こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

青空が広がり、爽やかな休日となりました。高気圧に覆われ、全国的に気温が上がっているのだとか。

 

暦の二十四節気をみますと「清明(せいめい)」となっています。


「清明(せいめい)」の意味は、万物が清く明るく生き生きと見える時期であるようです。

 

そして、何かしら新しいことが始まっていく気もしますね。

ロシアの小説家レオ・トルストイは、次のような言葉を残しています。

Spring is the time of plans and projects.

「春には新しいことが始まったり、新しい何かが待ち受けていたりする」という意味になるそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

今回は、「ナチュラルキラー(NK)細胞」のお話をしてみたいと思います。

 

「NK細胞」とは、どのような細胞であったでしょうか?

 

「NK細胞」は、生まれつき誰もに備わっている(そなわっている)自然免疫系の細胞でしたよね。

 

体内の各組織の免疫監視を行なっていて、「ウイルス感染」および、

「がん細胞」が発生すれば・・・すぐに破壊するという宿主防御にとても重要な働きを持っているのですね。

 

最近では、加齢に伴って生じる「老化細胞」も「NK細胞」により、

破壊されることが分かっています。

 

このように「NK細胞」は、とても重要な働きを持つのですが・・・

残念ながら、いくつかの弱点を持っています。

 

1)NK細胞の数が少ないこと

 

2)NK細胞の寿命が、5〜7日と短いこと

 

3)NK細胞の数は加齢とともに安定または増加する傾向にあるが、その機能は低下していること

 

などとなります。

 

例えば・・・1)の「NK細胞」の少なさは・・・血液内を循環しているリンパ球の8~20%にすぎないことが知られています。

 

リンパ球数の正常値は、成人で血液1マイクロリットル当たり1500個とされていますが・・・その8~20%というと、血液1マイクロリットル当たり120個〜300個と、かなり。少ないことが理解できますよね。

 

3)の「NK細胞」の数と活性は、とても重要です。

「NK細胞」自体の数が少ないわけですから・・・その数は多いほどよい・・・と考えられることが多かったのですが・・・現在では、その機能が高いこと、つまり活性が高いことが重要と考えられています。

 

では、「NK細胞」の活性が高い・・・とは、どのようなことを指す(さす)のでしょうか?

 

一言で言えば・・・「老化細胞」、「癌細胞」を殺傷する能力ということになります。

 

「NK細胞」の重要な活性化レセプターの一つが「NKG2D」という分子となります。

 

「老化細胞」を例に「NK細胞」の活性化のメカニズムを見てみますと、次のようなものになります。

 

「老化細胞」の表面には、MICAやMICBなどのストレス誘導性リガンドというものが出現しています。

 

「NKG2D」がこれらのリガンドに結合すると、「NK細胞」内でシグナル伝達カスケードというものが引き起こされて

「NK細胞」から「パーフォリン」と「顆粒酵素」を含む細胞傷害性顆粒が放出されます。

 

「パーフォリン」は、「老化細胞」の膜に孔を形成し、「グランザイム」という顆粒酵素が、「老化細胞」内へ侵入する・・・というわけです。

 

「 グランザイム」は、「老化細胞」にプログラムされた細胞死の一形態である「アポトーシス」を誘導するプロテアーゼですので・・・

 

「老化細胞」は、「アポトーシス」という形で自ら(みずから)壊れていく・・・というわけですね。

 

 NK細胞はストレス誘導性リガンドの発現に基づいて健康な細胞と老化細胞を区別できるため、このプロセスは非常に特異的である。

 

さらに「NK細胞」は、IFN-γ(インターフェロン-ガンマ)などのサイトカインを分泌して老化細胞を排除することもできます。

 

 IFN-γは、マクロファージなどの他の免疫細胞を活性化し、老化細胞を取り込んで除去させる働きがあるのですね。

 

上に示した一連のプロセスを・・・「NK細胞」は「老化細胞」を破壊するとお伝えしてきたのですが・・・正確に言えば、「老化細胞」に穴をあけ、「アポトーシス」を生じさせることができるというわけですね。

 

「アポトーシス」は、「プログラムされた細胞死」と訳されるわけですが・・・「老化細胞」は、この「アポトーシス」を起こすことなく、組織中に残って、炎症性サイトカインを撒き散らし(まきちらし)て、周囲の正常細胞を「老化」させていくわけですから・・・

 

「NK細胞」が「老化細胞」を破壊できることは・・・いつまでも若さを保つためにも重要なことかもしれませんね。

 

 

お話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

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<  ブログ後記   >4月16日

 

4月も半ばを過ぎようとしていますね。

今回は、「「ナチュラル・キラー(natural killer; NK)細胞」のお話を

させていただきました。

 

「 NK細胞」は、文字どおり生まれつきの「殺し屋」です。

 

全身をパトロールしながら、「癌細胞」や「ウイルス感染細胞」,「老化細胞」などを見つけ次第攻撃するリンパ球ということになりますね。

「NK細胞」が発見されたのは、1975年頃となります。日本の仙道富士郎氏(元・山形大学学長)や米国のロナルド・ハーバマン氏(当時、ピッツバーグがん研究所教授)の研究により、独力で働き、が癌細胞やウイルス感染細胞などを初期段階で攻撃する細胞が存在することが分かり、「ナチュラル・キラー=生まれながらの殺し屋」と命名されたそうです。

誰もが、生まれながらに備わっている「自然免疫」であり、非常に強い殺傷能力をもつために「NK細胞」は、最近、
癌免疫療法や「老化細胞」の除去などの次世代のアンチエイジング医療の分野で大きな注目を集めているのですね。

ところで・・・「NK細胞」が、「ウイルス感染細胞」,「癌細胞」や「老化細胞」を破壊するメカニズムとは、どのようなものなのでしょうか?

「NK細胞」は、主に「欠損自己(けっそんじこ)」の原理に基づいて活動すると言われます。
「欠損自己」というと大袈裟(おおげさ)に聞こえますが・・・この言葉は、次のようなことを示しています。

ヒトの正常な細胞は、細胞表面に「MHC class I (エムエッチシー クラス ワン)分子」というものを表出しています。

 

例えますと・・・この分子は、「自分自身の細胞」であるということを示す標識(ひょうしき)のようなものです。

 

実は・・・ヒトの細胞の表面には、「MHC class I分子」が、細胞1つあたり10万個の単位で発現しています(もちろん、ヒトだけではありませんが・・・)

 

ヒトにおける「MHC分子」を別名 「HLA(Human Leukocyte Antigen; ヒト白血球抗原)」とも呼ばれますので、ご存知の方も多いかもしれませんね。

「NK細胞」と「MHC classI抗原」の間には、どのような関係があるのでしょうか?

 

実は、次のようなメカニズムがあります。

 

「NK細胞」は、「MHC classI抗原」が、正常に表出されている細胞を攻撃しないのですが・・・

 

少しでも、「MHC classI抗原」の表出が減るなどの異常な状態となっている細胞を見つけますと・・・攻撃を開始することになります。

 

つまり、「MHC class I分子」が表出されていなかったり、その程度が

弱かったり・・・と正常な状態でない細胞があった時には、すぐさま「NK細胞」の攻撃を受ける・・・というわけですね。


実際に「癌細胞」や「ウイルス感染細胞」は、しばしば、「MHCクラスI分子」の表現を低下させていることが多く、この分子の低下は、「NK細胞」によって敏感に感知され、破壊されることになります。

 


では、「老化細胞」の場合は、どうなのでしょうか?

「老化細胞」は、「ゾンビ細胞」と呼ばれていることからも分かるように、周囲の正常な細胞に多くの障害を与えます。

 

ただし・・・「老化細胞」は、分裂をすることもできませんよね。

テロメアが短くなってしまっているからですね。

DNAレベルでの異常は、正常細胞よりも多い可能性はありますが・・

・ほぼ、その配列に変化はないことが予想されますよね。

 

それなのに、「老化細胞」を「NK細胞」が攻撃できるのは、どのような理由によるものなのでしょうか?

 

この理由の一つとして・・・一部の研究では老化細胞がMHCクラスI分子の表出を低下させることが示されています。
 

 

「 老化細胞」では、一般的に蛋白質の合成が低下し、細胞の代謝活動が変化することから、「MHCクラスI分子」の合成や表出も影響を受けることがあるというのですね。
 

もちろん、「老化細胞」のすべてが「MHCクラスI分子」の表出を低下させるというよりは、「炎症性サイトカイン」を大量に発生させている「老化細胞」が、「MHCクラスI分子」の表出を低下させているという説もあります。
 

「NK細胞」に対して 、幹細胞由来の「エクソソーム」を併用すると

「NK細胞」の活性がさらに高くなるとか・・サーチュイン遺伝子の活性化は、「NK細胞」の活性を増加させる・・・とか、

 

細胞のエネルギーである「ATP」が多い状況下では、「NK細胞」の活性がさらに高くなるなどの報告も散見されており、今後、多方面の分野への応用も可能になっていくのかもしれませんね。

 

またの機会にそのようなお話もご紹介していきたいと思います。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきまして、

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1)Front Immunol.2023; 14: Published online 2023 Jul 18. Understanding NK cell biology for harnessing NK cell therapies: targeting cancer and beyond

Eunju Shinら

 

2)J Hematol Oncol. 2021 Jan 6;14(1):7.

NK cell-based cancer immunotherapy: from basic biology to clinical development

Sizhe Liuら

(紀尾井ガーデンテラスの夜桜;筆者撮影)

 

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

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