こんにちは、内科医 ひとちゃんです
青空の広がる3月最初の休日の午後となっています。
今日 3月3日は「ひな祭り」、別名では「桃の節句」と呼ばれますね。
「桃の節句」の起源を調べてみますと、古代中国の「上巳節(じょうしせつ)」が起源であるといわれているそうです。
3月上旬にあたる上巳節は、季節の変わり目で邪気が入りやすいとされていました。そのため人々は水辺でみそぎをし、身を清めていたそうです。
この上巳節が日本に伝わると、邪気を人形に移して川に流すようになります。この人形がひな人形の原型なのだそうです。
そして、旧暦の3月3日ごろは桃の花が咲くことから「桃の節句」と呼ばれるようになりました。桃の節句という呼び名が浸透したのは江戸時代のごろと考えられています。なかなか、奥が深いものですね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
さて、今回は「肌を美しく保つ方法」についての話題にしてみたいと
思います。
では・・・「肌が美しい」とは、どのような状態をいうのでしょうか?一般的には、以下の要素が整っている状態を指すそうです。
1. うるおい
肌表面は角質層で覆われており、角質層は水分を保持することで肌を柔らかく滑らかに保ちます。
2. キメ
キメとは、肌表面の細かい凹凸のことです。キメが整っている肌は、なめらかで均一な質感に見えます。
3. ハリ・弾力
肌のハリや弾力は、真皮にあるコラーゲンやエラスチンという繊維によって支えられています。これらの繊維が十分に存在することで、肌はピンと張りつめ、弾力のある状態になります。
4. 透明感
透明感のある肌は、血行が良く、メラニン色素の沈着が少ないことが特徴です。また、ターンオーバーが正常に行われているため、古い角質が肌表面に蓄積することなく、内側から輝くような透明感を放ちます。
これらの中で、3. ハリ・弾力は、極めて重要と考える方が多いという意見もありますよね。このハリや弾力がなくなりますと・・・
シワやタルミが出て、老けて(ふけて)見えるから・・・というのが、その理由だそうです。
では、この皮膚のシワやタルミの出現と関係があることとは、どのようなことが挙げられるのでしょうか?
実は、皮膚のタルミやシワの出現は、「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」の老化と密接な関係があると考えられています。
「線維芽細胞」は、皮膚の「真皮層(しんぴそう)」に存在する細胞で、「コラーゲン」や「エラスチン」などのタンパク質を生成する役割を担っています。これらのタンパク質は、肌のハリや弾力を維持するために不可欠なものです。
しかし、加齢や紫外線の影響などによって、線維芽細胞は徐々に老化していきます。老化に伴い、線維芽細胞は繊維タンパク質の生成能力が低下し、その結果、肌のハリや弾力が失われて、タルミやシワが生じるというのですね。
さらに「線維芽細胞」が老化すると、「ヒアルロン酸」の生成量が減少し、その結果、肌の水分量が減少して、乾燥しやすくなります。乾燥は、シワやタルミを悪化させる要因となります。
さらに「線維芽細胞」が老化すると、「ターンオーバー」が遅延し、古い角質が肌表面に蓄積しやすくなります。古い角質が蓄積すると、肌のくすみやごわつきが目立ち、シワやタルミが出現しやすくなる
というわけですね。
「ターンオーバー」とは、肌の細胞が生まれ変わるサイクルのことを指し(差し)ます。
このように肌の真皮層に存在する「線維芽細胞」は、「コラーゲン」、「エラスチン」や「ヒアルロン酸」などの重要な成分を産生する、アンチエイジングにとって非常に重要な細胞と言えるのですね。
(図はお借りしました)
しかしながら・・・すべての細胞は、加齢や環境の影響で老化し、機能が低下していきます。この「線維芽細胞」も例外ではなく、老化に伴い以下の変化が起こります。
1. 増殖能力の低下
若い「線維芽細胞」は活発に増殖し、新しい細胞を作り出します。しかし、老化すると増殖能力が低下し、新しい細胞を作る数が減ります。
2. コラーゲンなどの生成能力の低下
「線維芽細胞」は、「コラーゲン」、「エラスチン」、「ヒアルロン酸」などの細胞外マトリックスと呼ばれる物質を生成します。これらの物質は、肌のハリや弾力、潤いを維持するために必要不可欠です。
しかし、老化するとこれらの物質の生成能力が低下し、肌の老化現象が現れます。
3. 老化細胞の増加
老化細胞は、アポトーシスと呼ばれる細胞死プログラムによって自然に死滅します。しかし、老化細胞はアポトーシスに対する抵抗性が高くなり、死滅しにくくなります。
そのため、老化細胞が真皮層に蓄積すると、慢性的な炎症を引き起こし、肌の老化を加速させる可能性があります。
JTKクリニックでは、高濃度ビタミンC点滴療法、幹細胞培養上清液、エクソソーム点滴、NMNなどの治療をそろえているのですが、それぞれの治療法が、真皮層にある「線維芽細胞」にどのようなメリットがあるのかは、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記>3月5日
今宵(こよい)は、雨が降り続いていますね。
桜の花が咲いている頃なら、この雨で散ってしまうのではないか・・・と心配してしまいそうですが・・・
まだ、桜の花のつぼみは小さいそうで、そうした心配はしなくて良さそうです。
さて、今回は皮膚の真皮層にある「線維芽細胞」についてのお話をさせていただきました。
年齢を重ねるにつれ、肌の老化が進行するということに異論のある方はいらっしゃらないと思います。
ヒトの多くの臓器と同様に・・・時間とともに老化して行くのは肌も例外ではなく、肌は徐々にハリやツヤを失い、シワやたるみが現れてきますよね。
では、最も美肌の維持に関わりが深いところは、どこか?・・・と言いますと・・・それは「真皮層」になるのではないかと思います。
なぜならば、「真皮層」では美肌を支えるのに欠かせない成分、「コラーゲン」と「エラスチン」のタンパク質の繊維が網状に形成されています。
「コラーゲン」は、「真皮層」の約70%を占めるタンパク質繊維であることからみても、肌のハリに欠かせない成分であることがお分かりいただけると思います。
また、「エラスチン」は「真皮層」のわずか2%ほどを占めるタンパク質ですが、「コラーゲン繊維」を束ね肌の弾力を維持するために重要な成分です。
そして、その間を埋めるように「ヒアルロン」酸が水分を含んだスポンジとして存在しています。
この3つの美肌成分である「コラーゲン」「エラスチン」「ヒアルロン酸」を作り出す細胞こそが「線維芽細胞」であるわけですね。
しかしながら、本文内でもお話をしたように「線維芽細胞」自体も老化細胞になっていくわけですので・・・とても厄介な(やっかいな)感じもしますよね。
この・・・厄介な「線維芽細胞」に対して、高濃度ビタミンC点滴、幹細胞培養上清液、エクソソーム、NMNが、どのようにサポートしていけるのか?・・・を見てみると、以下のようになります、
<高濃度ビタミンC点滴>
高濃度ビタミンC点滴は、皮膚の「線維芽細胞」に以下のような影響を与えると考えられています。
1)コラーゲン生成促進
ビタミンCは、線維芽細胞の働きを高め、コラーゲン生成を促進する作用があります。コラーゲンは、皮膚のハリや弾力を保つ重要な成分です。そのため、高濃度ビタミンC点滴を行うことで、以下のような効果が期待できると考えられています。
- 肌のハリや弾力アップ
- シワやたるみの改善
2)抗酸化作用
ビタミンCは、活性酸素を除去する抗酸化作用があります。活性酸素は、皮膚の老化の原因となる物質です。高濃度ビタミンC点滴を行うことで、活性酸素によるダメージから皮膚を守り、以下のような効果が期待できます。
- くすみの改善
- 肌の透明感アップ
3)美白効果
ビタミンCは、メラニン生成を抑制する美白効果があります。メラニンは、シミやそばかすの原因となる色素ですが、高濃度ビタミンC点滴を行うことで、メラニン生成を抑制します。
<幹細胞培養上清液>
幹細胞上清液は、皮膚の線維芽細胞に以下のような影響を与えます。
1)増殖促進
幹細胞上清液には、EGFやFGFなど、「線維芽細胞」の増殖を促進する成長因子が含まれています。これらの成長因子は「線維芽細胞」の分裂を促進し、新しい細胞の生成を促します。
2)コラーゲン生成促進
幹細胞上清液には、コラーゲンの生成を促進するTGF-βやIGF-1などの成長因子も含まれています。これらの成長因子は「線維芽細胞」のコラーゲン合成能力を高め、皮膚のハリや弾力を向上させます。
3)エラスチン生成促進
幹細胞上清液には、エラスチンの生成を促進する成長因子も含まれています。エラスチンは、皮膚の弾力性を維持する重要な成分です。
4)抗炎症作用
幹細胞上清液には、炎症を抑えるサイトカインも含まれています。これらのサイトカインは、ニキビやアトピー性皮膚炎などの炎症を抑え、皮膚を健康に保ちます。
5. 抗酸化作用
幹細胞上清液には、活性酸素種を除去する抗酸化物質も含まれています。活性酸素種は、皮膚の老化の原因となる物質です。
これらの作用により、幹細胞上清液は、シワやたるみ、くすみなどの老化現象を改善し、皮膚のハリや弾力を向上させる効果があります。また、ニキビやアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の改善にも効果があると考えられています。
<エクソソーム点滴療法>
エクソソームは、線維芽細胞に様々な影響を与えます。主な影響は以下の通りです。
1)線維芽細胞の活性化
エクソソームには、細胞増殖因子やサイトカインなど、「線維芽細胞」の活動を促進する様々な物質が含まれています。これらの物質が「線維芽細胞」に働きかけることで、以下のような効果が期待できると考えられています。
- コラーゲンやエラスチンの生成促進:肌の弾力やハリの向上
- ヒアルロン酸の生成促進:肌の潤い、保湿力の向上
- ターンオーバーの促進:古い角質の排出促進、くすみの改善
2)抗酸化作用
エクソソームには、活性酸素を除去する抗酸化物質が含まれています。活性酸素は、皮膚の老化の原因となる物質です。エクソソーム点滴を行うことで、活性酸素によるダメージから皮膚を守り、以下のような効果が期待できます。
- くすみの改善
- 肌の透明感アップ
3)細胞増殖促進
エクソソームには、細胞増殖を促進するEGFなどが含まれています。EGFが線維芽細胞に作用することで、細胞増殖が促進され、以下のような効果が期待できます。
- 傷の治癒促進
- 肌のターンオーバー促進
<N M N(NAD+)>
N M Nは、NAD+の前駆体ということになりますが、NAD+の投与は、「線維芽細胞」に与える影響については、次のようなことが考えられています。
1)エネルギー代謝の促進
NAD+は、細胞内のエネルギー生産に関わる補酵素です。NAD+の投与は、線維芽細胞のエネルギー代謝を促進し、細胞の活性を高めます。
2)DNA修復
NAD+は、DNA修復に関わる酵素の補酵素です。NAD+の投与は、線維芽細胞のDNA修復能力を高め、細胞の老化を抑制します。
3)抗酸化作用
NAD+は、活性酸素種を除去する抗酸化作用があります。活性酸素種は、皮膚の老化の原因となる物質です。
4)テロメアの維持
NAD+は、テロメアの維持に関わる酵素の補酵素です。テロメアは、染色体の末端にあるDNAの繰り返し配列であり、細胞分裂のたびに短くなります。NAD+の投与は、テロメアの短縮を抑制し、細胞の老化を抑制します。
これらの作用により、NAD+の投与は、シワやたるみ、くすみなどの老化現象を改善し、皮膚のハリや弾力を向上させる効果があると考えられています。
これらのことを見ていますと・・・なかなか、おもしろい未来が待っているのではないかと思ったりもしますね
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました
参考)
1.Phamacol Res. 2021 Apr:166:105490.
The novel mechanisms and applications of exosomes in dermatology and cutaneous medical aesthetics
Mingchen Xiongら
2.Pharmaseuticals(Basal). 2020 Sep 15;13(9):247.
Clinical Evidence for Targeting NAD Therapeutically
Diana Radenkovicら
3.Bioengineering(Basel). 2018 Dec 30;6(1):4.
Stem Cell Extracellular Vesicles in Skin Repair
Andrea da Fonseca Ferreiraら
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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⇧<内科医ひとちゃんが選んだJazz>
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
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