こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

12月最初の休日となっていますね。

街は、クリスマスのイルミネーションで彩られ(いろどられ)、華やかな(はなやかな)雰囲気になっていますね。

 

アメリカの作家、トーマス・ウェントワース・ヒギンソンは、次のような名言を残しています。

 

How many lessons of faith and beauty we should lose, if there were no winter in our year!

意味は・・・もし、1年のなかに冬がなかったら、どれだけの信仰と

美の教訓を失うだろうか・・・となりますね。
 
街のイルミネーションを見て、美しさの教訓を感じるばかりでなく、夜に月や星を見上げれば、これまでのどの季節よりも美しいと思ってしまいますよね。

 
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
 

 

現在、中国国内において、肺炎などの呼吸器疾患にかかる子供たちが増加している・・・というニュースがあります。

 

米国でも同様に子供の呼吸器感染が拡大しておりまして・・・原因は、どのようなウイルスなのか?・・・と注意深く、ニュースを見ておりました。

 

中国の衛生当局は、これまでに「インフルエンザ」を中心に、「マイコプラズマ肺炎」や「アデノウイルス」など、複数の病原体の流行が重なって起きているとの認識を示していています。

 

米国では、米疾病対策センター(CDC)のコーエン所長は11月30日の米議会小委員会で、「インフルエンザ」と「新型コロナウイルス」、「RSウイルス」による呼吸器疾患が全米で流行していると証言しています。

 

どちらの国も「インフルエンザ(ウイルス)」の感染が拡大していると言えそうです。

 

冬の時期は「風邪(かぜ)」をひくことが多いわけですが・・この「風邪(かぜ)」鼻、口、のど(咽頭・喉頭)などの粘膜にウイルスが感染しておこる感染症です。ひとくちに「かぜ」といっても原因となるウイルスは200種類以上もあるといわれています。

 

上に示した「RSウイルス」や「アデノウイルス」も「風邪(かぜ)を

起こすウイルスとなります。

 

つまり、中国国内でも、米国国内でも「インフルエンザ(ウイルス)」の感染拡大の状況は同じであり、ここに「かぜ症候群」が混在している・・・ということになりますね。

 

では、「マイコプラズマ肺炎」とは、どのような感染症なのか?・・・と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

前置きが長くなりましたが、今回は「マイコプラズマ肺炎」についてのお話をしてみたいと思います。

 

「マイコプラズマ肺炎」は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌によって引き起こされる感染症です。

 

いくつかの特徴を持っています。

 

他の細菌と異なり、「細胞壁(さいぼうへき)を持たないので、多形態性を示しており、通常の細菌感染によく使われる抗生剤(ペニシリン系、セフェム系)などの抗生剤が効かないという特徴があります。

 

ペニシリン系、セフェム系の抗生剤は、細菌の細胞壁の合成を阻害する抗生剤なわけですが・・・「マイコプラズマ・ニューモニエ」の細菌は、細胞壁を持ちませんので、効果がない・・・というわけですね。

 

「マイコプラズマ肺炎」は、主に小学生から若い成人にかけての年齢層で発生しやすいとされていますが、どの年齢層でも感染する可能性があります。感染経路は飛沫感染であり、咳やくしゃみによって排出される飛沫を他の人が吸い込むことで感染します。

 

症状は、通常、発熱、咳(せき)、喉(のど)の痛み、頭痛、倦怠感などの呼吸器症状が中心ですが、重症化することは比較的少ない印象があります。

 

しかし、まれに中耳炎、貧血、皮膚の発疹、神経系の合併症など、肺以外の器官に影響を及ぼすこともありますので、注意が必要です。

 

個人的な感想では・・・咳(せき)がひどい・・・という印象があります。それで、胸部レントゲン写真を撮影してみると・・・

患者さまの自覚症状からは、想像しにくい「肺炎」の所見が認められる・・・といった印象です。

 

実際に・・・「マイコプラズマ肺炎」は、自覚症状としての症状は、比較的軽症であり、病床につかずに歩いていられることが多いので、

医療機関で検査をすると・・・医療者を慌て(あわて)させることが多いかもしれません。

 

比較的軽症であるとといっても・・・もちろん、個人差があります。

 

とくに・・・小児や高齢者では症状が重くなることもあります。

 

通常のペニシリン系・セフェム系の抗生剤は、無効であるというお話をしましたが、抗生剤などの薬剤がないというわけではありません。

 

「マイコプラズマ肺炎」に効果的な抗生物質は、次のようなものになります。

 

1)マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)

 

2)ニューキノロン系抗生物質(レボフロキサシンなど)

 

これらの抗生剤は、細菌のリボソームに結合し、タンパク質の合成を妨げることでマイコプラズマの増殖を抑制する効果があるのですね。

 

潜伏期間は、約2~3週間と長く、現時点では特定の「ワクチン」は存在しませんので、手洗いやうがい、咳エチケットの徹底、人混みを避けるなどの一般的な感染予防策が推奨されています。

 

世界各国で、新型コロナのための自粛(じしゅく)はなくなり、都内でも多くの外国人観光客を見かけます。

 

このような中で、新型コロナウイルスやマイコプラズマなどの細菌も同様に日本国内に流入してくる可能性もある・・・と考えておいた方がよいのかもしれませんね。

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

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<ブログ後記>12月5日

 

今回は、「マイコプラズマ肺炎」についてのお話をさせていただきました。

 

「マイコプラズマ肺炎」は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌によって引き起こされる肺炎となります。

この細菌には「細胞壁」がないのが特徴である・・というお話は、本文内でもさせていただいたわけですが・・・

 

こうした場合、さまざまな感染症に投与されることの多い「ペニシリン系抗生剤」・「セフェム系抗生剤」などは、有効ではないということになりますね。

 

その理由は、「ペニシリン系抗生剤」・「セフェム系抗生剤」は、いずれも細菌の細胞壁合成に必要な酵素に結合して、それらを
不活化することにより、細菌の増殖を抑制する薬剤になるわけですので・・・当然のことと言えますね。



では、「マイコプラズマ肺炎」にかかりますと、どのような症状が出るかというと・・・どのような臨床症状が認められるのでしょうか?

 

多くの場合、次のような経過となると考えられています。

初期症状は、風邪症候群様の症状を呈し、その後、発熱、疲労感、頭痛、のどの痛み、消化器症状、咳などが出現します。
 

もちろん、この症状は、個人差があるとされます。


咳(せき)は、発症初期には「乾いた咳(かわいたせき)」である場合が多いのですが、時間の経過とともに咳は強くなり、解熱後も1ヶ月程度続くことが多いと考えられています。


若年者では、後期になりますと、「湿性の咳」となることもあるとされています。

 

ちょっとだけ、解説を加えますと・・・

「乾いた咳」というのは、痰のからまないような「コンコン」といった感じの咳ということになります。


咳が持続するのが特徴であり、しばしば頑固(がんこ)で、数週間にわたることもあります。
 

喉の痛みや頭痛があることもあるのですが、「呼吸困難」などの重症の症状は一般に少ないとされます。

「呼吸困難」などが生じることは少ないということは・・・本文内でもお話をしたのですが・・・

咳がひどく、発熱の訴えで医療機関の外来を受診した患者さんがいたとして・・・

 

「風邪(かぜ)をこじらせてしまいました」と言っていた患者さんの
「胸部レントゲン写真」を撮ってみたところ、しっかりと(?)肺炎像があったりするなど、医療者の方を慌てさせる(あわてさせる)というようなこともあります。
 

このため、「マイコプラズマ肺炎」は、「歩く肺炎」などと変わった異名を持っているわけですね。

 

治療については、本文内でもご紹介したのですが・・・

「マクロライド系抗生剤」には、耐性菌も出現していることが問題になっています。


また、それ以外では「テトラサイクリン系抗生剤(ミノマイシン)」などの抗生剤が有効とされています。

 

じゃあ、あまり問題がないのか・・・という印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

繰り返しになりますが・・・小児や高齢者は、重症化するリスクが高いので、注意が必要です。

さらに・・・実は、続きがありまして・・・「マイコプラズマ感染症」の特徴は、感染したヒトの25%に、肺以外の疾患、つまり、皮膚炎、腎炎、関節炎、また神経症状を呈する髄膜炎や脳炎のような多彩な疾患の原因になり得ることです。

 

経過もさまざまであり、急性期のみの症状から、難病(喘息・リウマチ膠原病疾患・神経疾患、アレルギー性疾患)も含む慢性炎症性疾患までの幅広い病像を呈するため、原因の特定が困難な場合も少なくありません。

 

難治性疾患克服研究事業の臨床調査研究分野対象である130疾患においても、多くの疾患で、「マイコプラズマ感染」との関連が疑われているのですね。

米疾病対策センター(CDC)は、次のようにコメントしています。
 

「中国の保健当局や各自治体と連絡を取り合っている。これまでの報告からは、既に知られている複数の呼吸器疾患の感染が同時期に広まったことが、入院患者の急増につながっていることが示されている。」と述べています。

 

新型コロナによる各国の行動の自粛(じしゅく)はなくなり、

ヒトの移動が盛んになったことにより、複数の呼吸器疾患の感染が同時期に広まったのかもしれませんが・・・

 

この冬は、いつもの冬とは違うかもしれないと考えて、手洗い、うがい、部屋の換気など基本的な感染対策を心がけた方がよいのかもしれませんね。

 

 

今回も最後までお読みいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1.  Journal of Microbiology, Immunology and Infection.Vol. 54(4), Auguust2021, 557-565.
Rational stepwise approach for Mycoplasma pneumoniaepneumonia in children.
Ti-An Tsaiら

 

 

     (表参道イルミネーション:筆者撮影)

 

 

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

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