こんにちは、内科医 ひとちゃんです
昨日、関東は「梅雨明け」したというニュースがありました。
いよいよ、「夏本番」ですね。
夏と言いますと・・・次のような言葉が思い浮かびます。
Summer passes and one remembers one’s exuberance.
夏は過ぎ去り、人はその活力を思い出す
ビートルズのジョン・レノンの妻、オノ・ヨーコさんの名言とされていますね。
この「活力」のある夏をあなたは、どのように過ごしますか?
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
さて、とても興味深いニュースがありましたので、ご紹介したいと思います。
7月上旬にシンガポールで開催された国際皮膚科学会議の1つである「世界皮膚科学会(WCD2023)」において最新の皮膚の若返り研究の成果が発表されたそうです。
発表したのは、「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」社のナディーン ペルノデDr.です。
同社のことを調べてみますと・・・高品質のスキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケア製品をお届けする世界有数の製造・販売会社であっるようですね。
では、どのような研究成果が発表されたのでしょうか?
「長寿タンパク質」は、皮膚細胞の形状と強度を高め、皮膚の力学的性質をサポートするという研究結果を発表した・・・というのですね。
「長寿タンパク質」とは、「サーチュイン遺伝子」から作られたタンパクですから、皮膚細胞を活性化させ、より長く健康に保つためには、「サーチュイン遺伝子」が不可欠であることが示されたということになりますね。
「サーチュイン遺伝子」が皮膚細胞の重要な働きをサポートし、皮膚細胞の若々しさに役立つというわけです。
この研究に対して、カリフォルニア大学バークレー校の代謝生物学、栄養科学、毒性学の教授である ダニカ チェン(Danika Chen)博士は、次のようにコメントをしています。
「サーチュイン」の研究は老化に関連する症状の治療、ヒトの健康の改善に役立つ可能性がある。『エスティ ローダー』の研究は、皮膚における特有の「サーチュイン」または、他の組織と共有される「サーチュイン」の活性を特定することにより、サーチュイン生物学を進歩させている。
また、目に見える形で皮膚の老化を遅らせたり若返らせたりするアプローチを開発することで、老化に関する生物学の理解を深めている」と述べているそうです。
ヒトの「サーチュイン遺伝子」は、SIRT1〜7の7つの遺伝子がありましたよね。
何番目の「サーチュイン遺伝子」が、皮膚の老化を遅らせるのか興味があるところです。
もし、1番目の「SIRT1」であるとすると・・・今後の展開が興味深いものになりますね。
その理由は次のようなものになります。
「サーチュイン1(SIRT1)」は、「NAD +」を補酵素として利用し、
細胞の生存能力や老化プロセスに関与しています。
例えば・・・「サーチュイン1(SIRT1)」の活性化によって、損傷DNAを修復することができるという報告もあります。
また、「サーチュイン1(SIRT1)」は・・・「ミトコンドリア」の機能を改善し、「酸化ストレス」やミトコンドリアDNAの損傷を防ぐことが報告されています。
現在、「サーチュイン1(SIRT1)」については、最も研究されていますし、細胞の健康維持や老化の進行を制御する重要な分子として注目されているからですね。
そして、JTKクリニックにも導入しておりますが・・・
「サーチュイン1(SIRT1)」を測定する検査システムが、既に(すでに)存在している・・・ということも重要です。
「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」社のナディーン ペルノデDr.の研究成果を読みとくと・・・
「サーチュイン遺伝子」から作られたタンパクが少なくなると・・・
皮膚細胞の形状と強度は弱くなり、皮膚の力学的性質をサポートできなくなる・・・とも考えられますからね。
では・・・「サーチュイン遺伝子」を活性化するには、どうしたらよいのでしょうか?
そうですね。言わずと知れた「◯M◯」もそのひとつになりますね。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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< ブログ後記 >7月25日
夏の暑い日が続いていますね。
今回は、「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」社のナディーン ペルノデDr.のサーチュイン遺伝子の活性化から作られる「サーチュイン蛋白」が、皮膚細胞の形状と強度を高め、皮膚の力学的性質をサポートするという研究結果についてお話をさせていただきました。
サーチュイン遺伝子を活性化する働きを持つのは、「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」でしたね。
少しだけ復習しますと・・・以下の表で示すように体内の「NAD+」の量は、加齢とともに減少していくことが知られています。
「NAD+」は、下の図に示すようにミトコンドリアでの「ATP産生」を増加させ、「サーチュイン遺伝子」を活性化し、サーチュイン蛋白を増加させますよね。
体内の「NAD+」の量が減ってきますと・・・どのようなことが生じるのか?・・・
言うまでもないことですが・・・ミトコンドリアでの「ATP産生」は低下し、また、「サーチュイン蛋白」の産生量が低下していくことが予想されますね。
皮膚については、「ATP産生」が低下すると、次のような状態が引き起こされると考えられています。
1)肌のハリやツヤを失う
2)肌の乾燥、乾燥小ジワを生じる
3)皮膚のターンオーバーが遅れる
などの現象が生じるとされています。
すべてを詳細にご紹介するのは、またの機会としますが・・・
例えば、3)のターンオーバーの問題は、次のように説明することが可能です。
「ATP」は、細胞の栄養をとり込んだり老廃物を排出したりするのに使われるエネルギーであると考えられています。
このため、表皮細胞の「ATP」が不足して、これが正常に行えなくなると、ターンオーバーの速度が落ち、古い細胞が表面に蓄積されていくことになるとされています。
問題は「NAD+」の低下を原因とする「サーチュイン蛋白」が皮膚にどのような影響を与えるのか?・・・ということになりますね。
これまでの考え方は、次のようであったかもしれません。
一般的な話としては・・・サーチュイン遺伝子群は、エネルギー代謝、DNA修復、細胞周期、細胞の生存、および寿命に関与していると考えられています。また、彼らは細胞ストレス応答にも関与していて、これらすべては組織の健康と直接関連しているとされています。
皮膚においては、「サーチュイン遺伝子・蛋白」を皮膚のアンチエイジングに関連させると・・・「コラーゲン」や「エラスチン」ではないかという考え方がありました。
「コラーゲン」や「エラスチン」は、皮膚、骨、腱、リガメント、血管などの組織を構成する主要な構成成分で、それぞれが独特な物理的特性を持っているとされています。
「コラーゲン」は、強度と構造を作り出し、「エラスチン」は弾性と柔軟性を作りだすとされています。
これらのタンパク質の生産と分解は細胞の活動によって調節され、「アンチエイジング」に大きく影響すると考えられてきたのですね。
では、ここに「サーチュイン遺伝子」が関与させるとすると・・・
ひょっとして・・「サーチュイン1(SIRT1)」ではないか・・・と考えられていました。
その理由は、「サーチュイン1(SIRT1)」は、多くの生理学的プロセスを調節する重要な分子であり、「酸化ストレス」と「炎症応答」を調節するとされています。
加齢により「サーチュイン1(SIRT1)」活性が低下すると、「酸化ストレス」と「炎症」が増加し、これが結果的に「コラーゲン」と「エラスチン」の分解を促進する可能性があるとも考えられていたのですね。
もちろん、これらは仮説にすぎなかったのですが・・
先に述べたように・・・「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」社のナディーン ペルノデDr.によって、「サーチュイン遺伝子・蛋白」が、皮膚の老化を遅らせるという事実を科学的に証明されたことは、今後の「アンチエイジング」を根本から変える可能性もありますよね。
体内の「NAD+」を増加、或いは、高値に保つ手段は、「NAD+ブースター」と呼ばれ、そのひとつが
「N M N (ニコチンアミド モノクレオチド)」ということになります。
「NAD+ブースター」は、現在世界中で行われている「老化研究」の柱のひとつになっているのですね。
今回も最後までお読みいただきまして
誠にありがとうございました
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
<JTKクリニック・アンチエイジング治療>
Instagram: jazz_1700
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