こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

よく晴れた休日となりましたね

今朝は、雀(すずめ)の鳴く声で目が覚めました

 

日中の紫外線は、とても強くなっているでしょうから、気をつける必要がありますよね

 

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

 

 
今回は・・・「DNAの守護神(しゅごしん)」とも言われる・・・「p53遺伝子」についてのお話をしてみたいと思います

 

 

私が「守護神」という言葉で思い浮かべるのは・・・

 

         (写真はお借りしました)

 

2008年に現役を引退していますが・・・当時世界最高のゴールキーパーと呼ばれていた「オリバー・カーン」氏です

 

ご存知ない方も多くいらっしゃると思いますが・・・野性味のあるプレーと風貌でドイツ代表として活躍した有名選手となります

 

数々の名言も残しています

 

例えば・・・

 

「誤審?そんなの関係ない

     俺が全部止めればよいんだ」  とか 

 

「限界があるのはわかっている

    そんなことは問題ではない

     限界が来るまでどれだけ完全燃焼できるかが重要なんだ」

 

などという言葉がありますね

 

 

さて、今回の話題にする「p53遺伝子」は、まさにヒトのDNA全体を最後まで守り抜こうとする遺伝子なのですね

 

「p53遺伝子」を正確な名称は・・・「TP53」となるのですが、17番染色体の(17p13.1)という位置に存在することが知られています

 

「TP53」というの遺伝子から作られるタンパクが「p53 」ということになりますね(以後は、p53遺伝子としたいと思います)

 

実は、ヒトの癌において最も高頻度に「変異」が認められる遺伝子のひとつであると言われています

 

「変異」とは、DNAを構成する塩基の配列が変化してしまったりすることでしたよね

 

各種の癌疾患で「T「p53遺伝子」の変異が、どの程度生じているのかをみてみますと、以下のようになります

 

1)肺がん: p53遺伝子の変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)において約50-70%、小細胞肺がん(SCLC)においても高頻度で見られます

 

2)大腸がん: p53遺伝子の変異は、大腸がんの一部で頻繁に起こります。変異頻度は様々であり、約30-60%と報告されています

 

3)膵臓がん: 膵臓がんはp53遺伝子の変異が多いがんの1つであり、変異頻度は約50%以上とされています

 


なぜ、このように各種の癌において、「p53遺伝子」の変異を認める割合が多いのでしょうか?

 

その理由は・・・「p53遺伝子」が「癌抑制遺伝子」と呼ばれるものになるからなのですね

 

 

「p53遺伝子」の変異が生じますと・・・「p53タンパク質」は正常に機能せず、癌細胞が異常な成長や転移を始める可能性が高くなります

 

ただし、「p53遺伝子」の変異があるからといって、必ずしも癌を発症するわけではありません

 

えっ、どういうこと?・・・と思いますよね

 

その理由は、「p53タンパク」は、「転写因子(てんしゃいんし)」と呼ばれるものであり、

 

受けたストレスの強さに応じて、様々な遺伝子を発現させるからということになります

 

「転写因子」について、少し解説をしておきますと・・・

 

「転写因子」とは、DNAに特異的に結合するタンパク質の一群で、その働きを簡単に言いますと・・・

 

ある遺伝子がある「プロモーター領域」という部分にくっつくことによって、他の遺伝子を活性化し、mRNAを作り出すのを助けるという機能があるのですね

 

では、「p53遺伝子」から作られた「p53 タンパク」という転写因子は、どのような遺伝子を活性化するのでしょうか?

 

 

上の図に示すように「p53タンパク」は、「p21遺伝子」を活性化させて、「p21タンパク」を作り出します

 

 

 

 

「p21タンパク」の働きは、とても重要です

 

DNAが何らかの異常が生じた場合には、「p53タンパク」が作られ、

そのことが「p21タンパク」を作り出します

 

上の図の円で示される部分は「細胞周期」というものを示しています

 

細胞周期(Cell Cycle)とは、細胞が増えるとき、細胞分裂の過程を示すものでして、細胞は「G1期」→「S期」→「G2期」→「M期」という過程を経て増殖していくのですね

 

話を「p21」に戻しますと・・・「p21」は「細胞周期」に「一旦、

ストップせよ」と指示を出せるわけです

 

細胞周期を止めて過剰な増殖を防いだり、あまりに強いストレスの場合には「アポトーシス」により細胞を死滅させるように指令し、癌化するリスクをもとから断つように働きかけることができるというわけですね

 

「p53 タンパク」については、細胞周期の回転を止めるだけでなく、

他の重要な働きがあることも知られているのですね

 

下の図は「p53遺伝子」がどのような機能を持つのか・・・のかを示したものです

 

 

         (図の一部はお借りしました)】

 

先に紹介した「細胞周期の停止」以外にも、「DNAの修復」,「老化」、そして「異常細胞のアポトーシス」などと多彩な機能を持っていることが知られています

 

では、この重要な「p53遺伝子」に異常があると・・・

どのような不都合が生じてくる可能性があるのでしょうか?

 

少しマニアックな話に思えるかもしれませんが・・・

続きのお話は、後日の話題にしたいと思います

 

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>5月24日

 

今回は「遺伝子」に関連する話題とさせていただきました。

 

「p53遺伝子(TP53遺伝子)」は、「がん抑制遺伝子」として知られておりますので、ご存知の方も多いと思います。

 

転写因子である「p53 タンパク」は、癌を抑制するだけでなく、

さまざまな形のDNA損傷を感知し、その損傷に対する修復応答を調節する重要な役割を果たしていることが知られています。

 

「転写因子」とは、遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称となります。

 

ヒトでは、約2000種類の「転写因子」が存在していると言われています。

 

多くの場合、いくつかの「転写因子」は複合体タンパク質を形成したりもするのですが・・・

ゲノムDNA上の特定の配列を認識し、そこに直接結合することで、近傍の遺伝子のmRNAの発現を開始・停止したり、その量を増加や減少させたりします。

 

「p53タンパク」も転写因子のひとつであり、「p21 mRNA 」→「p21 タンパク」の発現を促す作用があることは、本文内でご紹介したとおりです。

 

このような「p53 」-「p21」の連携した動きは、

「p53 - p21 pathway(経路)」と呼ばれています。

 

「p21タンパク」は、細胞周期の制御因子となっており、その発現が増加すると、細胞周期が一時的に停止します。

 

「p21タンパク」のように・・・細胞周期が回り続けないようにブレーキをかける作用もあるタ ンパク群を「Cdk インヒビター」と呼びます。

 

 

本文内で示したブレーキ部分を見ていただくと・・・「サイクリン;CycD,CycE, CycA,CyCA」と「cdcキナーゼ:Cdk4/6, Cdk2, Cdc1,Cdk1)という2種類 のタンパクの複合体が、存在するのがお分かりになると思います・

 

実は、この2種類のタンパクの複合体は、細胞周期を回転させるモーターの役割を担って(になって)いることが知られています。

 

もし、正常な「p53遺伝子」が障害されて、正常な「p53タンパク」が作られないとすると・・・どうなるのでしょうか?

 

 

上の図を見ていただくと、一目瞭然(いちもくりょうぜん)なのですが、正常な「p53タンパク」が作ることができなければ・・・

 

当然ですが・・・「p 21」遺伝子を活性化できませんので、「p21タンパク」は作られません。

 

「p21タンパク」が作られないとすると・・・細胞周期を回すモーターである「サイクリン」と「cdcキナーゼ」の複合体をストップすることは、できないということになりますね。

 

細胞周期の回転は止まることなく、周り続けることになりますよね。

 

 

癌細胞の場合は、M期に1個の細胞が分裂して2個になり、次のM期には4個になり、2回目のM期には8個というように増えていきます

 

その時に一定の確率で、DNAの複製の際にコピーミスを起こしていく可能性もあります。コピーエラーの蓄積が、癌の性質を変化させていくこともあるかもしれませんよね。

 

 

修復が不可能な場合は・・・「p53タンパク」は、損傷細胞をアポトーシスに導くことで、損傷したDNAが次世代の細胞に伝播するのを防いでいるというわけです。

 

「p21タンパク」が「サイクリン」と「cdcキナーゼ」の複合体に作用して、細胞周期の回転をストップさせる時間は、とても重要です。

 

なぜなら、細胞周期の回転を止めなければ、DNAのコピーミスを修復したり、どうしても修復できない細胞をアポトーシスという形の細胞死を起こさせることができなくなるからですね。

 

このように重要な働きを持つ「p53遺伝子」は、まさにDNAを守り抜く「DNAの守護神」と言えるわけですね。

 

しかしながら、この「p53遺伝子」も「紫外線」や「活性酸素」などのDNAを障害する物質により、いとも簡単に破壊されることもあるわけですので・・・

 

やはり、「紫外線」や「活性酸素」は侮れない(あなどれない)

〜なんて、思ったりします。

 

今回も最後までお読みいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

        (以前のphoto:小笠原伯爵邸:筆者撮影)  

            

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 理事長、院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

新潟大医学部卒

 

       <JTKクリニック・アンチエイジング治療>

 

 

 

 

 

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