こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

10月最後の休日となりました。

朝には、雨が降っていたのですが、午後からは青空が広がりました。

 

暦の七十二候に目をやりますと、「霎時施(こさめときどきふる)」となっていることに気がつきました。

 

さあっと雨が降ったかと思えば、すぐにやみ、青空が顔をのぞかせる。そんな様子を「霎時施(こさめときどきふる)」というようです。

 

秋から冬にかけて降るこのような雨を「時雨(しぐれ)」といい、この時期の空模様のひとつなのだそうです。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

最近は、インフルエンザウイルスの感染が拡大しているようですね。
 
今月22日までのインフルエンザの患者数は8万1160人でした。
今週は、前の週からさらに2万6000人あまり増え、9週連続で増加しているようです。今年は、早めのワクチン接種が望ましいのだと思いますね。
 
ということで、今回は「インフルエンザウイルス」についてのお話をしてみたいと思います。
 

「インフルエンザウイルス」は、「オルソミクソウイルス」というグループの、大きさが100nm(1mmの1/10000)の中型ウィルスです。中心にRNA(リボ核酸)という遺伝子を持ち(右図の真中の8本のまだら紐のようなもの)、外側には、NA(ノイラミニダーゼ)HA(ヘマグルチニン)という2種類のとげ(スパイク蛋白))と呼ばれます)が林立しています。その他に、M2という蛋白質(も存在します。

インフルエンザウイルスは、RNAウイルスで、A型、B型、C型の3つの主要なタイプがあります。このウイルスは、人間だけでなく、鳥や豚などの動物にも感染します。

 

特にA型インフルエンザウイルスは、その表面のタンパク質である

「ヘマグルチニン(H)」「ノイラミニダーゼ(N)」の組み合わせにより、さまざまな亜型が存在します。

 

これらのタンパク質はウイルスが宿主細胞に侵入する際に重要な役割を果たします。

 

同一の亜型内でも、ウイルス遺伝子に起こる突然変異の蓄積によって、HAとNAの抗原性は少しずつ変化するのですね。

 

現在、流行しているインフルエンザA型は2種類あるようです。

それは、「A型H1」と「A型H3」です。

 

「H3が流行して途切れることなくH1が増えてきた」と言われています。

国内の今回のワクチンが、どのようなものであったのか?・・・と言いますと・・・次のようなものでした。

 

 2023~2024年シーズンは以下の4株がワクチン製造株として選定されました。

 

A型株

  • A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)

  • A/ダーウィン/9/2021(SAN-010)(H3N2)

B型株

  • B/プーケット/3073/2013(山形系統)

  • B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)

 

なので、「A型H1」と「A型H3」のインフルエンザの重症化は、避けられそうですね。

 

 

では、ワクチンを打っている場合と打っていない場合では、免疫の応答にどのような違いがあると考えられるのでしょうか?

 

 

A.インフルエンザウイルス感染した場合にを接種していないとどのような免疫応答が起こるのか?

 

1)初期の非特異的応答  

      

 インフルエンザウイルスが体内に侵入すると、最初に非特異的な免疫応答が活性化されます。これには、自然免疫細胞(例:マクロファージ、樹状細胞、NK細胞)が関与し、ウイルスの増殖を抑えるために活動します。

 

2)炎症反応

 

ウイルスの侵入を検知すると、免疫細胞は炎症を引き起こすサイトカインケモカインを放出します。これにより、感染部位に更なる免疫細胞が集まり、ウイルスと戦うことができます。

 

3)特異的な免疫応答

 

インフルエンザウイルスの特定の部分(抗原)を認識するT細胞B細胞が活性化されます。活性化されたT細胞は、ウイルスに感染した細胞を攻撃し、B細胞はウイルスに特異的な抗体を産生します。

 

4)抗体の産生

 

B細胞が産生する抗体は、ウイルスの増殖を阻害し、感染を制御する役割を果たします。特に、ヘマグルチニンやノイラミニダーゼといったウイルスの表面タンパク質に対する抗体が重要です。

 

 

ワクチンを接種していない場合、初回の感染時にはこれらの免疫応答が時間をかけて進行します。つまり、回復に時間がかかり、重症化するリスクもあるかもしれませんね。

 

 

しかし、ワクチンを接種することで、ウイルスに対する免疫応答が予め準備され、感染時に迅速な反応が期待できるわけです。

 

B.インフルエンザウイルス感染した場合にを接種していると、どのような免疫応答が起こるのか?

 

1)迅速な抗体応答

 

ワクチン接種により、ウイルスの特定の部分(抗原)に対する抗体が既に体内に存在します。これにより、感染直後からウイルスの増殖を阻害する抗体が迅速に作用します。

 

2)免疫記憶の活性化

 

ワクチン接種により、ウイルスに対する免疫記憶が形成されています。感染が発生すると、これらの記憶細胞(特に記憶T細胞や記憶B細胞)が迅速に活性化され、ウイルスに対する効果的な応答を開始します。

 

3)強化されたT細胞応答

 

ワクチン接種者のT細胞は、ウイルスに感染した細胞を効果的に攻撃し、感染の拡大を防ぐ役割を果たします。

 

4)効果的なB細胞応答

 

記憶B細胞が迅速に活性化され、大量のウイルス特異的抗体を産生します。これにより、ウイルスの増殖と拡散が迅速に抑制されます。

 

 

ワクチンを接種している場合、上記のような迅速かつ効果的な免疫応答の結果、感染しても症状が軽くなるか、無症状であることが多いのですね。

 

さて、あなたは、どちらを選択しますか?

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

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<ブログ後記>10月31日

 

今回は「インフルエンザウイルス」を話題にさせていただきました。

 

報道も多くされているように、今年は「インフルエンザウイルス」が早い時期から流行しています・
現在の流行しているインフルエンザウイルスは、主に「A型 H1」と「A型 H3」の2種類があります。

同じA型でも2種類が混在していることから、同じA型のインフルエンザウイルスでも2回感染する可能性があると言われているわけですね。

もちろん、「インフルエンザウイルス」に対するワクチンを接種していないとしても・・・

 

「インフルエンザウイルス」の感染が判明した時に「タミフル」などの抗インフルエンザ薬などの投与や吸入薬などを用いれば、問題はないだろう・・・と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

ワクチンを接種すると「インフルエンザウイルス」に感染しないということではなく、迅速に( じんそくに)免疫細胞が働くことにより重症化のリスクが低下する・・・というのが、正確な表現ということになりますね。

 

「インフルエンザウイルス」の感染様式は「飛沫(ひまつ)感染」

や「エアロゾル感染」ですので、感染予防のためには「手洗い」,「うがい」,「換気」をこまめに行うことが重要になりますよね。

 

ひとつ、私が気になった論文の内容について、お話をしたいと思います。2022年の論文で、次のような内容が書かれています。

 

 

「A型インフルエンザウイルス」の感染による急性呼吸器疾患の重篤(じゅうとく)な経過は、しばしばその後の「細菌重感染」と関連しており、治癒は困難である・・・と説明されています。

 

ちょっとだけ複雑なメカニズムなのですが、次のようになります。

 

「A型インフルエンザウイルス」感染は、肺組織を損傷し、サイトカイン応答の変化を通じて「細菌」のコロニー形成を促進し、さらに細菌の過剰感染の発症につながる・・・可能性が高くなるというのですね。

 

この原因は、「A型インフルエンザウイルス」を構成するNA、PB1-F2、NS1などのウイルスタンパク質の影響によるもので、こうしたタンパク質が多く産生されてくると・・・「自然免疫」をはじめとする免疫応答がうまく機能しない可能性がある・・・というのですね。

 

こうした現象は、「A型インフルエンザウイルス」感染と同時に細菌感染も増悪させる。

 

こうした状況では、「免疫反応」と「炎症反応」の混乱をきたし、感染宿主(者)の抗ウイルス反応を引き起こすことができない原因となっている・・・というのですね。

 

このような理由から「A型インフルエンザウイルス」の感染に「細菌感染」を合併してくる可能性が大きく、そうした場合には治療が困難になるケースが多い・・・ということを論文は述べているのですね。

 

ウイルス関連の学術誌の中では、トップクラスの学術誌の中にありました論文ですので、少し大袈裟(おおげさ)であると思いながらも

頭のスミには、その内容を置いておく必要があるかなあ〜なんて、思っています。

 

そのように考えますと・・・少なくとも、高齢者、小児、基礎疾患の持つ方は、インフルエンザに対するワクチンを早めに接種しておいた方がよいのだと思いますね。

 

 

今回も最後までお読みいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1.Viruses.2022 May; 14(5): 1064.

The Contribution of Viral Proteins to the Synergy of Influenza and Bacterial Co-Infection

Miriam Mikušová

 

     (レインボーブリッジと東京タワー:筆者撮影)

 

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小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

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