こんにちは、内科医 ひとちゃんです
4月になり、暖かな陽気になっていますね
草花が咲き、蝶が舞う季節となりました
新しい生活をスタートさせた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、癌を発症するリスクを判断する「DNA(ディー エヌ エー)検査」について、お話をしてみたいと思います
まず、「DNA」とは、どのようなものなのでしょうか?
細胞の核には、「染色体(せんしょくたい)」というものがありますが、この染色体は「DNA」で構成されています
さらに・・・DNAは、「A(アデニン)」、「T(チミン)」、「G(グアニン)」、「C(シトシン)」という4つの塩基(えんき)から構成されています
DNAには、この4つの塩基で、さまざまな「遺伝情報」が残されているということになります
そして、この「遺伝情報」の一部は、癌などの疾患に対する情報もあるということになります
このため、DNA異常を調べる意義は、主に次のような点にあります
1)病気の診断
遺伝性の疾患やがんなど、DNA異常が原因で発生する病気の診断に役立ちます
2)遺伝カウンセリング
DNA異常がある場合、将来子供が特定の遺伝病を発症するリスクがあることが分かります
3)疾患の予防
遺伝子検査によって、疾患の発症リスクが高いことが分かった場合、予防策を講じることができます
例えば、遺伝的な乳がんや大腸がんのリスクがある場合、早期発見のためのスクリーニングや、リスクを低減する生活習慣の改善を推奨することができます
4)個別化医療
DNA異常を調べることで、個々の患者に最適な治療法を選択できます
例えば、遺伝子変異によって特定の薬が効果的であることが分かれば、その薬を処方することができます
このなかで、現時点で重要と考えられるのは、3)の疾患の予防に「DNA検査」の結果を活かす(いかす)ことかもしれませんね
とくに癌を発症するリスクが高いのか? リスクがあるとすれば、どのような臓器の癌を発症する可能性が高いのかを知ることができます
ところで、DNAの遺伝子検査を若い頃に検査した際に問題がなかったから、もう、やっても仕方がない・・・とおっしゃる方がいますが、これは本当なのでしょうか?
答えは・・・「誤り」ということになります
なぜなら、後天的に生じる「遺伝子異常」が生じることもあることが知られているから・・・ということになりますね
では、どのような原因で、DNAの「遺伝子異常」が生じてくるのでしょうか?
後天的な遺伝子変異は、「たばこ」や「放射線」,「化学物質」,
「紫外線」,「ウイルス」などの環境要因によって引き起こされることがあるとされています
こららの原因で生じた「後天的なDNA異常」が、癌の発症と関連していることがあるとも考えられています
「後天的なDNA異常」が蓄積されることで、癌を発症するリスクが増大する場合があるとされているのですね
では、DNAの遺伝子検査を施行することで、癌の発症を予測することは可能なのでしょうか?
その答えは、現時点では次のような答えになります
DNA異常によってがんの発症を予測することは、一部可能と言えます
例えば、遺伝子変異が特定の遺伝子に起こっている場合や、がんの早期段階で特定の変異が検出された場合、がんの進行や予後を予測することができることがあります
ただし、遺伝子変異と癌の発症の関係は非常に複雑であり、すべての状況で予測が可能とは言い切れないのが現状です
ただし、癌のリスクを評価し、予防策を講じることができ、定期的な癌検診をおこなっていけるので、かなりのメリットがあるように思います
現在、Chat-GPTなどの「AI(人工知能)」の進歩が目覚ましいわけですので、将来的には・・・
あるヒトのDNAの遺伝子情報をもとに・・・何年後に「疾患A」を発症し、その数年後には「疾患B」を発症する可能性があるので、生活習慣を変えることや、あるタイミングから検査を頻回に行うこと・・・などを「AI(人工知能)」が勧めて(すすめて)くるかもしれませんね
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記>4月4日
桜の季節も終わるかと思いながら、街の風景をボンヤリと見ていると、いつの間にか新しいスーツを身に包んだ社会人たちが多いことのに気がつきました。
今回は、生まれつきではなく、後からDNAの異常が生じるというお話をさせていただきました。
DNAは、2重らせん構造を保つために強固(きょうこ)な構造を持つことから、日々の生活をする中でも、DNAの遺伝子異常が出てくるという話には、驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
後天的な遺伝子変異は珍しいことではなく、本文内でもご紹介した通り、環境要因によって引き起こされることがあることがわかっています。しかし、厳密に言いますと・・・ヒトの細胞、特にミトコンドリアがエネルギーを産生する際に作られる活性酸素などは、いとも簡単にDNAに障害を与えるわけです。
ですから、異常の生じたDNAを修復するシステムを持っており、その修復が不可能と判断すれば、すぐに細胞ごと破壊する「アポトーシス」というシステムを備えているわけですが・・・
これらのシステムがうまく機能できないこともあるというわけです・
これまでの、世界中の科学研究の中で、疾患と関連のある遺伝子異常は多く報告されています。
その中で最も注目されているのは、癌であると考えられています。
例えば、癌の発症と後天的なDNA異常は、次のように考えられています。
遺伝子変異が累積(るいせき)し、細胞の増殖やアポトーシスに関与する遺伝子に異常が生じると、がんが発症する可能性が高まるというのですね。
しかしながら、ひとつのDNA遺伝子の変異が、すぐに癌の発症につながるというわけではありません。いくつかの遺伝子の異常が重なった時に癌が発生すると考えられています。
例えば、B遺伝子、D遺伝子、F遺伝子の3つが、ある臓器の癌の発生に関係していると・・・
B遺伝子 ✖️ D遺伝子 ◎、F遺伝子 ◎は、ある臓器の癌は発生する確率は小さいのですが・・・
B遺伝子 ✖️ D遺伝子 ✖️ F遺伝子 ✖️ は、高い確率で癌を生じる・・・ということになりますんr。
✖️ は、遺伝子の「変異」などの遺伝子異常が起きていることを示します
この「変異」とは、A(アデニン), G(グアニン),T(チミン),C(シトシン)というDNAを構成する塩基が変わってしまうことを指します。これが生じると・・・これだけでも正常なタンパク質を作れなくなってしまうこともあるのです。
例えば、ある遺伝子の塩基の配列 -ATGCTTCA-という部分があるとして、この塩基配列が-ATTCTTCA-というように変化したとすると・・・
G(グアニン)がT(チミン)に変化していますので、こうした変化を
遺伝子の「変異」と呼びます。
もちろん、DNAの異常は「変異」ばかりではないのですが・・ね。
癌に関連するDNA異常は、さまざまな遺伝子に起こり得ますが、以下に、いくつかの主要な癌関連遺伝子をご紹介してみたいと思います
1) BRCA1, BRCA2遺伝子
BRCA1やBRCA2遺伝子に異常がある場合、特に女性で乳がんや卵巣がんの発症リスクが高まる可能性が報告されています。
2)TP53遺伝子
この遺伝子は、「がん抑制遺伝子」として知られており、細胞の増殖やアポトーシス(細胞死)を制御しています。
TP53遺伝子に変異がある場合、さまざまながんのリスクが高まることが知られています。
3) KRAS, NRAS, BRAF遺伝子
これらの遺伝子は、細胞増殖のシグナル伝達経路に関与しています。これらの遺伝子に変異が起こると、がん細胞の増殖が亢進されることがあり、大腸がん、甲状腺癌、肺がん、悪性黒色腫(皮膚がん)などの発症や予後に関与していると考えられています。
まだまだ、癌との関連を示す遺伝子は多く存在するのですが・・・全ての遺伝子を列挙することはできませんので、またの機会の話題にしたいと思います。
この中でもTP53遺伝子は、とても興味深い遺伝子となります。
この遺伝子は、先にご紹介をしたように「癌抑制遺伝子」と呼ばれるものです。
癌の種類によるのですが、ヒトのさまざまな癌全体のうち、約50% に「TP53遺伝子」の変異があるとも報告されています。
TP53遺伝子からは、393個アミノ酸からなる「p53タンパク質」が作られることになるのですが、このp「53タンパク質」の機能は、癌を抑制するための多くの機能を持つことで知られています。
TP53遺伝子に「変異」が生じることで、正常な「p53タンパク質」が作られないことから、癌細胞が一旦、発生した場合には、癌の増殖をストップできないという結果になってしまうのですね。
DNA検査を施行することは、将来の癌の発生するリスクが高いのか?
あるいは、あまり心配することがないのか?
癌が発生するリスクが高いとすれば、どの臓器に癌が生じる可能性が高いのか?
を知ることができるわけです。
もし、異常があった場合でもどのぐらいの間隔で、どの臓器に重点をおけばよいか・・・を判断することもできるのではないか・・・と考えたりもできますよね。
JTKクリニックでは、ドイツに本拠地を置くCENTOGENE(セントジン)社の「DNA遺伝子配列検査(シークエンス)」の検査システムを利用することにより、癌に関連する110個の遺伝子異常の有無を確認する検査を行っています。
今回も最後までお読みいただきまして
ありがとうごさいました
(参考)
1,Nat Rev Cancer. 2014 May;14(5):359-70.
Unravelling mechanisms of p53-mediated tumour suppression
Kathryn T Biegingら
2.Cell .2011, Mar 4;144(5):646-74.
Hallmarks of cancer: the next generation
Douglas Hanahanら など
(JTKクリニック近くの紀尾井町の夜桜:筆者撮影)
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
<JTKクリニック・アンチエイジング治療>
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