こんにちは、内科医 ひとちゃんです
気持ちのよい青空が広がり、穏やかな休日の午後となっています。
暦に目をやりますと、七十二候では・・・
「葭始生(あし はじめてしょうず)」となっていることに気がつきました。
アシは北半球の気候温暖な地方の湿地や川辺、湖沼の岸などに野生するイネ科の大型多年草です。高さ2〜3mに成長し、大群落をつくる植物ですね。
万葉時代(645〜733年)には、もっぱら「アシ」と呼ばれ、文字には「葦」「蘆」「葭」「安之」などが用いられたそうです。
「アシ」と言えば・・・次のような「名言」がありましたね。
Man is but a reed, the most feeble thing in the nature, but he is a thinking reed.
人間は葦(あし)に過ぎず、自然の中で最も弱いものだが、彼は考える葦である。
feebleは特に病気や老齢によって、弱々しい、虚弱な という意味を表すのだそうです。
単に・・・「人間は考える葦(あし)である」と言われることも多いですよね。
この言葉を残したのは、17世紀のフランスの哲学者ブレーズ・パスカルです。
「宇宙の無限と永遠に対し、自己の弱小と絶対の孤独に驚き、大自然に比べると人間は一茎の葦のようなもので、最も弱い存在である。
しかし、人間は単なる葦でなく『考える葦である』」ということを言っているのだとか。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
そして・・・この「NK細胞」の数も重要であるのですが・・・
「NK細胞」の活性が重要である・・・ということでしたね。
では・・・「NK細胞」などの免疫細胞は、ヒトの「老化」の影響は受けないのでしょうか?
答えは・・・免疫細胞も「老化」の影響を受ける・・・ということになります。
これを「免疫老化(めんえきろうか)」と呼びます。
この「免疫老化」とは・・・加齢に伴って、「免疫システム」の機能が低下する現象を指します。
このプロセスは、免疫応答の効率が悪くなり、感染症に対する抵抗力が弱まることを意味します。
具体的には、「T細胞」や「B細胞」などの免疫細胞の機能が低下し、新しい「抗体」を生成する能力が減少します。
また、免疫システムが「自己」と「非自己」を区別する能力も低下するため、自己免疫疾患や慢性炎症のリスクが高まることがあると考えられているのですね。
「NK細胞」も例外ではなく、「免疫老化」の影響を受けます。
「NK細胞」には「免疫老化」により、次のような影響が出ると考えられています。
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NK細胞の数の変化
加齢によりNK細胞の総数に変化が生じることが報告されています。特に、高齢者ではNK細胞の数が増加することがある一方で、その機能性が低下するという研究結果もあります。
2.細胞傷害機能の低下
NK細胞の主要な機能である細胞傷害能、つまり感染細胞やが
ん細胞を直接殺す能力が低下します。これは、細胞傷害に関与
する酵素の活性低下などが原因と考えられています。
3.サイトカイン応答の変化
NK細胞はサイトカインによっても調節されるため、加齢に伴う
サイトカインの産生パターンの変化がNK細胞の機能に影響を与
えることがあります。
上記の機序によって、「NK細胞」の免疫監視機能が弱まり、高齢者が「癌」や「感染症」に対して脆弱になる原因の一つとなっていると考えられていますので、とても重要ですね。
では・・・そもそもの「免疫老化」の原因とは、どのようなものなのでしょうか?
そして・・・その影響を減らすことは可能なのでしょうか?
お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記>4月23日
間もなく、ゴールデンウィークを控えているというのにすっきりしないお天気が続いていますね。
今回は「NK(ナチュラル・キラー)細胞」などの免疫細胞の老化についてのお話をさせていただきました。
まず、「NK細胞」の話題からお話をしますと・・・
本文内でも述べたのですが、「NK細胞」は「癌細胞」、「ウイルス感染細胞」、「老化細胞」を破壊するわけですね。
健康なヒトでも1日に少なくとも3000個以上の癌細胞が発生し、免疫細胞の力が低下していなければ・・・すぐに免疫細胞によって破壊されるために癌にはならない・・・と以前のブログでお話をしたことがあるのですが、ここでいう免疫細胞の大部分が「NK細胞」であるといってもよいと思います。
さらに「老化細胞」さえも破壊することが可能であるわけですね。
「老化細胞」は、正常細胞が分裂するたびにテロメアが短くなり、やがて、分裂を休止した細胞でしたよね。一部は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)を自ら(みずから)生じ、破壊されるわけですが・・・そのまま、分裂を休止した状態で、さまざまな組織に残り続ける「老化細胞」も多いわけですね。
それだけなら、マシなのですが・・「老化細胞」は炎症性のサイトカインを周囲に撒き散らし(まきちらし)、周囲の正常な細胞に傷害(しょうがい)を与え、「老化細胞」に変えてしまうことから「ゾンビ細胞」とも呼ばれるものでしたね。
「老化細胞」が残り続け、さらにその数が増えるにしたがい、加速度的にヒトの老化も進行すると考える研究者もいます。
このように考えますと・・・「NK細胞」の数もさることながら、
「NK細胞」の活性をいかに高く保てるか(たもてるか)ということが、健康で長生きする(ウェル・ビーイング)ためには、とても重要であるかが、ご理解いただけるのではないでしょうか。
そして、次に話を「免疫老化」に戻しますと・・・加齢に伴い、免疫細胞の活性は、低下してきます。
その根本的な原因とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
もちろん、「免疫老化」を起こす根本的な原因は、単一の要因ではなく、複数の要因が相互作用していく生物学的プロセスに関連していると考えられています。
具体的には、以下のような要因が免疫老化に寄与しているとされています。
1)DNAの損傷と修復の問題
細胞のDNAは、紫外線や放射線、化学物質、活性酸素などによって損傷を受けることがあります。通常、細胞は損傷を修復するメカニズムを持っていますが、加齢によりこれらの修復機能が衰えると、DNAの損傷が蓄積し、細胞の機能障害や死を引き起こす可能性があります。これは免疫細胞にも当てはまり、特に長寿命の細胞や迅速に分裂を繰り返す細胞で顕著であると考えられています。
2)テロメアの短縮
細胞の染色体の端にあるテロメアは、細胞が分裂するたびに短くなります。テロメアがある臨界点まで短くなると、細胞は分裂を停止し、老化やアポトーシス(プログラム細胞死)に入ります。免疫細胞のテロメア短縮は、これらの細胞の機能低下や減少を引き起こす重要な因子です。
3)エピジェネティックな変化
DNAメチル化やヒストン修飾など、遺伝子の発現を調節するエピジェネティックな変化も、免疫細胞の機能と老化に影響を与えます。これらの変化は、遺伝子のオン・オフを制御し、免疫応答の効率に影響を及ぼす可能性があります。
4)炎症の慢性化
加齢に伴い、体内の低レベルな炎症が慢性化することがあります(炎症老化)。これは免疫システムのバランスを乱し、慢性疾患のリスクを高めると同時に、免疫細胞の機能にも悪影響を及ぼします。
5)代謝の変化と細胞のストレス応答
加齢による代謝プロセスの変化も免疫システムに影響を与えます。細胞がエネルギーを生産し、維持する過程が効率悪くなることで、細胞のストレス応答能力が低下し、免疫細胞の機能が損なわれる可能性があります。
これらの原因を並べますと・・・これは「免疫老化」は、自然の摂理(せつり)であって、諦めた(あきらめた)方がいいんじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが・・・
「いやいや、そんなこともないですよ」というのが私の正直な感想です。
どうして、そのように私が思うのか?・・・は、またも機会にいたしますが・・・
本当のところは、私が考えているというよりは、世界各国の研究者が、この問題は解決できるのではないか・・・と考え、研究を進めているから・・・ということになりますね。
そして・・・遠い将来ということでなく、2〜3年後にもこれらの問題があっさりとクリアできてしまう可能性もあるのかもしれませんね。
なぜなら・・・幹細胞由来のエクソソーム、N M N, 5-ALA、NK細胞を用い他免疫治療、そして活性酸素に対しての高濃度ビタミンC点滴
などのいくつかの可能性がある武器は、既に手にしているわけですから・・・ね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました
参考)
1.Front Aging.2023; 4: 1202152. Published online 2023 Jul.3
The central role of DNA damage in immunosenescence
Loren kellら
2.Adv Nutr.2023 Nov; 14(6): 1416–1435.
The Safety and Antiaging Effects of Nicotinamide Mononucleotide in Human Clinical Trials: an Update
Qin Songら
3.Journal of Trancelational Medicin 18:449(2020)
Mesenchymal stem cell derived-exosomes: a modern approach in translational medicine
Sepideh Nikfarjamら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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