日本医師会COVID-19有識者会議の公式ホーム ページには、こんな研究報告がありましたので、簡単なご紹介したいと思います
多くのウイルスに初めて感染した場合には、そのウイルスに対する免疫グロブリンのうち、IgM(アイジーエム)抗体というものが先に上昇して、その後にしばらくしてから、IgG(アイジージー)抗体が上昇してくるのが通常の免疫グロブリンの産生の流れとなります
ちょうど、下の図Aのようにですね
(図A) 画像はお借りしました
では、新型コロナウイルスでは、どのようになるのか?・・・
と言いますと・・・とすると以下の図Bのようになります
(図B) 画像はお借りしました
これは、東京大学先端科学技術研究センターの名誉教授である児玉 龍彦先生らのグループが示したデータです
不思議なことに・・・IgM抗体とIgG 抗体が同時に上昇しているのですね
一般的なウイルス感染に伴う抗体の産生される常識とは、異なるデータでしたので、いったいどんな理由があるのか?と皆、考えていたのですね
JTKクリニック内のラボ(研究所)では、海外への渡航のための証明書を作成するために多くの方がいらっしゃいます
多くの国の場合は、PCR検査のみですが、中国国内に入国する際には
IgM抗体の同時測定することが要求されるのですね
簡易キットではなく、さらに高度な抗体測定が必要ですので、行なっているのですが・・・
ときどきですが、不思議なデータの方がおりました
もちろん、海外の渡航準備として、他の人と会うのを避けたり、外出を控えたりするという感染予防の心がけを徹底している方が多いので
PCR検査で陽性となる方も少ないのですが・・・
その不思議なデータとは、PCR陽性となり、新型コロナウイルスに感染していることが示されるのですが、IgM 抗体が上昇しないうちに
IgG抗体が上昇を示す方がいたのですね
なぜだろうと考えておりましたが、次のように解説されていたのです
日本人における新型コロナウイルスに対する抗体の変動 は、IgGの上昇が IgMの上昇よ りも早い例が多いことが特徴である
さらに詳細な解説もされているのですが、その内容の一部は省きます
結論としては・・・驚くようなものになります
それは、日本人において、新型コロナウイルスに対する(T細胞記憶による) 「交差免疫」が存在する可能性を示唆している
「交差免疫」とは、例えば、新型コロナウイルス自体ではないのですが、似たような遺伝子を持つウイルスに過去に感染したことにより
すでに免疫応答する力を持っていることを示します
「T細胞の記憶」とは、先日、お話をしたヒトの「自然免疫」系の
NK(ナチュラルキラー)細胞ではなく、「獲得免疫」系の「細胞障害性T細胞」などを示しますね
日本と同様にコロナ被害の少ないエクアドルでも T細胞記憶の研究が行われているようで
「意外なことに新型コロナウイルスに曝露されていない健康人の44%で新型コロナウイルスへのT 細胞記憶があった」とも報告されています
さらに・・・
もしこの研究が示唆するように、健常者のおよそ半数で交差免疫によるT細胞記憶が 存在するのであれば、これは日本やその他東アジア各国においてコロナ被害が圧倒的 に少ないことの説明となる可能性があり、これまで謎とされてきた「ファクターX」の正体なのかもしれない
と結論が述べられています
同様のことは、海外の論文でも散見されますね
「ファクターX」とは、過去のコロナウイルスの感染による免疫の記憶であったとすれば、これまでは、ラッキーな状況であった可能性もあります
上のデータは、これまでの新型コロナウイルスでの検証ですので、
いわゆる「変異株」には当てはまらない可能性もありますので、
厳重に警戒していく必要があるかもしれません
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
<ブログ後記> 4月13日
今回は、以前から話題になっている「ファクターX」を新型コロナウイルスの抗体から推測できる可能性について、お話をさせて頂きました。
本文の中では触れなかったが「風邪」、医学的には「急性上気道炎」と呼ばれる疾患の原因は、90%以上が「ウイルス」によるものですね。
例えば、春、秋、冬に流行する上気道炎では
ライノウイルス、エコーウイルス、そして、コロナウイルスなどのウイルスがに多いとされますね。
どなたでも経験はあると思うのですが、冬の空気の乾燥した時期になると「風邪をひく」ことが多くなりますね。
では、通常の風邪症状の原因となるウイルスなのに、どうして、今回は世界的な流行「パンデミック」の状態となったのか?と言えば、一部分の遺伝子に何らかの動物のコロナウイルスの遺伝子がまぎれてしまったことより、人にとっては初めて接するウイルスとなってしまったからですね。
例えば、コウモリなどの体内では、コウモリの「コロナウイルス」が常在しているのですが、ヒトが森林奥地などの開発のために奥地に入ることにより、ヒトと動物のコロナウイルスの遺伝子が一部を入れ替える機会があると過去に人類が経験したことのない「新しい遺伝子配列を持つコロナウイルス」となるわけですね。(過去に映画になったこともあります)
つまり、過去に接したことのない「ウイルス」ですから、獲得免疫(生まれてから、感染することなどによって得る免疫)が機能しないので、当然、重症化しても不思議ではないのですね。
例えば、過去に感染したことないウイルスに感染すると・・まず、抗体としては、IgM(アイジーエム)が血液中に増加をします。
そして、少し時間が経つとIgG(アイジージー)が上昇してきます。その後、IgM(アイジーエム)が減少していくのです。
新型コロナウイルスでは、本文でも示したように東京大学先端科学技術研究センターの名誉教授である児玉 龍彦先生らの報告にもあるようにIgMとIgGが同時に上昇するというのが特徴となりますが、IgMの上昇がなく、IgGのみが上昇するというのは、免疫学的な常識から考えれば、まったく、説明が不可能ということになります。
では、なぜ、この現象が起こるのか?・・・と言いますと
本文でも示した・・・
日本人において、新型コロナウイルスに対する(T細胞記憶による) 「交差免疫」が存在する可能性を示唆しているというのです。
日本人だけでなく、アジア諸国全般と考えてよいのかもしれませんね。
「交差免疫」というのは、次のようなことを言います。
例えば、Aという遺伝子からできる蛋白(遺伝子)に対して、獲得免疫を持っているヒトがいるとします。
この獲得免疫は、抗体ばかりでなく、細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞というのを含みますね
この免疫を持つヒトが、Bという蛋白(遺伝子)に接したとします。
Bがもし、Aと完全に同じものではなかったとしても約70%程度の類似性があるとすると・・・どうなるか?
この場合、Aに対して得ている免疫(獲得免疫)が、初めて接するBに対しても同様にはたらく可能性があるのですね。
つまり、アジア諸国で何度も流行してきたと考えられる一般的なコロナウイルスに対する獲得免疫があった可能性もあり、そのことが
アジア諸国の新型ウイルス感染の死亡者の数などを抑制してきた可能性がある・・・まさに「ファクターX」の候補となり得るものですよね。
もちろん「変異株」の増加傾向がある現在の国内の状況には、必ずしも当てはまらない可能性もありますが。
今回も最後までお読み頂きまして
ありがとうございました
(以前のphoto.筆者撮影)
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