こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
先ほどまでは、雪が散らついておりました。
「立春」を過ぎてもなお舞い降りる雪を見ながら、冬の名残(なごり)と捉える(とらえる)べきか、それとも、春への序章なのだろうか・・・などと窓の外をぼんやりと見ておりました。
春になっても降る、あるいは消えずに残っている雪を「名残雪(なごりゆき)」と呼ぶわけですが、冬から春への移行を感じさせる季語として扱われます。
2月の雪にはまさに、終わりと始まりが一つに溶け合う「境界の美」があるということでしょうか。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
さて、以前にもお話をしたことがある話題なのですが・・・
「活性型ビタミンD」による「老化細胞」を抑制するメリットについて、再度、お話をしてみたいと思います。少し復習をぢてみますと、次のようなものになります。
「細胞老化」は、様々なストレス応答の結果として生じる不可逆的な「増殖停止」の状態でしたね。
「テロメア」の長さがそれ以上は分裂できなくなる「ヘイフリックの限界」に達することや、そこまで達しなくても、なんらかの遺伝子異常が生じることにより、細胞分裂を停止することで「老化細胞」になるというケースもありましたよね。
老化した細胞は単に機能を停止するだけでなく、
「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype:老化関連分泌表現型)」と呼ばれる、炎症性サイトカインやマトリックス分解酵素を分泌する形質を獲得します(参考1)。
加齢に伴う「老化細胞」の蓄積(ちくせき)は、組織の「慢性炎症(Inflammaging)」を誘発し、動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症、神経変性疾患などの多岐にわたる加齢関連疾患の共通基盤となります (参考2)。
先に述べたとうに「細胞老化」は、テロメアの短縮、DNA損傷応答、酸化ストレス、発がんストレスなどによって誘導されます。
これらの反応をもう少し詳しくみてみると、「p53/p21CIP1経路」、および「 p16INK4A/pRb経路」が活性化しますと、「細胞周期」を恒久的に停止させます。
「p53/p21CIP1経路」活性化は、 DNA損傷やストレスにより活性化され、細胞周期を停止させますし、「 p16INK4A/pRb経路」が活性化しますと、「細胞周期」を恒久的に停止させます。
こうして生じた「老化細胞」は、IL-6、IL-1β、TNF-α、および MMP 群を分泌し、「パラクライン」作用によって周囲の正常細胞へも老化を「伝播」させます(参考2)。
「パラクライン作用」とは、細胞が分泌する「成長因子」、「サイトカイン」、「エクソソーム」などが血液などを経由せず、隣接する細胞や
局所的な細胞に直接作用するシグナル伝達機構のことでしたね。
つまり、「老化細胞」が1つ生じますと、周囲の細胞は次から次へと
「老化細胞」が生じ、最終的には、ヒトの内臓、皮膚などを加速度的に「老化」させ、最終的にはヒトの寿命そのものを短くしていくとも考えられます。
では、この絶望的とも言える状況で「活性型ビタミンD」は、どのようにして、「老化細胞」を抑制していくのでしょうか?
「活性型ビタミンD」は、以下の5つの主要な経路を通じて「老化」を制御すると考えられています。
1 )Nrf2-抗酸化経路の活性化
「活性型ビタミンD」は、VDR(ビタミンD受容体)を介して細胞内の
「抗酸化スイッチ」である Nrf2 の転写を促進します(参考3)。
「Nrf2 」は「転写因子」なのですが、核内で「Nrf2」は、抗酸化酵素(SOD、カタラーゼなど)やグルタチオン合成酵素、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)などの抗酸化・解毒遺伝子の発現を誘導し、細胞内の抗酸化力を高めるとされているのですね。
マウスモデルにおいて、「ビタミンD活性化酵素」の欠損は著しい酸化ストレスと早期老化を招きますが、外因性の「活性型ビタミンD」を補充により、「Nrf2 」を介してこれらの症状が劇的に改善されることが証明されています(参考3)。
2 )エピジェネティック制御:VDR-Ezh2-p16軸
老化マーカーである「 p16(p16INK4a)」の発現抑制において、「ビタミンD」は、エピジェネティックな「蓋(ふた)」の役割を果たします。
これは、ちょっと、難しいのですが・・・
「活性型ビタミンD」は、「ヒストンメチル化酵素 Ezh2 」の発現を誘導します。「ヒストンメチル化酵素 Ezh2 」は、遺伝子の発現を抑制する働きがあります。これが、「 p16 遺伝子」の存在する部分を抑制するようなヒストン修飾(H3K27me3)を促進します (参考4)。
これにより、幹細胞の増殖能が維持され、組織の再生能低下が防がれます。
3)抗老化タンパク質Klotho(クロソ)の誘導
「Klotho(クロソ/クロトー)」 Kは、主に腎臓や脳で生成される「抗老化タンパク質(ホルモン)」です。1997年に日本人の研究者(黒尾誠氏ら)によって発見され、寿命や老化のメカニズムに深く関与する物質として、現在世界中で研究が進行しています。 、
この「Klotho(クロソ/クロトー)タンパク」が欠損すると「早期老化」を呈し、過剰発現すると寿命が延長する「長寿遺伝子」のひとつです(参考5)。
「活性型ビタミンD」は、「Klotho 遺伝子」のプロモーター領域にあるビタミンD応答配列(VDRE)に直接結合し、その発現を強力にブーストします (参考6)。
Klotho はインスリン/IGF-1シグナル伝達経路(IIS経路)の抑制やWntシグナルの制御を通じて、全身性の「抗老化作用」を発揮するとされています。
4 )ミトコンドリア恒常性の維持
「VDR(ビタミンD受容体)」は、核内だけでなく「ミトコンドリア」にも局在し、「マイトファジー(損傷したミトコンドリアの分解)」や呼吸鎖機能の調節に関与します(参考7)。
「VDR(ビタミンD受容体)」が、機能不全に陥ると、ミトコンドリアからの「活性酸素(ROS)産生」が増大し、DNA損傷を介して細胞老化が加速します。
ビタミンD補充は、ミトコンドリアの「質」を維持することで、老化の源流を断つ役割を果たします。
5)「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」の活性化
長寿遺伝子として知られる「サーチュイン1遺伝子( SIRT1 )」も、
ビタミンDの制御下にあります。「活性型ビタミンD」は
「サーチュイン1遺伝子( SIRT1 )」の発現を増強し、p53 や NF-\kappa B の脱アセチル化を通じて、アポトーシス抑制と抗炎症作用を同時に発揮することが報告されています。
いかがでしょうか?「活性型ビタミンD」というのは、「骨粗鬆症」の治療薬のひとつで、既に製剤化されています。
もちろん、「骨粗鬆症」の状態になければ、保険診療では処方できないわけですが、「抗老化医療」の中でも期待できそうですね。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
参考)
1)Nat Rev Mol Cell Biol. 2024 Dec;25(12):958-978.
The senescence-associated secretory phenotype and its physiological and pathological implications
Boshi Wangら
2)Endocr Rev.. 2024 Sep 12;45(5):655-675.
Targeting Cell Senescence and Senolytics: Novel Interventions for Age-Related Endocrine Dysfunction.
Masayosi Sudaら
3)Agibg Cell. 2019 Jun;18(3):e12951.
1,25-Dihydroxyvitamin D exerts an antiaging role by activation of Nrf2-antioxidant signaling and inactivation of p16/p53-senescence signaling
Lulu Chenら
4)Aging Cell. 2020 Feb;19(2):e13095.
1,25-Dihydroxyvitamin D protects against age-related osteoporosis by a novel VDR-Ezh2-p16 signal axis
Renlel Yangら
5)Kidney Int. 2007 Apr;71(8):730-7.
Klotho: an antiaging protein involved in mineral and vitamin D metabolism
P-Erena Torressら
6)Biochem Biophys Res Commn. 2011 Oct 28;414(3):557-62.
Vitamin D receptor controls expression of the anti-aging klotho gene in mouse and human renal cells
Ryan E Forsterら
7)Int J Mol Sci. 2018 Jun 5;19(6):1672.
Vitamin D Receptor Is Necessary for Mitochondrial Function and Cell Health
Chiara Riccaら
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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