こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

このたびの令和8年熊本地震により被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。  
一日も早く穏やかな日常が戻りますことを、お祈り致します。

 

全国で猛暑・酷暑が続いているわけですが・・・「熱中症」になる方が増加しているようです。

 

消防庁は7月28日(火)、2026年7月20日~26日の1週間における熱中症による救急搬送者数を発表しました。

期間中に全国で熱中症により救急搬送された人は18,591人となり、前週の10,857人から約7,700人増加したそうです。発生場所では「住居」が最も多かったというのは、ちょっと不思議な気も致します。

 

 

直近の2026年7月20日〜26日の1週間では、全国で45人の「熱中症」による死亡が確認されています。 

 

熱中症で死亡する人は65歳以上の高齢者が最も多く、全体の約75〜80%を占めており、その中でも80歳以上の高齢者が最多であるのだそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

以前にも「高齢者」にとって、夜間「高温」の状況が続くことは

若い方よりも「リスク」が高い・・・というお話をさせていただきましたが・・・再度、高温な環境はなぜ「高齢者」にとって、致死的になるのか?・・・ということ話題にしてみたいと思います。

 

まず、高温の環境下におけるヒト正常な「生理応答」とは、どのようなものになるのでしょうか?

 

ヒトの「深部体温」は常に37℃ちょうどに固定されているわけではなく、概ね(おおむね)狭い範囲で日内変動することが分かっています。

 

「深部」および「皮膚」の温度受容系が体温上昇を検出すると、「視床下部視索前野」を中心とする神経回路が皮膚の「血管拡張』と「発汗」を開始することが知られています。

 

「環境温度(気温)」が「皮膚温」を超える状況では、放射や対流によってヒトの身体は外部から逆に熱を受け取るため、「発汗」による気化熱の利用が唯一の熱を逃す(にがす)経路となるわけですね。

 

ただし、高湿度や無風、厚い衣服などによって汗が蒸発しなければ冷却効果は得られないということになります。

 

「皮膚血流」が増加すると、体内の熱が表面へはこばれる一方で、「皮膚血管床」の拡張により、末梢血管抵抗と中心静脈圧が低下する。血圧を維持するため、ヒトの身体は「心拍数」「心臓の収縮力」を高めて対応しようとするわけです。

 

「皮膚血管床」とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが・・・皮膚の真皮層や皮下組織に張り巡ら(めぐら)された毛細血管や微小血管

のネットワーク構造ということになります。

 

外気温が高くなり、強い熱ストレスを受ける状況では、心拍出量が安静時の約2倍に達するわけですが、先に挙げたような「皮膚血管床」の拡張による血液貯留により、心臓への静脈還流は減少することになるとされています(参考1)。

 

心臓からは、通常よりも心拍数を多くして、多くの血液を出そうとしているわけですが・・・戻ってくる血液は少なくなって戻ってくる

という状況が生じるわけですね。

 

この状況により、心臓には大きな負荷がかかります。

 

また、「発汗」は効果的な冷却をもたらすわけですが、一方で体内の「水分」「電解質」を失っていくわけです。

 

この状況で飲水による水分補給が追いつかないと・・・「血漿(けっしょう)量」が減少し、静脈還流・心拍出量・臓器灌流がさらに低下する・・・ということになります。

 

「血漿」とは、血液の液体成分を指しますので、これが減ることは血液が濃縮され、ドロドロした状態になり、血管内で「血栓」を生じる

こともあるかもしれませんね。

 

この状況は単なる「脱水」にとどまらず、心臓にとっては、熱放散のための血液循環を増加させなければいけない一方で、心臓に戻ってくる血液が少なくなることにより、各臓器が必要な血流を維持できなくなるかもしれないという、心臓にとっては、ギリギリに追い込まれた危機的な状況になる・・・と言えるかもしれませんね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

先にあげたような状況でも、何とか「若年層」や「中年層」までは意識しなくても代償(だいしょう)は可能な場合が多いわけです。

しかしながら、「高齢者」ではそうはいきません。

 

では、なぜ「高齢者」では代償できなくなるのでしょうか?

 

その理由を考えてみたいと思います。

 

「高齢者」における熱に対する脆弱性(ぜいじゃくせい)は、単一の臓器の機能不全によるものではないてされています。

 

「加齢」に伴い、汗腺の刺激応答性、単位面積当たりの発汗量、および発汗開始反応が低下するとされています。

 

実際に70歳以上の「高齢者」を対象とした研究では、発汗量の減少と発汗開始体温の上昇が認められ、特に女性で低下が顕著(けんちょ)であったと報告されています(参考2)。

 

さらに「高齢者」では「皮膚血管拡張反応」も「血管内皮細胞」の機能低下や「自律神経性」の血管調節の低下、「心拍出量増加能」の減退(げんたい)することで、かなり制限される・・・ことが分かっています。

 

その結果、健康に見える高齢者であっても、「熱の収支バランス」を維持できなくなる温度・湿度の限界閾値は若年者より低いとされています。

また、日常生活程度の軽い活動であっても、その限界はさらに低下することが報告されています(参考3)。

 

「高齢者」は単に「暑さに弱い」のではなく、「熱放散」に使用できる生理的予備力が著しく小さいのである。

 

これに加えて、「脱水」や「血漿浸透圧」の上昇に対する口渇感と飲水行動の誘導が若年者より減弱しており、体液量の回復が遅れるともされています(参考4)。

 

 

また、腎臓においても「高齢者」は、腎血流量、糸球体濾過量、尿濃縮・希釈能が低下しています。

 

高温下では皮膚への血流再配分や交感神経系、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系、バソプレシンの作動により腎血流と尿量が抑制されるが、脱水が進行するとこの代償応答が腎虚血へと転化するとも報告されています(参考5)

 

腎臓への血流が減りますと・・・「(腎前性)腎不全」の状態となります。

 

このように、「高齢者」では発汗、皮膚血管拡張、循環予備能、口渇感、腎機能、そして認知・行動性調節の低下が個人ごとに異なる割合で重なり合い、熱放散能全体が早期に限界を迎えることが多くなるわけです。

 

このように考えますと・・・現在のような「高温」下では、「高齢者」と「高齢者」以外では、そのリスクの大きさには相当な違いがあることに万全の注意が必要であると考えます。

 

とくに熊本の被災地では、「高齢者」の環境が気になるところですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

参考)

1)Compr Physiol. 2015 Jan;5(1):17-43. 

Human cardiovascular responses to passive heat stress

Craig G Crandallら

 

2)Age Ageing. 1976 May;5(2):91-101. 

Sweat responses in the aged

K G Fosterら

 

3)Commun Earth Environ. 2023;4(1):486. 

Heat stress vulnerability and critical environmental limits for older adults

 S Tony Wolfら

 

4)Med Sci Sports Exerc. 2001 Sep;33(9):1524-32. 

Influence of age on thirst and fluid intake

W L Kenneyら

 

5)Temperrature(Austin). 2020 Oct 13;8(2):108-159. 

Kidney physiology and pathophysiology during heat stress and the modification by exercise, dehydration, heat acclimation and aging

Christopher L Chapmanら

 

(ペニンシュラホテルで見かけたクラシック・カー)

(筆者撮影)

 =================================

 

 

 Instagram

 

                         <マイ  Jazz リスト>Spotify

          曲を更新しました

                   

                         <今週、なんとなく聞いてみたい曲> 

 

 

 

            =====================

<JTKクリニックからのお知らせ>

 

◯Zoomを用いた遠隔医療相談を始めました(内科関連疾患)

   (検査結果からの解説・必要な追加検査などの説明を含む)

 

◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。

 

◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。

◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)

 

 

<JTKクリニック 所在地>

〒102-0083

東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階

電話 03-6261-6386

Mail:info@jtkclinic.com

 =================================