1944 | ほぼうさのブログ

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超人的な、いや、事実魔人としての超絶技巧を誇ったアートテイタムがそのキャリアも中盤にさしかかり、ピアノだけで弾きまくるのもトレンドじゃなくなったな…ということで出した3ピースのアルバム「1944」。
まず、我々日本人にとってはこのアルバムタイトルが衝撃的である。え、ちょっと待って。冷静に考えてみると1944年って、まだ太平洋戦争が終わってなくて、我が国日本は絶賛疎開などをして米軍の空襲を耐えてた時期じゃないか…?そんな歴史時代に、もうこれほどの技術と芸術性に到達していたのか。あり得ない。そう思い、非常にはっとさせられた一枚だった。

そもそもアートテイタムがピアノソロで絶頂だったのが1930年代らしい。だから、この時期から「落ち着き」モードに入るそうなのだが、実際にそのプレイを聴いてみると落ち着きとは無縁と思える技巧。神がかっている。
冗談抜きに、もしかして人間は、人間全般はこの時期から比べると、相対的にピアノが下手になったのではないだろうか?そして間違いなく、日本人は長らく「クラシック畑」にうつつをぬかしすぎたため、いまだにこの境地を覗くことすらできていない。

日本のピアノ教育はとても遅れていると思う。いや、一面では、ヤマハなどの企業努力によってクラシックピアノの練習が体系化され、一部の裕福な家庭に生まれ育った天才が海外で賞をとっている素晴らしい「先進国」なのだが、ジャズピアノはどうだろう?
ジャズピアノはいまだに教育が体系化されず、教本もてんでバラバラか、単語が難解で本としてとても読めそうにないものばかりだ。そんな国内の貧しい教育状況を反映してか、どうしてもジャズを習いたい若者は、みな高校を卒業してお金を貯め、ニューヨークやボストンに留学している。
ちなみに、そういった帰国系ピアニストがいるおかげで、東京でジャズピアノを個人レッスンで習うことはそこそこ容易い。しかし地方の過疎地や、宇都宮などの陰鬱な都市では依然として教育をうけるハードルが極めて高いと言わざるを得ない。ジャズが弾ける人材がそもそもいないのだ。いや、やはり東京はすごい。とにかく文化の中心地であり、人が集まってくるのもわかる。

ジャズピアノができないと、必然的に音楽の上で後進国になる。それは、クラシックとジャズでは楽曲のとらえ方、演奏の仕方、コンセプトが180度違うからである。真逆なのだ。
…という話をしようとしたが、考えてみると最初これはcdのレビューを書こうとしたのだった。いかんいかん。