こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

1月も最後の休日の午後となっていますね。

暦をみますと・・・もちろん、二十四節気は「大寒(だいかん)」

であり、七十二候は「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」となっています。

 

まさに厳しい寒さで、沢の水さえも凍る頃となり、 大気の冷えがまさに底ということでしょうか?

 

私は次のような言葉を思い出しました。

 

If we had no winter, the spring would not be so pleasant. If we did not sometimes taste of adversity, prosperity would not be so welcome.

 

冬がなければ、春はそれほど快適ではないだろう。時には逆境がなければ、繁栄はそれほど歓迎されないだろう。

 

 

米国の詩人、アン・ブラッドストリートの名言ですね。


皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

 

今回は「時計遺伝子(とけいいでんし)」のお話をしてみたいと思います。

 

まず、「時計遺伝子(Clock gene)」というものが、どのようなものであるのか?・・・ということをご説明してみたいと思います。

 

「時計遺伝子」は、生物の内部時計である「サーカディアンリズム(概日リズム)」を制御する遺伝子のことを指します。

 

「サーカディアンリズム」とは、約24時間周期の生物学的リズムのことでしたね。

 

これらの遺伝子とそれらがコードするタンパク質は、細胞内でのフィードバックループを形成し、生物の睡眠・覚醒サイクル、ホルモン分泌、体温調節、食欲など多くの生理的プロセスを調節しています。

 

「時計遺伝子」は、ひとつだけでなく・・・

 

"CLOCK"、"BMAL1"、"PER"(Period)、"CRY"(Cryptochrome)などと複数の遺伝子がありまして、これらが相互作用しながら体内時計の精度を保ち、外部の光・暗闇のサイクルに同調させます。

 

 

例えば、光が目に入ると、それが脳の視床下部にある視交叉上核(SCN)に伝わり、時計遺伝子の活動を調節して体内時計をリセットします。

 

image

        (図はお借りしました)

 

こうした「時計遺伝子」の働きにより、生物は外部環境の変化に適応し、生理的なプロセスを最適なタイミングで行うことができるようになると考えられているのですね。

 

そして、「時計遺伝子」の異常は、睡眠と覚醒のサイクル、ホルモン分泌、体温調節、食欲など、多くの生理的プロセスに異常を与え、

さまざまな健康問題を引き起こす可能性が多くの研究で示されているのですね。

 

朝、決まった時間に起きて、太陽の光を浴びることが重要・・・と私が強調するのは・・・上の図にも示しているように

光が目に入ると、それが脳の視床下部にある「視交叉上核(SCN)」に伝わり、時計遺伝子の活動を調節して「サーカディアンリズム」がリセットされることが知られているからなのですね。

 

これらの話は、以前の内容に重複するものかもしれませんね。

 

今回の話題は・・・「では、運動は関係ないのか?」・・・ということになります。

 

マウスの実験となりますが、次のようなことが報告されました。

 

北海道大学大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授の研究グループの論文です。

 

 

この研究では、主要な「時計遺伝子」のひとつをモニター可能な状態にしたマウスを用いて、

 

(1)通常の昼夜変化のある状態

 

(2)昼夜変化のない常に暗い環境にいる状態

 

  (3)昼夜変化のない常に暗い環境にいる状態にいるが。24時間周期の「運動スケジュール」を与える

 

上記の3つの条件で「時計遺伝子」発現リズムの時間関係を比較したそうです。

 

その結果、(3)の常に暗い環境にいても、「運動スケジュール」に行動リズムが同調した際の「視交叉上核」と末梢組織における「時計遺伝子」発現リズムの時間関係は、

 

(1)の昼夜変化のある状態と同様であることが、世界で初めて明らかにされたというのですね。

 

このことは、光を十分に得られない特殊な環境下であったとしても、

「サーカディアン リズム」の調節や乱れが関与する疾患の予防に

「習慣的な運動」が効果を持つことの科学的根拠となりますね。

 

春になったら・・・朝、早く起きて、朝陽を浴びながら、15分程度の散歩をしてみる・・・というのも、あなたの体調をよくするかもしれませんね。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

 

参考)

1. American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology. 2023 Apr 1;324(4)

Nonphotic entrainment of central and peripheral circadian clocks in mice by scheduled voluntary exercise under constant darkness

 Yujiro Yamanakaら

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<ブログ後記>1月30日

 

明日からは、2月となりますね。

日中は、陽の光も随分(ずいぶん)と明るくなったなあ〜などと思っていたのですが、やはり、夜は冷え込みますね。

今回は、「時計遺伝子」の作り出す「サーカディアンリズム」についてのお話をさせていただきました。

地球上の生物は、地球の自転によってもたらされる約24時間の明暗周期にその活動を同調させていると考えられています。これが、「サーカディアンリズム」というものになります。

ヒトばかりでなく、動物や植物など地球上の生きとし生けるものが、この「サーカディアンリズム」の影響を受け、活動していると考えられているというのですから・・・

考えようによっては、かなり壮大(そうだい)な話にも思えたりもします。


ヒトの場合、「サーカディアンリズム」は、睡眠と覚醒のサイクル、ホルモン分泌、体温調節、食欲など、多くの生理的プロセスに影響を与えることが知られておりまして、この乱れは、さまざまな体調の不良を起こす可能性があると考えられています。

なぜ、そんなにも「サーカディアンリズム」にこだわるのか?・・・とよく聞かれます。

 

それは、そうかもしれませんね。AIに関する研究の進歩を示すニュースが日々、伝えられる中で、この地球の自転にヒトのリズムを同調させる・・・などという話は、まったく科学的でないと感じる方も多いと思いますね。

実は以前にもブログ内でもお話をしたことがあるのですが、私自身が

日常の診療の中で力を入れていることのひとつに「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」があるのですね。

 

「線維筋痛症」は、原因不明の疾患です。

身体の一部に強い痛みが出て、日常生活に支障をきたすことが多いとされるのですが・・・検査データでは、異常がまったくないという疾患です。

 

ある時からですが・・・私は、ひょっとして「サーカディアンリズム」の不調が「線維筋痛症」の原因のひとつなのではないか・・・と考えるようになりました。

 

きっかけは、2016年であったでしょうか、レディー・ガガさんが「線維筋痛症」の自らの疾患をあかした頃でしょうか?

 

彼女の治療内容は不明なのですが・・・のちに彼女は、「慢性痛で気の滅入る一日だけど、すごく優秀で知識がある女医たちに恵まれてとても幸せだと思っている」と述べています。

 

もちろん、その後は体調もよくなり、昨年、6枚目のスタジオ・アルバム『クロマティカ』を引っさげてワールドツアーを行ったというニュースもありましたよね。

 

噂(うわさ)にすぎないのですが・・・レディー・ガガさんの闘病中の生活が朝日が昇ると同時に起床し、夕陽が沈むとともにベッドに入る規則正しい生活をした・・・と聞いたことがあります。

 

その時に・・・「サーカディアンリズム」という言葉が浮かんだ(?)というわけですね。

 

なので・・・それから、私は「神経細胞」と「サーカディアンリズム」の関係に注目しているというわけです。

では、「神経細胞」は「サーカディアンリズム」の影響を受けるのでしょうか?
 

答えは・・・「Yes」となります。

例えば・・・

1.睡眠障害
サーカディアンリズムが乱れると、睡眠の質とパターンが悪化することがあります。これにより、不眠症や過眠症などの睡眠障害が引き起こされ、神経系の機能が低下する可能性があります。

2. 認知機能の低下
睡眠不足や睡眠の質の低下は、記憶力、注意力、判断力などの認知機能に悪影響を与えます。

3. 気分障害
サーカディアンリズムの乱れは、うつ病や双極性障害などの気分障害のリスクを高めることが示されています。体内時計の乱れは、神経伝達物質のバランスを崩し、気分や感情の調節に影響を与えることがあります。

本文内でもご紹介したように「サーカディアンリズム」は、脳内に視交叉上核(SCN)という部位によって主に制御されており、

この部位は、光の情報を受け取り、体内時計を外部環境に同調させる役割を果たしています。

したがって、「サーカディアンリズム」の乱れは、このような神経細胞の機能障害につながる可能性があるというわけです。

では、「サーカディアンリズム」が通常の「末梢神経」に影響を及ぼす可能性はあるのでしょうか?


次のような現象が起こりうる可能性も指摘されています。

「サーカディアンリズム」の障害は、末梢神経の局所で「サイトカイン」の産生を引き起こし、疼痛の発生に関与する可能性があります。
 

1. サイトカインの産生
「サーカディアンリズム」の乱れは、炎症反応を促進するサイトカイン(例えば、インターロイキン-6や腫瘍壊死因子アルファなど)の過剰産生につながることがあり、これが末梢組織の局所的な炎症反応や疼痛感受性の増加につながることがあります。

2. 疼痛感受性の変化
「サーカディアンリズム」の乱れは、疼痛閾値にも影響を与える可能性があります。
この理由は、炎症反応に関与するサイトカインの増加は、末梢神経の感受性を高め、疼痛信号の伝達を強化することがあります。
 

これにより、慢性疼痛の発症や既存の疼痛状態の悪化が引き起こされることがあります。

3. 慢性疼痛との関連
「サーカディアンリズム」の乱れは、特に慢性疼痛状態と関連があります。

慢性疼痛患者では、「疼痛」と「サーカディアンリズム」の乱れの相互作用が観察され、これが疼痛の持続や増強に寄与している可能性が示唆されています。

 

などと不十分では、あるのですが・・・

「線維筋痛症」の乱れが「線維筋痛症」の痛みの悪化に関連があったとしても、不思議ではない・・・なんて、考えています。

 

なので・・・JTKクリニックの「線維筋痛症」の治療は、少し変わっていて、可能な限り朝は早く起きて、なるべく、「朝の散歩」を15分程度心がけていただく・・・としているのですが・・・

効果が出る方もチラホラといらっしゃるのは・・・とても嬉しいことです。

 

もちろん、「線維筋痛症」ばかりでなく、免疫細胞の活性化に「サーカディアンリズム」が関与しているという報告もありますので、

「朝の散歩」が、ひょっとすると・・・重要である可能性もありますよね。

 

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)にも「時計遺伝子」を活性化させる効果もあるわけですが・・・この点は「朝の散歩」にかなわなかったりして・・・なんて思っています。

運動も兼ねて(かねて)いるから・・・となりますね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)
2. JNeurosci Res. 2018 Jun;96(6):1002-1020. 
Circadian control of pain and neuroinflammation
Julia P Segal ら
 

 

         (以前のphoto: 筆者撮影)

 

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

  <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

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