものと1967年 (S42) 12月に佐藤栄作首相は説明した。日本人のお花畑はもうない。
「世界大戦を含むあらゆる戦争はすぐ終わらせられる。講和条約を結んだ場合、あるいは1945年の米国による広島と長崎への原爆投下と同じことをした場合だ」 (ロシアのメドベージェフ前大統領)
‘ウクライナでの戦争の教訓は、抑止力によって未然に戦争を防ぐ方が、侵攻してきた敵を後退させることよりも遥かに望ましいということだ。’ (マシュー・ポッティンジャー)
‘ロシアが力による現状変更を行っている国はG7(主要7カ国)では日本だけだ。北方領土だ。だから、ウクライナ問題で、ロシアを一番強く批判しなければいけないのは日本だ。’ (小野寺元防衛相)
>(BSフジLIVE「プライムニュース」11月22日放送)
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