こんにちは、内科医 ひとちゃんです
5月の最初の日曜日は、雨の降る休日の午後となりましたね
少し肌寒い、雨模様の日が多いことは残念なのですが・・・
それでも、散歩などしますと
綺麗な花や新緑など、鮮やかな(あざやかな)色にあふれているのに
気がつきます
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(筆者撮影)
さて、今回は「N M N(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」の新しい話題をご紹介したいと思います
健常な高齢男性に1日あたり250mgの「NMN」を12週間
経口摂取すると、「NAD+」などのの血中濃度が上昇しているのが確認され、その状態において
「歩行速度」などの運動機能が改善することや、「聴力」の改善傾向も見られることがわかったという発表がされたそうです
この研究は、東大医学部 附属病院 糖尿病・代謝内科の教授
山内敏正先生らの研究チームによって、英科学誌「Nature」系のエイジング関連分野を扱う学術誌「NPJ Aging」に掲載されたのですね
これまで、「N M N」の話は、動物実験等では・・・
老化や糖尿病、心血管疾患、がん、アルツハイマー病などの加齢に伴う疾患の発症には、「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の組織内濃度の低下が密接に関連しているとされており、「NAD+」の前駆体である「N M N」の摂取により、加齢に伴うNAD+の低下を抑制・回復させ、老化に関連する疾患の予防につながるとされていたのですね
ヒトにおいても、「N M N」の摂取が、老化を抑制することが期待されていたのですが・・・科学的なデータに乏しいとされていたのですね
今回の研究では、65歳以上の健常高齢者男性42人がNMN摂取群(250mg/日)とプラセボ摂取群にランダムに割り付けられ、NMNあるいはプラセボの摂取が最長12週間行われたそうです
「N M N」の経口摂取では、血液検査の結果を含めて明らかな有害事象は認められなかったほか、
プラセボを経口摂取した群と比較して、「NAD+」の血中濃度の上昇が確認されたそうなのですね
(図はお借りしました)
下の図は、以前にもブログ内でご紹介したものですが、加齢とともに
「NAD+」の量は低下していくことが知られていますので・・・
今回の研究結果は、ヒトでも「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の前駆体である「N M N」を摂取することにより、
若い頃と同じ「NAD+」の濃度を得ることができることを示していますよね
「NAD+」が上昇すると次のようなことが期待できるわけですね
運動機能の調査のために、歩行速度、30秒椅子立ち上がりテスト、握力を評価し分析したところ、NMN摂取後に歩行速度および左握力テストの有意な改善が認められたそうです
「N M N」の投与により、実際に「NAD+」の濃度が上昇し、
短期間のうちに一部の運動機能が改善することが、ヒトでも証明されたことは、重要なことだと思います
この事実をもとに、さらに新しい知見が出てくることと思いますね
とても楽しみですね
(図はお借りしました)
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
<ブログ後記>5月3日
昨日 5月2日は「八十八夜」でしたね。
立春から数えるため「八十八夜」は、その年の立春にあわせて変わるそうです。
「八十八夜の別れ霜」という言葉があるそうで、この頃に霜や寒さがあっても、これが最後、季節は春から初夏に移ろっていくのだ・・・と言われているそうです。
確かに今日は、初夏のような陽気にも思える陽気でしたね。
さて、今回は「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」の新しい話題をご紹介させていただきました。
「NMN」についての話題は、ブログ内でもお話をしてきたわけですが・・・本文内でご紹介した論文の要約を読みまして、小躍り(こおどり)しました。
気分は、そのような気持ちだった・・・ということなのですが・・・
ヒトでの「抗老化効果」が示されたからです
「NMN」は、B₃からつくられた食品成分であり、薬剤ではないのですが、その「抗老化効果」が、世界的に注目を集めているのですね
米国ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の教授である
「今井眞一郎先生」らが、人間の体内にある酵素「サーチュイン」が、老化や寿命を制御しているという事実を発見したのが発端であったそうです。
「NMN」は、「NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)」という補酵素に変換されて、「サーチュイン」の働きが活性化される・・・というのは、以前にもブログ内でご紹介したとおりですね。
サーチュインは老化や寿命をコントロールする酵素で、日本ではその遺伝子は長寿遺伝子と呼ばれている。哺乳類にはSIRT1(サーティワン)から7まで7種類あるが、老化を制御する上で特に重要なのが、糖や脂肪の代謝を改善し神経細胞を守る働きがあるSIRT1だ」と今井先生は強調しているのですが・・・
このお話は、後日の話題にしたいと思います。
上の図は、本文内でも示したものですが・・・
「NMN」→「NAD+」→ ①「サーチュイン」の活性化の他に
もうひとつ、②ATP産生を増加させる・・・というものがありますね
①「サーチュイン」の活性化に関しては、ハーバード大学医学大学院を中心とする研究チームが、
DNA修復や老化防止に関わる生体分子「NAD」の作用メカニズムを明らかにしたと発表しています。
この仕組みを応用したマウスの実験では、放射線などによるDNA損傷に対してマウスの「DAN修復能力」を高められることが確認されたというのですね。
この内容の研究論文は、科学誌「Science」に掲載されています。
マウスに「放射線」をあててDNA損傷を起こす実験でも、
事前に「NMN」を与えておいたマウスではDNA損傷レベルが低くなることが確認されたそうです。
「NMN」を事前に投与したマウスでは、放射線によって引き起こされる血球数異常(白血球、リンパ球、ヘモグロビンなどの数の変化)もみられなかったということです。
このような放射線防護効果は、放射線の照射後に「NMN」を投与したマウスの場合にも認められたというのですね。
「NMN」投与によってNADの量を回復できるという今回の結果は、癌の放射線治療にともなう副作用などを抑える医療技術に応用できる可能性があると述べられています。
もちろん、まだまだ、ヒトでの検証は必要であると思いますが・・・
本文内で示したデータを見て、同様の結果が得られる可能性は高い・・・のではないか・・・なんて、期待してしまいますね。
今回のブログも最後までお読みいただきまして
ありがとうございました
(筆者撮影)
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士
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