こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
夏の暑い日が続いていますね。
もう、7月最後の休日となっています。
暦を見ますと二十四節気の「大暑」を迎えていることに気がつきました。
「大暑」と言えば、1年で最も暑い時期ということで、毎日うだるような暑さが続いていることも、納得できるというものでしょうか。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、「陽射し(ひざし)、つまり、太陽からの紫外線が、DNAに傷害を与えるというお話をしてみたいと思います。
紫外線は波長によって「UV-A」(320-400 nm)、「UV-B」(280-320 nm)、「UV-C」(100-280 nm)に分類されます。
地球の大気圏は、「UV-C」をほとんど吸収するため、地表に届くのは主に「UV-A」と「UV-B」となりますね。
このうち、「UV-B 」は細胞内 DNA に 直接吸収され、DNA の損傷を引き起こします。
そして、UV-Aは生体内の様々な分子に吸収され、その結果生じる「活性酸素」を介して細胞の膜脂質や蛋白質、DNAなどに酸化的損傷を与えるとされています。
ここまでは、以前のブログ内でもご紹介しましたよね。
では、紫外線によるDNA傷害には、どのようなものがあるのでしょうか?
紫外線によるDNA傷害には、主に以下のような変化があります:
1. シクロブタン型ピリミジンダイマー (CPD) の形成
隣接するピリミジン塩基(チミンまたはシトシン)間に共有結合が生じます。これはDNA変異の主要な原因となります。
2. (6-4)光産物の生成
これも隣接するピリミジン塩基間で起こりますが、CPDとは異なる構造を持ちます。
3. 一本鎖切断
DNAの骨格が切断され、一本鎖が断裂することがあります。
4. 酸化的損傷
紫外線によって生成された「活性酸素種(フリーラジカル)」がDNA塩基を酸化することがあります。8-オキソグアニンなどが生成されます。
5. 塩基の脱離
紫外線の影響でDNAから塩基が外れることがあります。
これらの損傷は、細胞の修復機構によって修復されることが多いですが、修復できないと、次世代の細胞に持ち越さないよう「アポトーシス」という機序で自ら壊れてしまうとされています。
では、「紫外線」によって傷害を受けたDNAを修復するメカニズムには、どのようなものがあるのでしょうか?
1. ヌクレオチド除去修復 (NER)
紫外線による主要な損傷(CPDや(6-4)光産物)を修復する主要な経路です。
損傷部位を認識し、その周辺の一連のヌクレオチドを切り出します。
そして、 健全なDNA鎖を鋳型として、切り出された部分を新しく合成します。
2. 塩基除去修復 (BER)
主に酸化的損傷や脱塩基部位の修復に関与します。
損傷した塩基を除去し、正しい塩基に置換します。
3.ミスマッチ修復 (MMR)
紫外線損傷の直接修復ではありませんが、複製エラーの修正に重要です。
紫外線損傷の修復過程で生じた誤った塩基対合を修正します。
5. 組換え修復
重度の損傷や二本鎖切断の修復に関与します。
相同組換えや非相同末端結合などの経路があります。
6. トランスレージョン合成 (TLS)
損傷を乗り越えて複製を続行する機構です。
損傷を修復するわけではありませんが、細胞生存に重要です。
・・・などがあり、これらのメカニズムは相互に補完し合い、様々な種類のDNA損傷に対応しています。
紫外線によるDNAの傷害は、多くの種類があるものの、それを修復するメカニズムが多く存在するため、DNAの損傷が残らないのですね。
メデタシ、メデタシ・・・というお話であれば・・・
わざわざ、こんな内容を紹介することは、ありません。
実は・・・こうしたDNA損傷を修復する能力が「加齢」により、低下してしまうのが問題になってくるわけですね。
例えば・・・この現象には複数の要因が関与しています。主な理由とは、どのようなものなのでしょうか?
要因(よういん)とされるものを挙げてみたいと思います。
1)修復酵素の機能低下、2)DNAのメチル化パターンの変化などによるエピジェネティックな変化、3)テロメアの短縮・・・
そして、4)ミトコンドリア機能低下 、5) 幹細胞の枯渇、6)長年にわたる環境ストレスやDNA複製エラーの蓄積
7)「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の低下、8)「老化細胞」の増加・・・などにより・・・紫外線によるDNAの損傷部位の修復が追いつかず、損傷を残したまま、細胞分裂を続けていく・・・というわけです。
DNAの傷害部位を複数残したまま、次世代の細胞を作り・・・を繰り返せば・・・いったい、どうなっていくのか?
これは、解説は不要だと思います。
この「加齢によりDNA損傷を修復する能力が低下する問題」をどう解決していくのか?・・・ということは、
決して、「紫外線」による影響に限ったものでなく・・・「健康長寿」を実現していくためには、これを確実にクリアしなければいけない問題なのですね。
なぜなら、「紫外線」の照射を受けないとしても・・・日々、DNAの傷害が起きている可能性が高いわけですので・・・ね。
ならば・・・どこから、その対策を始めてみるか?
続きは、次回のテーマにしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記> 7月30日
7月も残り1日となりましたね。蒸し暑い日が続き、疲れを感じている方も多いのではないでしょうか?
今回は「紫外線」がDNAに傷害(しょうがい)を与えるというお話をさせていただきました。
DNAの障害を起こすものというと、真っ先に「放射線」が浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。
確かに程度の差こそはあれ、「紫外線」も「放射線」同様にDNAを障害することになります。
そして、「紫外線」と「放射線」とも長期的にわたる暴露が続けば、どちらも癌の発のリスクを増加させる可能性があります。
では、「紫外線」と「放射線」の相違点(そういてん)とは、どのようなことでしょうか?
この答えは、DNAの障害の程度が違うということになります。
DNA障害についてをみてみますと、紫外線と放射線はどちらもDNAを傷つけます。そして、DNA構造の変化、突然変異の誘発などを起こすというところは同じです。
ただ、そのDNA障害の内容が違っています。
「紫外線」は、同一のDNA鎖内で連続した2個のピリミジン塩基{シトシン(c),または、チミン(T)】が、共有結合によって
二量体を形成する・・・と少し難しいのですが、
簡単に言いますと・・・同じDNA鎖の中で、塩基同士をくっつけてしまいます。
DNA内にこのような構造が生じると、DNAの複製や転写の妨げとなり、突然変異などを生じやすいとされています。
これに対して、「放射線」は、DNA鎖を切断することが多いと考えられています。
これは、「紫外線」によるDNA損傷よりも深刻な損傷といえます。
なぜなら、「放射線」で生じるものは、2本鎖で構成されるDNAの
1本鎖が切断されてしまったり、また、2本とも
同時に切断されるようなDNA損傷が生じることが多いとされます。
このような損傷を修復するのは難しいとされており、特に2本鎖切断の修復は複雑で、エラーが発生しやすいとされているのですね。
これらのDNA障害に対して、それに対処する方法は、ほぼ共通です。
この修復プロセスの詳細は、まさに神がかりな精密機械のようなプロセスであり、いくつかの修復のメカニズムが、しばしば重複して機能し、相互に補完し合うものであり、
DNA損傷の種類や細胞周期の段階に応じて、正しい修復方法が自然に選択されていくことになるのですね。
まさに神の為せる(なせる)技だと思うのは、私だけではないはずです。
これらの修復プロセスには、「NAD+」や「サーチュイン遺伝子」も重要な役割を果たしています
例えば、「NAD+」は、PARP酵素の活性化DNA損傷の検出と修復の開始に関与し、サーチュイン遺伝子・・・とくにサーチュイン1遺伝子(SIRT1)は様々な修復過程を促進していることが分かっています。
DNAは、「紫外線」や「放射線」ばかりでなく、さまざまな問題で傷つくわけですが、この問題を解決する複雑な「修復システム」があるのですね。
「NAD+」や「サーチュイン遺伝子」は、この修復システムの重要な部分で、これらの研究は将来の医療応用にもつながる可能性があると考えられているのですね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1. Cell Metab. 2015 Jul 7;22(1):31-53.
NAD(+) Metabolism and the Control of Energy Homeostasis: A Balancing Act between Mitochondria and the Nucleus
Carles Cantó ら
2.Cell Metab. 2014 Nov 4;20(5):706-707.
Linking DNA damage, NAD(+)/SIRT1, and aging
Leonard Guarente ら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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