真夏を思わせる、5月最後の休日となりました
30℃を超える気温となったようです
早くも、水分補給を心がける時期になったようですね
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(筆者撮影)
さて、今回は新型コロナウイルスの話題ではなく、久しぶり(?)に
「幹細胞培養上清液」についてのお話をしてみたいと思います
「幹細胞培養上清液」とは・・・というお話をする前に「幹細胞」とは、どのような細胞であるのか?・・・ということを再確認しておきたいと思います
「幹細胞」の特徴は、次の2つです
①幹細胞自身が、細胞を複製できる
②ヒトのあらゆる臓器に分化することができる
「幹細胞」を培養した培養液から、「幹細胞」を取り出して作られた上澄み(うわずみ)液・・・を「幹細胞培養上清液」と呼ぶのですね
もう少し正確に言いますと・・・
歯髄、骨髄、脂肪など「間葉系幹細胞」と分類される「幹細胞」を培養した液体から、「幹細胞」を取り出し、滅菌などの処理を行った上澄み液ということになりますね
この「幹細胞培養上清液」には、多くの生理活性物質(サイトカイン)が含まれていることが知られています
その中でも特に美容効果が期待されているのが「成長因子」というものなのですね
「成長因子」とは、体内にある特定の細胞の「増殖」や「分化」を促す(うながす)タンパク質の総称でして、「細胞再生因子」とも呼ばれています
治療では、点滴や注射などによって体内に幹細胞培養上清液を注入しますと・・・組織や細胞に働きかけることで、美容効果・健康効果などが期待できるとされています
例えば・・・皮膚のシワやたるみ、肌のハリや弾力を改善する効果が期待できます
また、「幹細胞培養上清液」に含まれる「PDGF(血小板由来成長因子)」や「IGF-1(インスリン様成長因子)」という成長因子は、発毛や育毛効果が期待できるとされていますね
また、血管が損傷した部分の炎症抑制、修復促進や、血管壁細胞の血管が狭くなるのを緩和することによる動脈硬化の改善効果も期待されています
このように「幹細胞培養上清液」に期待できることは多くあり、
ATPを活性化し、DNA遺伝子の異常の修復などの働きがある「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」と並んで、「再生医療」の持つ可能性が大きいことを感じさせるものとなっていますね
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
<ブログ後記>5月31日
今回は、「幹細胞培養上清液」について、お話をさせていただきました。
ヒトの細胞の数は、以前は約60兆個で構成されていると言われていましたが、2013年にイタリアの生物学者エヴァ・ビアンコニらによる「人体の細胞数の推定」の論文によれば、成人の細胞数は37兆2000億個と推定したとされています。
私が学生の頃は、教科書には「ヒトの細胞の数は、約60兆個」と書いてあったような気がします。
そして、多分、「幹細胞培養上清液」という言葉もなかった・・・ような気もします(?).
「37兆2000億個の細胞」は、大きく分けると「幹細胞」、「体細胞」、「生殖細胞」とされています。
「体細胞」とは、皮膚や臓器になっている細胞ということになりますね。
これに対して、「幹細胞」はそれ自身を複製することも可能ですし、さらにそれ自体が、各種の「組織」に変化していくことが知られています。これを「分化」と呼びます。
(図はお借りしました)
見方を変えれば・・・「幹細胞」があるために障害を受けた細胞を
次から次へと、正常な細胞に置き換えていくことが可能となる・・・というわけですね。
つまり、「幹細胞」は、新しい細胞を作り出す能力を持っているということになるのですが・・・残念ながら、加齢とともに衰えていくことになります。
「再生医療」とは、人体の組織が欠損したり、機能不全を生じた場合に、体が自己修復力を上手く引き出して、その機能を回復させる医学分野を示すので、「幹細胞培養上清液」を用いた治療は、もちろん、「再生医療」のひとつと考えてよい・・・と言えますね。
ところで、「老化細胞」については、次のようなことが知られています。
「老化細胞」は、「恒久的に増殖を停止している」ことを特徴としています。恒久的に・・・というのは、永遠にということですね。
そんな「老化細胞」を顕微鏡下で観察すると、若い細胞に比較して 扁平・肥大化していることが知られています。
また、このような形態的な変化だけでなく・・・「老化細胞」は、様々な「炎症性サイトカイン」を分泌していることが知られています。
もちろん、細胞が老化していくわけですので、さまざまな遺伝子(DNA)の異常が集積していることが予想されますので、その状況下では、「老化細胞」に特有の「サイトカイン」などを放出しているであろうことも想像できますよね。
「幹細胞培養上清液」は、「幹細胞」自体を含まないわけですが、その幹細胞の複製や増殖の過程を支える多くの「成長因子(サイトカイン)」が多く含まれています。
本当に「成長因子(サイトカイン)」の作用で、老化した細胞が本当に若返るのか?・・・という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。
ヒントになりそうな、面白い科学論文がありますので、この話題の最後にご紹介したいと思います。
2022年3月2日に「Nature(ネーチャー)」という科学誌に掲載された論文となります。
米国スタンフォード大学(Stanford University)で行われた研究の結果なのですが、その内容がとてもユニークなものになっています。
その内容は・・・若いマウスと老いたマウスの体を縫い合わせて、血液を共有させたのだそうです。
そ
の結果は、若いマウスでは「老化」が加速し、老いたマウスでは「若返り」が、細胞レベル・遺伝子レベルで確認できたそうです。
この遺伝子を解析した結果、細胞や遺伝子活性パターンの「老化」や「若返り」が、血液に含まれる成分に触れることで引き起こされていることを示します。
若いマウスの血に触れると老マウスの細胞では遺伝子活性が変化して、若い頃と同じようなパターンをとりはじめます。
一方で、老マウスの血に触れた若いマウスの細胞では遺伝子活性が変化して、老いた状態に移行してしまったそうです。
(図はお借りしました)
血液には年齢に応じた時間成分が存在し、触れた細胞の時間(若さ)を変えることが可能である・・・と結論が述べられているのですね。
スタンフォード大学 研究者たちは、これら(老化)時間を反映する血液成分を特定・制御することができれば、史上初めてとなる「老化の治療」ができると述べていますが・・・
ひょっとすると・・・彼らのいう(老化)時間を反映する血液成分が、「幹細胞培養上清液」に含まれる「成長因子(サイトカイン)」である可能性は、かなり、大きいのではないかなあ〜なんて、私は思ったりもしますね。
そうだとすれば、スタンフォード大学の研究者たちの研究発表をする前に・・・既に私たちは「幹細胞培養上清液」を通して、その恩恵を受けられる状況にあったりして・・・と私は思います。
あなたは、どう思われますか?
今回も最後までお読みいただきまして
ありがとうございました
参考 ナゾロジー
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小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士
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