こんにちは、内科医 ひとちゃんです
12月も残り少なくなってきましたね。
暦の七十二候(しちじゅうにこう)を見ますと・・・
「鱖魚群 (さけのうおむらがる)」となっています
今回は「長寿(ちょうじゅ)」を可能とする「遺伝子」の話をしてみたいと思います。
もちろん、「長寿遺伝子」と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」もあるわけですが・・・「長寿」を可能とする「遺伝子」は、他にも存在します。
では、どのような遺伝子が「長寿」と関連があるとされるのでしょうか?
主な遺伝子には以下のようなものがあります
1)FOXO3遺伝子
この遺伝子は、細胞の成長、増殖、生存に関与しています。特に、ストレス耐性や代謝プロセスに重要な役割を果たし、長寿と関連があるとされています。
2)SIRT1遺伝子
サーチュイン遺伝子の一つで、細胞の老化と寿命に影響を与えることが知られています。カロリー制限と関連した寿命の延長に関与しているとされています。
3)APOE遺伝子
特にAPOE ε4アレルはアルツハイマー病のリスクと関連していますが、他のAPOEのバリアントは健康寿命に影響を与える可能性があります。
4)IGF-1遺伝子
インスリン様成長因子1は成長と発達に関与しており、寿命にも影響を与える可能性があります。
5)mTOR(エムトア)遺伝子
mTOR経路は細胞の成長と代謝に関与しており、老化プロセスと密接に関連しています。
これらの遺伝子は、長寿に影響を与える可能性があると考えられています。
今回は、5)の「mTOR遺伝子」に焦点(しょうてん)を当ててみたいと思います。
この「mTOR(エムトア)遺伝子」から作られる「mTOR(エムトア)」は、細胞外の栄養状態や細胞内エネルギー(ATP量)等の情報が感知して、細胞成長・増殖へ結びつける上で中心的な役割を担う「リン酸化酵素」です。
哺乳類で「mTOR 」は、2種類あるのですが・・・
「mTOR(エムトア)経路」は、癌や代謝性疾患、老化にも重要な役割を果たしていると考えられています。
簡単に言いますと・・・栄養が豊富な状態では細胞は大きく成長し、分裂を繰り返して増殖する。
反対に細胞外の栄養が枯渇すると細胞は成長・増殖を止まります。
この制御に中心的な役割を果たしているのが「mTOR(エムトア)」ということになりますね。
話は少しズレますが・・・実は「動脈硬化」に「mTOR(エムトア)」に関連するのではないか・・・と考えられているのですね。
「動脈硬化」は、以前のブログ内でもご紹介をしたように・・・
血管壁の変性、脂質の蓄積、炎症反応、細胞増殖などの複雑なプロセスによって進行するものでした。
「mTOR(エムトア)経路」は、これらのプロセスに影響を与えることができ、特に血管内皮細胞や平滑筋細胞の機能に影響を及ぼすことが知られています。
例えば、食事のカロリーを多く摂取すれば、体重が増加して肥満となるのは想像がつくのですが・・・
それに加えて「mTOR(エムトア)経路」の過剰活性化が起こり、血管壁の細胞増殖や炎症反応を促進し、「動脈硬化」のリスクを高める可能性があるというわけですね。
では、食事の摂取カロリーを減らすとすると、どのような変化が起きるのでしょうか?
食事摂取カロリーの低下は、「mTOR (エムトア)遺伝子」の活性を低下させることが知られています。
このため、「mTOR(エムトア)経路」の活性は、抑制されることになります。
「mTOR(エムトア)経路」を抑制することは、「動脈硬化」を改善するとまでは、いかないとしても・・・
血管壁の細胞増殖や炎症反応を改善させて、「動脈硬化」の進行を抑制する硬化は、期待できそうですよね。
また、食事の摂取を多くすることで生じる「栄養過剰状態」では,「mTOR(エムトア)経路」の活性化ばかりでなく、
「サーチュイン1(SIRT1)」の低下が起きるとされています。
「サーチュイン1(SIRT1)」は、「N M N(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」の摂取により、体内で誘導されるとされる7つの「サーチュイン遺伝子の1つでしたね。
異常の生じたDNAの修復などをつかさどる重要な遺伝子なわけですが・・・
腹いっぱい食べて・・・「N M N」を摂取して・・・これで健康な身体(からだ)が手に入るだろう・・・と考えている方がいるとすれば・・・それは、難しいかもしれませんね。
なぜなら、「mTOR(エムトア)経路」は活性化し、 「サーチュイン1(SIRT1)」の低下してしまうからですね。
腹いっぱい食べて、いつまでも健康で長寿を実現するのは可能なのか?・・・の答えは、「ムリ」ということになりそうですね
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記>12月19日
あまり嬉しいことではないのですが、冬本来の寒さを感じるようになりましたね。
今回は、ヒトの長寿を実現させるための遺伝子で代表的な遺伝子のお話をさせて頂きました。
もちろん、「N M N(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド」に由来するサーチュイン遺伝子の一部も含まれています。
とくに7つあるサーチュイン遺伝子の一つである「サーチュイン遺伝子1(Sir1遺伝子)」は、異常が生じたDNAを修復するという働きがありますので、とても重要であると言えますね。
それ以外にも重要な遺伝子が存在するということになります。
本文内でご紹介した「mTOR(エムトア)遺伝子」を中心として構成される「mTOR経路」は細胞の成長と代謝に関与しており、
老化プロセスと密接に関連していると考えられているのですね。
本文内でご紹介した「動脈硬化」のリスクが、「mTOR経路」の活性化で高まる・・・というのは、どのような
メカニズムが働いているのでしょうか?
「mTOR経路」の活性化が動脈硬化に関与するメカニズムとしては、次のような機序が指摘されています。
「mTOR経路」の活性化により、細胞内のリボソームというものが活性化され、タンパク質の合成が増加します。
これにより、血管では・・・血管壁の平滑筋細胞や炎症細胞の増殖が促進され、動脈硬化の進行に寄与する可能性があります。
さらに「mTOR経路」の活性化は、脂質代謝の異常にも関与していることが知られています。
「mTOR経路」は、脂質合成と脂肪酸酸化を制御することで、細胞内の脂質代謝を調節するとされています。
「mTOR経路」の異常な活性化が起こりますと・・・、脂質合成が亢進し、血管内皮細胞や平滑筋細胞内での脂質蓄積が増加すると考えられています。
これにより、血管内膜の損傷や炎症反応が引き起こされて、動脈硬化の進行が促進される可能性があります。
また、「mTOR経路」の活性化は、炎症反応の調節にも関与しています。
「mTOR経路」は、炎症シグナル伝達経路と相互作用し、炎症反応の発生と進行を制御することが知られています。
「mTOR経路」が活性化すると、炎症性サイトカインの産生が増加し、血管内皮細胞の損傷や炎症反応が引き起こされます。これにより、動脈硬化の進行が促進される可能性があります。
さらに続きがあって・・・mTOR経路の活性化は、酸化ストレスの調節にも関与しています。「mTOR経路」の異常な活性化により、
酸化ストレスが増加し、血管内皮細胞の損傷や炎症反応が引き起こされます。
以上のような機序により、食事を腹いっぱい食べて、その時は幸福感を感じたとしても・・・「mTOR(エムトア)遺伝子」を中心として構成される「mTOR経路」は、急激に活性化されて、血管内膜などの損傷や炎症反応、そして、活性酸素などによる酸化ストレスが引き起こされて、動脈硬化の進行が促進される・・・ということになりますね。
その反対に食事摂取カロリーの低下は、「mTOR (エムトア)遺伝子」の活性を低下させることが知られています。
それに伴い、もちろん「mTOR(エムトア)経路」の活性は、抑制され、動脈硬化の進行は抑制されることになりますね。
幸福感を感じるぐらい多くの食事をとって、日々を過ごすか?
あるいは、満足とは行かないかもしれませんが、食事を腹7〜8分ぐらいのバランスの良い食事をして、日々を過ごすか?
あなたは、これから、どちらの食生活を選びますか?
今回も最後までお読みいただきまして
誠にありがとうございました
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
<JTKクリニック・アンチエイジング治療>
Instagram: jazz_1700
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