Barでの愉しみというと、もちろん、お酒を味わうということになるのでしょうが、
ちょっと、違った時間の過ごし方をすることも可能です。
 
 私も若い頃は、Barで、時間を過ごすことが、苦手でした。Barに出かける前には、覚えられるだけのカクテルの名前やBarで、使える用語を頭につめこんで、カウンター席の中央に陣取った記憶があります。
 そこで、ドライマティーニを注文するにも、マティーニをボンベイサファイアで とか
シェイクじゃなく、ステアでね なんて、年配のバーテンダーさんに言っていたものです。
 ボンベイサファイアとは、カクテルに使うジンの銘柄のことです。他にも瓶の形が、イギリスか、どこかの街中の消火栓の形をした、タンカレーというジンもあるのですが、ドライマティーニ1つを
注文するのに、いちいち、ジンの種類まで、20代の若造が、自分の親ほどの年代の方に注文をつけるわけですから、さぞかし、滑稽な姿に映ったことと思います。
 ちなみにシェイクというのは、シェーカーというカクテルを作るときに数種類の酒を混ぜ合わせる
道具で、カクテルを作ること。ステアというのは、数種類の酒を混ぜ合わせ、単にかきまぜて、カクテルを作ることをいいます。
 他にも、ギムレット、サイドカー、スクリュードライバーなどと幾つかのカクテルの名前を頭につめこんで、次々に注文していくわけです。それが、Barでの作法だと勘違いしてました。

 今は、Barのカウンターは、片隅に座るのが、居心地が良いことを知り、カクテルではなく、シングルモルトやバーボンの方が、心地よく酔えます。
 ただ、バーテンダーがシェーカーを振る音は、聞こえてくるジャズの音色と併せ、Barの雰囲気を醸し出すものだと思います。
 お酒の苦手な方でも、Barでの時間を愉しむことは可能です。アルコールの入っていないカクテルのレシピがありますからね。シンデレラ、コンクラーベ、サマー デライト、フロリダ、シャーリー テンプルなどが、それにあたります。
 
 夜の静かな時間の中で、ジャズやシェーカー、店内の華やかな談笑を聞きながら、喫茶室がわりにBarの片隅に なんて、贅沢な時間になるかもしれませんね。