「迷彩」「意識」は対になっているものとする。
無理心中を試みた男女の内面世界を描いたもの考える。
歌詞の漢字に関しては「加爾基 精液 栗ノ花」に準じる。
「迷彩」の一人称は女性、「意識」の一人称は男性と通例言われているが、今回描いているものが人の内面世界であることを考慮すると、男女の性の境界線は非常に曖昧であると考える。よって、互換性があるもとする立場に立って考える。
しかし、解釈においては支障が出ないため、一人称は先のものに準じる。
歌詞の中にそれが示す意味を括弧の中に示す。
今回は綺麗に対をなす詩という観点から解釈してみる。
と言うのは対句が一人称の転換を示すもの(精神内の二面性を表すとも捉えられるが、二項対立という意味で解釈に支障は出ない)であると考えたからである。
今回は先に女、後に男の発言(意識)であるものとする。
その根拠は「白い手」に他ならない。
女:頭が有れば要(淋しさや恐怖)は簡単に片付いて
子供と呼べば汚されないで済むのさ
「子供」は最後のほうの歌詞である「幼児」と同じであると考える。すると、「子供」だからこそ許されることもあることを示しているのか。
僕に少しの光合成 君に似合ふ遺伝子を
ヒトは仕様の無いことが好きなのだらう
「嘘ヲ吐クナヨ」
人ではなく「ヒト」なので生物学的意味合いを含む。それならば、「仕様の無いこと」とは性交を意味するのではないか。
余談だが、光合成(こうごうせい)という言葉にも「せいこう」という音は含まれている。
「嘘ヲ吐クナヨ」がどこに掛かり、誰による発言なのかは問題だ。
これは敢えて括弧内にあるのだから、一人称とは別の誰かの発言であると考えられる。
ここは我々聞き手に対してという可能性もあるが、文脈が全くない中でのこの発言は意味をなさない。よって、唯一の別の登場人物である男の発言(意識)であるとする。
(子供のように)泣いたら何だつて此の白い手に入りさうで(想定)
答へ(本心)なら純粋だ 惹かれ合つてゐる こんな風に君を愛する 多分
騙し合うことは可能性としてはあるけれど、それはあくまで想定でしか無く、実際には本心で人間関係は構築されているはずと思い込んでいるということではないだろうか。
男:幾つに成れば淋しさや恐怖は消へ得る
子供(の心)を持てば軅て苦痛も失せるのか
歳をとれば生きる苦悩から逃れるすべを得ることができるのか?
逆に童心に変えることで逃れることができるのか?(自分の子供を持つことでとも解釈できる)
どちらなのだろうか。
君が慕ふ思春期と 僕が用ゐる反抗期
最早語呂を合はすことが好きなのだらう
「嘘ヲ吐クナヨ」
一見すると、「君」と「僕」の不一致を象徴するのかなと考えた。
しかし、よく考えてみると「思春期」と「反抗期」はどちらにせよ、自我の芽生えによる保護に対する抵抗によるものと考えることができるのではないか。
とすると、次の「最早語呂を合はすことが好きなのだらう」は完璧なまでの対句に対する皮肉ととれなくもない。
二項対立を異常なまでに意識しているけれど結局言っていること(光の当て方が違うだけ)も発言者も一緒なのか。
真相は一人による独白か。
(子供のように)泣いたらどんな法も覆して願望通り(確信)
答へ(本心)なら残忍だ 騙し合つてゐる こんな風に君は愛する 多分
一人による独白だとすると、人間の両面性を示すのがこの詩の意味するところなのではないか。
対句となっている一節はともに人間に内在する。どちらか一方では嘘になる。
「嘘ヲ吐クナヨ」とはものごと一面性だけ(人間を美化し、あるいは醜化しすぎた思考)で判断するな、ということなのか。
やっかいなのがこのあとに挿入されている「嘘ヲ吐クナヨ」である。
歌詞カードには書かれていないのだが、実際には歌われている。しかも強調されている感がある。
「最早語呂を合はすことが好きなのだらう」であったらいいのに。だが、筆を取った以上何らかの解釈を示すことが使命だとも感じる。
ここで以前の可能性が答えを導いてくれるかもしれない。
つまり、この「嘘ヲ吐クナヨ」こそが歌い手である椎名林檎から聞き手である我々に投げかけられたものではないか、とういうことである。
メロディのつなぎとして用いただけかもしれない。
シンメトリーを崩してまで伝えたかった何かがあったのかもしれない。
しかし、歌詞カードには書かず、敢えて挿入した真意は推し量ることは困難だ。
まう是以上知つて 眠らない夜(相手はいない)と心中未遂(自殺)
思ひ出に酸化した此の含嗽薬 迷彩
先に行っておくがこの二行の解釈は無理矢理である。
では、苦しいかもしれないがいってみよう。
自分が無知であることを知って自殺を試みるように感じた。
そのせいもあって、「含嗽薬」が睡眠薬にしか思えない。
無い物(生きるための道標) 頂戴なんて憤ってゐる幼児同様
お母様 混紡(二面性のある意識)の僕を恥ぢてゐらつしやいますか
【種類の異なる繊維をまぜ合わせて糸につむぐこと。】(大辞林)
解釈の上でこの言葉がこの詩が二面性を表す第一の根拠となった。
君が愛した 僕
入り口と出口で様変わりしてますがご了承ください。
思考回路をそのまま書き下ろしたものとして読んでいただけると幸いです。
この様子ですと「迷彩」も二面性による独白とも考えられる。