こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

気温は若干( じゃっかん)、低下したようですが、なんとも蒸し暑さを感じます。

 

暦を見ますと・・・七十二候(しちゅじゅうにこう)では、

「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」となっています。

 

その意味は、春から夏にかけて鳴り響いた雷が鳴らなくなってくる頃なのだとか。

 

そう言われてみれば・・・今年の夏はよく「稲妻(いなづま)」を見たり、「雷鳴(らいめい)」を多く聞いたかなあ〜などと思いまして、

去りゆく夏の季節を懐かしんで(なつかしんで)おりました・

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

            <AIで作成>

 

前回は、「記憶の司令塔(しれいとう)」とも言える「海馬(かいば)」のお話をさせていただきました。

 

加齢により「海馬」が萎縮していくことにショックを受けられた方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

今回は、「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」とそこから発現が生じる「サーチュイン遺伝子」について、お話をしていきたいと思います。

 

まずは、「NAD+」の歴史をご紹介しておきたいと思います。


◯ 「NAD+」発見の経緯
 

 1906年頃: イギリスの生化学者Arthur HardenとWilliam John Youngによって、NAD+が初めて発見されました。彼らは酵母抽出物中に、アルコール発酵を促進する「補酵素」の存在を見出しました。

1929年頃: Hans von Euler-Chelpinが、この補酵素が核酸糖リン酸であることを同定しました。
 

 1936年頃: Otto Heinrich Warburgが、NAD+が水素イオンの受け渡しに関与していることを示し、ニコチンアミド部分が酸化還元反応の部位であることを特定しました。
 

◯ ビタミン前駆体の発見
 1938年頃: Conrad Elvehjemが、NAD+のビタミン前駆体としてニコチンアミドを同定しました。

1939年頃: ElvehjemらがナイアシンがNAD+合成に使われることを示しました。

長い歴史があるので・・・途中は割愛(かつあい)しまして、最近の研究結果に目を移しますと・・・


 2000年頃: Leonard P. Guarenteの研究室で、NAD+依存性のタンパク質脱アセチル化酵素であるサーチュインが発見されました。

2009年頃: 今井眞一郎博士が「NADワールド」仮説を提唱し、哺乳類の老化と寿命の主要な調節因子としてサーチュイン1とNAMPTを位置づけました。
 

 2016年: 今井眞一郎博士が、「NADワールド2.0」仮説を発表し、脂肪組織由来の細胞外NAMPTと骨格筋由来のマイオカインが視床下部のNAD+レベルを維持するという考えを提示しました。

上に示すように・・・NAD+の研究は100年以上にわたって続けられ、その機能や重要性についての理解が徐々に深まってきました。

そして、現在も老化や代謝疾患との関連など、活発な研究が行われています。

 
これに対し、「NMN」の歴史を見ますと・・・次のようなものになります。
 
「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」の開発については、2004年に重要な研究が発表されたのが最初の大きな節目です。その研究で、「NMN」が「NAD+」の前駆体(ぜんくたい)として機能し、細胞のエネルギー産生と寿命に影響を与える可能性が示されたことになります。
 
もちろん、それ以来、NMNに関する研究は加速しており、特に老化防止や健康寿命の延長に向けた応用が注目されています。
 
つまり、「NAD+」の研究は、120年程度前から既に始まっており、「サーチュイン遺伝子」の活性化やミトコンドリアのATP産生を増加させることが分かっていたわけです。
 
しかし、「NAD+」を経口摂取する方法が見つからなかったわけですね。
それを見つけたのが今井眞一郎博士であり、その形態が「NMN」というサプリであったというわけですね。
 
 
「NAD+」と「サーチュイン遺伝子」のお話は、後日の話題としたいと思います。「サーチュイン遺伝子」の中では、
現在、「サーチュイン1 遺伝子」が最も研究が進んでいるのですが・・・なかなか、面白い性質を知ることができると思います。
 
 
素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ
 
それでは、またバイバイ
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<ブログ後記>9月24日
 

昨日から急に気温が下がり、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がそのとおりになっていますね。

 

古くからの「たとえ」どおりに・・・いきなり、気温まで下がりますと、かえって体調が狂う(くるう)などとボヤいているのは、私だけでしょうか?

 

今回は、「NAD+」の歴史がとても古いものであるというお話をさせていただきました。


「NMN」のサプリは、日本国内では人気があるわけですが、欧米では「NAD+」の点滴がポピュラーなもので「NMN」のことは、あまり知らないなどと聞くと、ちょっと驚きます。

実際に「NMN」は、いろいろな要因によって、例えば、腸内細菌の状態によっても、その吸収が影響を受けることも報告されており、その効果の実感に個人差が生まれる原因になっていると考えられています。

・・・とは言っても、慶應義塾大学の研究グループは、抗老化候補物質として注目されている「NMN」について、健康なヒトが長期間内服しても安全であることを確認したと国際的な科学誌に科学論文を2024年1月に発表しています。。

その内容は、8週間と長期にわたり経口投与された「NMN」は、健康な成人男性において、末梢臓器の「NAD+」の量を増加させ、
安全に使用可能であることはもちろんのこと、軽度の耐糖能障害(たいとうのうしょうがい)を起こしているヒトにおいては、改善効果をもたらす可能性がある・・・と報告しているのですね。

 

軽度の耐糖能障害とは、「糖尿病予備軍」のことですから・・・医学的には、かなりの朗報(ろうほう)となるわけです。


このようなことから考えますと・・・「NMN」は、巷(ちまた)の一部でささやかれているような「わけのわからない、危険な」物質
ではないと言えますよね。

参考)
1)Endocr J 2024 Feb 28;71(2):153-169. 
Safety and efficacy of long-term nicotinamide mononucleotide supplementation on metabolism, sleep, 
and nicotinamide adenine dinucleotide biosynthesis in healthy, middle-aged Japanese men

Shintaro Yamaguchiら

この臨床研究により、「NMN」は「長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)」を活性化するための有力候補の一つとされることから、、「NMN」を安全に服用できることを証明した意義は大きいと世界的に評価されていっるそうです。。

では、古くから欧米に存在する「「NAD+点滴」や新しい「NMN」「サーチュイン遺伝子」が活性化されることのメリットとは、どのようなことがあるのでしょうか。
 

「サーチュイン遺伝子」の中で、現時点で注目を集め、研究が最も進んでいるのが「サーチュイン1遺伝子」なので、「サーチュイン1遺伝子」について、まとめてみたいと思います。

「サーチュイン1(SIRT1)遺伝子」の活性化によるヒト臓器へのメリットとは、次のようになります。

「サーチュイン1(SIRT1)遺伝子(以下はSIRT1):は、老化やストレス応答、代謝調節に関与する遺伝子であり、その活性化は
ヒトの健康と寿命に多大な影響を与えることが示されています。

 

「SIRT1」は、「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)」依存の脱アセチル酵素として機能し、複数のタンパク質を修飾して細胞の生存と修復機構を促進します。

これにより、「SIRT1」の活性化はさまざまな臓器や組織において多くの健康上のメリットをもたらすと考えられています。


SIRT1の活性化がもたらすヒトの各臓器への主なメリットについて、その一部をご紹介したいと思います。

1.脳へのメリット 
 

「SIRT1」の活性化は神経細胞の保護と修復に役立ち、特に神経変性疾患に対する防御効果が注目されています。
 

「SIRT1」は、アルツハイマー病やパーキンソン病など、神経変性疾患に関連するタンパク質の蓄積を抑制し、認知機能の改善に
寄与することが研究で示されています。

 

具体的には、「SIRT1」タンパクが、脳内での活性酸素などの「酸化ストレス」を軽減し、ニューロンの長寿を促進します。

また、神経成長因子の産生を増加させることで、シナプスの可塑性や神経伝達を改善し、認知機能の維持に役立つとされています。
 

もちろん、前回のブログで話題にさせていただいた「海馬(かいば)」の萎縮のスピードを遅らせる効果も指摘されています。

参考)
2) Molecular Neurobiology, 54(7), 5604-5619.
SIRT1 Overexpression in Mouse Hippocampus Induces Cognitive Enhancement Through Proteostatic and Neurotrophic 
R. Cospasら

2. 心臓と血管系へのメリット


「SIRT1」は、心血管系の健康にも重要な役割を果たします。心臓や血管の組織では、「SIRT1」の活性化が動脈硬化や高血圧のリスクを
低下させることが示されています。

 

「SIRT1」、炎症反応を抑制し、「血管内皮細胞」の機能を改善することで、血管の弾力性を維持します。
 また、「SIRT1」は、心筋細胞の代謝を改善し、エネルギー効率を向上させるため、心不全の予防や心臓機能の維持に寄与します。

参考)
3..Cell Cycle, 10(4), 640-647.2011.
Protective roles of SIRT1 in atherosclerosis
S Steinら 


3. 肝臓へのメリット
肝臓において、「SIRT1」は脂質代謝と糖代謝の調節において中心的な役割を果たしています。「SIRT1」の活性化は、脂肪肝疾患の発症を抑制し、インスリン感受性を向上させることで、2型糖尿病やメタボリックシンドロームの予防に役立ちます。
 

さらに、SIRT1は肝細胞の再生を促進し、アルコール性および非アルコール性脂肪肝疾患に対する防御効果があるとされています。

参考)
4.Mol Med Rep. 2019 Jan;19(1):555-562.
Nicotinamide induces liver regeneration and improves liver function by activating SIRT1
Hai-Feng Wanら  など


4.皮膚へのメリット
皮膚においても、「SIRT1」は、「老化」を遅らせる効果があるとされています。「SIRT1」の活性化は、皮膚細胞の酸化ストレスを軽減し、
DNA損傷の修復を促進することで、シワやたるみなどの老化症状を軽減します。

参考)
5.Evid Based Complement Alternat Med. 2020 Aug 21;2020:2343817
Mitochondrial Respiratory Chain and Its Regulatory Elements SIRT1 and SIRT3 Play Important Role in the Initial Process of Energy Conversion after Moxibustion at Local Skin.
Zhang N,ら

・・・とまだまだ、論文での報告はありまして、免疫細胞の活性化

、老化による筋肉減少の改善と続くわけですが・・・

それは、またの機会にお話をしたいと思います。

 

 

これまでにもお話をしてきたように「SIRT1」などの「サーチュイン遺伝子」の活性には、「NAD+」が不可欠です。

しかしながら、加齢に伴い「NAD+」のレベル(量)が低下することが知られています。
 

最近の研究では、NAD+の前駆体である「ニコチンアミドリボシド(NR)」や「NMN」の補充が、「SIRT1」の活性を回復させ、加齢に関連する代謝異常や老化現象を改善する効果があることが示されています。

 

しかしながら、世界中の研究者の誰もが「この話がここで終わりだ」とは考えていない・・・というところが、とても重要です。


今後も「SIRT1」などの「サーチュイン遺伝子」の研究は、老化に伴う疾患の予防や治療の分野において極めて重要であり、今後の医学的な進展(しんてん)が期待されているのですね。

 

今回も最後まで、お付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

 

 

<ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町

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( 筆者撮影)

 

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医学博士, 内科医

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