こんにちは、内科医 ひとちゃんです
3月も半ばを過ぎて、穏やかな青空が広がる休日となりました。
いよいよ、本格的な春がやってきたのかなあ〜などと思っていたのですが・・・
20日(水)の「春分の日」は、寒さが東北や北陸、関東の山沿いを中心に大雪の恐れもあるのだとか・・・
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は「ビタミンD」についてのお話をしてみたいと思います。
「ビタミンD不足は世界的問題である」とアメリカ国立衛生研究所(NIH)は指摘していますが・・・
なかでも日本人の「ビタミンD」濃度は、極めて低いために2018年12月に厚生労働省は、「ビタミンD」の摂取基準値の引き上げを発表しています。
では、「ビタミンD」とは、どのような栄養成分なのでしょうか?
一言で言いますと・・・「ビタミンD」は、カルシウムや骨の代謝に欠かせない栄養素であるということになりますよね。
もう少しだけ、詳しくみてみると・・・
(図はお借りしました)
(表はお借りしました)」
上記に示すように・・・「ビタミンD」は、きのこ類、魚介類、卵類、乳類に多く含まれています。
「ビタミンD」は脂溶性なので、脂質を含む動物性食品から摂取したほうが吸収されやすいそうですが、きのこ類でも炒め物や揚げ物にして油とともに摂取することで吸収率を上げることができると言われているようです。
「ビタミンD」について、もう少しだけ詳しく(くわしく)見てみると次のようになります。
(図はお借りしました)
この「ビタミンD」について近年研究が進み、健康に対するより様々な効用があることが明らかになっています。
「免疫システム」や「心や神経のバランス」、そして、「老化のメカニズム」にまで「ビタミンD」が関与する可能性が報告されているわけですね。
「ビタミンD」と言えば・・・これまでは「骨の健康」を維持するために不可欠な栄養素であると考えられてきたわけですが・・・
抗炎症、抗酸化、神経保護の特性を持ち、免疫系、筋肉機能、脳細胞活動をサポートするなど、多彩な機能を持つと考えられたりもしています。
日光を浴びる機会が少ない方や、食生活が偏っている方は「ビタミンD」の摂取について意識していくことが重要なのかもしれませんね。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
参考)
1.Int J Mol Sci. 2023 Mar; 24(5): 4642
Vitamin D and Vitamin D-Binding Protein in Health and Disease
Chariotte Deirueら
2.分子生理化学研究所 記事 より
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<ブログ後記>3月19日
明日は「春分の日」であるというのに、寒さを感じる夜となっています。
この時期としては強い寒気が入り込んでいるのが、その理由だとか。
気候の安定する本格的な「春」が待ち遠しいですね。
さて、今回は「ビタミンD」についてのお話とさせていただきました。
「ビタミンD」は、カルシウムの吸収を促進し、骨の成長を促進する重要な役割を持つ栄養素であり、健康な骨を維持するために欠かせない脂溶性のビタミンです。
体内で重要な役割を果たしています。
- 食事で摂ったカルシウムやリンの腸からの吸収を助け、血液中のカルシウムとリン酸の濃度を正常に保つ。
- また、副甲状腺ホルモン(骨吸収を促進するホルモン)の分泌を抑制。
「ビタミンD」が不足すると、骨が脆く(もろく)くなり、骨折しやすくなったり、筋肉が弱くなり、転倒しやすくなったりします。
この重要な働きを持つ「ビタミンD」が不足しているヒトが多いことが、世界的み問題になっているというわけですね。
では、「ビタミンD」が不足しているかどうかは、どのように調べたらよいのでしょうか?
「ビタミンD」が少ないかどうかは、「25-ヒドロキシビタミンD(25OH-D)」と呼ばれる血液検査の項目で診断することができます。
血中「25-OHビタミンD」は皮膚で産生されたビタミンDと食物から摂取されたビタミンDの合計量を反映して変動するため、ビタミンDの代わりに測定されます。
ビタミンD総量(total)と呼ばれ、ビタミンD欠乏症などの栄養状態の指標に用いられます。
一方、「1,25-(OH)2ビタミンD」は、活性型ビタミンDとも呼ばれ、血液中のCa濃度が低下すると、腸管からのCa吸収を高め、骨への沈着を促す働きをします。健常者では副甲状腺ホルモン(PTH)によってその血中濃度はほぼ一定に保たれています。血中1,25-(OH)2ビタミンDはビタミンD効果をみるとき、主に活性型ビタミンD3剤投与による治療効果判定に用いられます。
ビタミンDが足りているのか、不足しているのかを知るためには、採血でビタミンD濃度を測定するとわかります。
具体的には血中25(OH)ビタミンD3濃度を調べて、40~80ng/ml位の範囲にあるのが望ましいと言われています。
20ng/ml 未満でビタミンD欠乏、20~30ng/mlでビタミンD不足の診断となります。
ところで、日光を積極的に浴びれば(あびれば)「ビタミンD」が不足は、解消できるのでしょうか?
おそらく・・・ですが、難しいことかもしれません。
ビタミンDは、太陽光により皮膚で作られます。十分な量のビタミンDを合成するために必要な日光の量は、年齢、肌の色、日光への露出、基礎疾患の有無などによって異なると考えられているから・・・ということになります。
1999年に発表された、ある論文があります。
その内容は、次のようなものです。
3 つの高齢者グループ (65 ~ 80 歳) について、血清 25-ヒドロキシビタミン D (25-OH-D) 濃度、食事によるビタミン D 摂取量、および 1 年間の日光曝露に関して研究がされました:。
グループ 1 (長期滞在の高齢者患者) )
グループ 2 (老人ホームの居住者)
グループ 3 (自宅で暮らす高齢者)
若年成人(30~50歳)を対照として使用されました。
グループ 1 の 25-OH-D 濃度は、他のどのグループよりも年間を通じて有意に低く、
グループ 2 の濃度はグループ 3 および対照よりも有意に低かったそうです。
長期滞在の老人患者や老人ホームの入居者における 25-OH-D レベルの低さは、食事からのビタミン D 摂取量の少なさと日光への曝露の少なさの両方の結果であろうとこの論文では、推測されています。
最近の多くの研究では、ビタミンDの欠乏は、呼吸器感染症や呼吸器疾患、自己免疫疾患、各種がん、糖尿病、認知症、うつ病の発症にも関与する可能性も指摘されています。
また、マウスの実験のデータなのですが・・・1,25(OH)2D不足は、p16、p19、p53の発現を亢進させることにより、骨組織における「細胞老化」と「SASP」を増加させるという報告もあります。
さらには、1,25(OH)2Dは、関節軟骨細胞の増殖と細胞外マトリックスタンパク質合成を促進し、「老化」と「SASP」を抑制する老化関連遺伝子である「サーチュイン1遺伝子(Sirt1)の発現を亢進することにより、
モデルマウスにおける老化に関連した膝変形性関節症(OA)の発症を予防する上で重要な役割を果たしていると結論付けてもいます。
「ビタミンD」と言いますと・・・骨を丈夫(じょうぶ)にするビタミンと認識されていますが・・・
ひょっとすると、健康年齢を大幅にアップさせる要因のひとつであることが明らかにされたりして・・・と思ったりましますね
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました
参考)
3.Ann Nutr Metab. 1984;28(3):144-50.
Vitamin D intake, sunlight exposure and 25-hydroxyvitamin D levels in the elderly during one year
C Lamberg Allardtら
4.Front Endocrinol (Lausanne). 2018; 9: 373.
Rationale and Plan for Vitamin D Food Fortificatio
Stefan Pilz.ら
5.Am J Transl Res. 2020 Feb 15;12(2):507-518.
1,25-Dihydroxyvitamin D insufficiency accelerates age-related bone loss by increasing oxidative stress and cell senescence
Wanxin Qiaoら
6.Int J Biol Sci.2023; 19(2):610-624
1,25-Dihydroxyvitamin D Deficiency Accelerates Aging-related Osteoarthritis via Downregulation of Sirt1 in Mice
Jie Chenら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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