「デイヴって、デイヴ・マーリー。あのイケメン先生のことですか?」
ファースト・ネームだけだから、人物が特定しづらいとかそんなことはない。
だって、私も由梨も互いに知っているデイヴというのは、彼しかいない。
にもかかわらず、こんな確認をする彼女がまた妙に愛おしく思えた。
「そう。そのイケメン・デイヴですよ。彼が是非由梨さんと飲みに行きたいって」
嘘をつくということに、何の抵抗もなかった。
またデイヴに対しても、申し訳ないとかそんな気持ちは特にない。
「北川さん。ここだけの話なんですけど、私イケメンってあんまし好きじゃないんです。で、
北川さんは?」
「何がですか?」
「北川さんも一緒に行くんですか?」
「そのつもりですけど」
「だったら、私も行きます。ちょうど生きた英語の勉強になりますし」
普段は自分で言うのもなんだが、割と勘の良いほう。
だけど、このときの彼女の真意はつかみきれなかった。
やはり期待感が私の野生の勘をも狂わせている。
「ってことは、デイヴに由梨さんが一緒に行ってくれるって伝えていいですね?」
「絶対北川さんも行くんですよね?」
「はい。私は死んでも行きますから」
「死んだら行けませんよ、たぶん。えへっ。あっ、北川さんが生きてたら行くんだったら、行くって
伝えてもらっていいですよ」
自分の勘が狂っているのは、さっき実感したばかり。
だけど、どうしてなんだろう?
どう考えても、由梨は私に気がある。
いろんな角度から考えても、答えがそこに落ち着く。
ほんの数秒の間で、かなりインテル大活躍。
それくらいシナプスが重労働をし、信号がたくさん駆け巡った。
"David. Guess what!"
まだ彼女の目の前にいる。
デイヴはずいぶん離れた講師の控室にいる。
しかし私の頭の中では、彼にかけるべき最初の言葉を既にシャウトしていた。