こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

3月最初の休日の午後となっています。

これまでよりも陽射し(ひざし)が強くなっているような気も致します。

今朝は、鳥のさえずりで目を覚ました朝でした。

 

『ウォールデン 森の生活』の著者で知られるアメリカの作家・思想家であったHenry David Thoreau(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)との調和、シンプルライフの重要性を強調していたそうです。

 

彼は、次にような名言を残しています。


“The first song of a bird is the herald of spring — a voice that says the world is awakening.”


「鳥の最初の歌は春の先触れ——世界が目覚めていると告げる声だ。」
 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

最近、話題となっている「IPS細胞」について、お話をしてみたいと思います。

 

あらゆる細胞に変化できる「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品について、厚生労働省の専門家部会は2月19日、国内での製造販売承認を了承していますね。


2006年に京都大の山中伸弥教授がマウスの細胞を使って「iPS細胞」を作製して20年となります。

 

「iPS細胞」を使った製品として世界で初めて実用化されるわけですね。承認が了承されたのは、大阪大発ベンチャーのクオリプスによる重い心不全治療に使う心筋シート「リハート(商品名)」と、住友ファーマによるパーキンソン病治療のための神経細胞「アムシェプリ(商品名)」。

 

これらの2つの製品は、京都大学iPS細胞研究財団がストックする第三者のiPS細胞を使ってつくられたのだそうです、

 

どちらの製品も再生医療製品をいち早く患者に届けるための、「条件・期限付き承認制度」での承認が了承されたわけですが、これは、

通常の薬の治験よりも少ない数の患者のデータで安全性や効果を判断され、有効性は効果があると推定できればよいのだそうです。

 

本承認されれば、「iPS細胞」を用いての新しい治療が、今後、多くの

患者さんを救えるようになるわけですね。

 

そこで、この「iPS細胞」の分子機構、臨床試験の現状、そして将来の課題について、2025年時点までの最新知見をお話をしてみたいと思います、

 

「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」は、どのように作成されたのか?・・・という話題から始めてみたいと思います。

 

山中先生は2007年に、ヒト線維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子(山中因子)を導入することにより、「iPS細胞」を樹立することに成功しました(参考1)。

 

この4つの因子は協調して、細胞のエピゲノムを再構成することができるのですね(参考1)。

 

4つの因子は協調して細胞のエピゲノムを再構成する性質を持ちます。

 

「エピゲノム」とは聞き慣れない言葉であるかもしれませんが・・・

DNA配列そのものは変えずに遺伝子の発現を制御する化学的な「修飾(しゅうしょく)」の総称ということになります。

 

具体的には「DNA」のメチル化や「ヒストン」の修飾(アセチル化、メチル化など)、クロマチン構造の変化などが含まれます。

 

つまり、「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」とは、こうしたDNAやヒストンの修飾のパターンをリセットしたり、別の状態に書き換えたりすることを指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に4つの因子を詳しく、見てみたいと思います。

 

1)Oct3/4 (POU5F1)

 

多能性維持の中核をなす。Sox2と複合体を形成し、Nanog等の多能性遺伝子ネットワークを活性化する。


2) Sox2

 

パイオニア転写因子として機能し、閉じた状態のクロマチンに結合して構造を開き、他の因子が結合できるようにする。

3)Klf4

細胞増殖に関与するとともに、体細胞特異的な遺伝子の抑制を助ける。

4) c-Myc

クロマチンリモデリングを広範囲で促進し、初期化効率を飛躍的に高めるとされています。

 

この「c-Myc」は、癌増殖遺伝子でして、発癌リスクに関連するため、現在は「L-Myc」への代替や「c-Myc」を除いた手法も一般化しています(参考1)。

「エピゲノムの再構成(リプログラミング)」は、DNAメチル化の解消やヒストン修飾の変化を経て、その後期には、更なる外部からの因子(外因性因子)を必要とせず、多能性ネットワークが持続的に転写を

開始されるわけですね。

 

つまり、ある細胞にOct3/4 (POU5F1), Sox2, Klf4, L-Mycを導入しただけで、DNAなどのメチル化、アセチル化という修飾が変わり、どのような臓器にも分化可能な「多能性幹細胞」に変化するということに

なりますね。

 

なんとも摩訶不思議(まかふしぎ))な話ではありますが、「iPS細胞」を使った2つの再生医療製品による治療成績が良ければ、さらに多くの方の病状を改善していくことが期待できますよね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>3月3日

今日は、ひな祭りですね。「桃の節句」と呼ばれるのは、旧暦の3月3日が「桃の花」の咲く季節にあたるからと聞いたことがあります。
 

ひな祭りは、平安時代の宮中行事「上巳(じょうし)の節句」に由来するのだとか。長い歴史を感じますね。

今回は「iPS細胞」についてのお話をさせていただきました。

こちらは、これからの歴史を作り出していくものかもしれません。

 

本文内の2社以外にも、iPS細胞から作成した「神経のもととなる細胞」を脊髄(せきずい)損傷患者に移植する再生医療製品の実用化に向け、慶応大発ベンチャー「ケイファーマ」が、2027年中にも臨床試験(治験)を開始すると発表しておりまして。脊髄損傷が対象の「iPS細胞」を使う治験は世界初であるそうです。

当クリニック(JTKクリニック)は、既に(すでに)自分自身の細胞から作成した「iPS細胞」を保存する事業の窓口になっています。


「iPS細胞」の保存といっても、もちろん「JTKクリニック」内で保存するわけでなく、「I Peace, Inc(アイ・ピース、本社:米国カリフォルニア州)」社の管理のもと、米国と日本国内の専用施設内で保存されることになっています。

「IPS細胞」の歴史を見てみると、その発見は、数十年にわたる「発生生物学」の研究積み重ねの上に成立していることが分かります、

その歴史を見てみますと・・・

1962年、クローン研究の第一人者であるジョン・ガードン氏はアフリカツメガエルの腸上皮細胞の核を、核を除去した卵母細胞へ移植し、正常なオタマジャクシが発生することを示しました。

ちょっと難しいのですが・・・これは「体細胞核移植(SCNT)」により、分化した細胞の核であっても全遺伝情報を保持し、初期化(リプログラミング)が可能であることを証明した画期的な実験であったとされています。


ジョン・ガードン氏は、残念ながら92歳でお亡くなりになりましたが、2012年にノーベル生理学・医学賞を山中伸弥教授と共同受賞しています。

繰り返しになるかもしれませんが・・・「リプログラミング(細胞初期化)」とは、簡単に言うと「細胞がそれまでに蓄積してきた『役割の記憶』を消去し、受精卵のような何にでもなれる状態(多能性)に戻すプロセス」のことですね。

専門的な話をするとすれば、その仕組みは「エピジェネティクス」の書き換えということになります。

DNAの塩基配列(A:アデニン, T:チミン, G:グアニン, C:シトシンの並び方)自体に変更を加えることはありません。


変化するのは、その上に付着している「エピジェネティックな標識」ということになります。

 

その標識とは、DNAメチル化や DNAが巻き付いているタンパク質(ヒストン)の状態(アセチル化などのヒストン修飾)を変え、遺伝子の読み取りやすさを調節する・・・ということになるでしょうか。

つまり、ある細胞に「リプログラミング」が起こると、DNAのメチル化、アセチル化などの修飾が、リセット(消去)され、

細胞は「特定の役割(皮膚など)」を忘れてしまい、再びどんな細胞にもなれる「白紙の状態」に戻るということになりますね。

その後、1981年にはマウス「ES細胞」が樹立され、1998年にはThomsonらによって「ヒトES細胞」が樹立されました(参考2)。

「ES細胞」は多能性を持つのですが、受精卵(胚)を破壊して作製するため、倫理的課題が常に伴っているというのですね。その理由は、受精卵(胚)は、子宮に着床すれば、胎児になるからです。

こうした状況の中で、山中伸弥教授らは「ES細胞」に特異的な「転写因子」に着目し、24種類の候補遺伝子から、1つずつ因子を除外していく「ドロップアウト法」によって、最終的に本文内で
ご紹介をした「Oct3/4」,「Sox2」,「Klf4」,「c-Myc」の4因子を特定したわけです。

 

サラっと書いてしまいましたが、とても時間のかかる、血のにじむような実験の連続であったものと想像します。


これらの4因子は、「転写因子」でして、現在「山中因子」と呼ばれています(参考1)

さらに2007年には、山中伸弥教授らは、Oct3/4, Sox2, Klf4, c‑Myc の4転写因子をレトロウイルス導入することで、まずマウス線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、その後、c-Mycを用いない改良プロトコールを開発しました。

この改良法を用いて、成人皮膚線維芽細胞から「ヒトiPS細胞」の樹立にも成功し、Myc除去により腫瘍形成リスクが低減することを示しています(参考3)。

その後、「山中因子」のうち、Oct4 と Sox2 の2因子だけで「iPS細胞」へと再プログラムできることが報告されたり(参考4)、成人の「線維芽細胞」から作製した「ヒトiPS細胞」をバルプロ酸という薬剤の投与下に、Oct4とSox2の2つの因子だけを用いて、ヒト線維芽細胞を安全かつ効果的に作成したりすることが可能であることも報告されています。バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)は、てんかん薬などに用いられる薬剤となります。


線維芽細胞→iPS→線維芽細胞の往復で機能的線維芽細胞が得られるこというわけですね(参考5).

「iPS細胞」が、今後、どのような歴史を作っていくのか?
とても楽しみですね。またの機会にお話をしてみたいと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72. 

Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors 

Kazutoshi Takahashiら・・Shinya Yamanaka

 

2)Science. 1998 Nov 6;282(5391):1145-7.
 Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts
J A Thomsonら

 

3)Nat Biotechnol. 2008 Jan;26(1):101-6.
Generation of induced pluripotent stem cells without Myc from mouse and human fibroblasts
Masato Nakagawaら・・Shinya Yamanaka

 

4)Nat Biotechnol . 2008 Nov;26(11):1269-75.
Induction of pluripotent stem cells from primary human fibroblasts with only Oct4 and Sox2
Danwei Huangfuら

5)PLoS One. 2011 Feb 28;6(2):e17128.

Epigenetic and phenotypic profile of fibroblasts derived from induced pluripotent stem cells
Kyle J Hewittら

 

(千鳥ヶ淵の桜: これから訪れる春の風景)

(筆者撮影)

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