「物価」とは、いろいろな物やサービスの総合的な価格水準を指し、「貨幣価値の逆数」
という見方がされる場合もある。
e.g. 新自由主義の唱道者ミルトン・フリードマンは、「インフレーションは、いつでも、
どこでも貨幣的現象(つまり、不換紙幣の発行量増加が唯一の原因)」と主張した。
出典:『米国の貨幣史(A Monetary History of the United States, 1867-1960)』」

経済における取引/交換にのみ着目した「ミクロ経済学」を基礎とする新古典派経済学の
主張を極端な形で貨幣(お金)に当てはめたとも見られる主張だが、新古典派経済学は
「貨幣ヴェール説」を取り、貨幣の経済への影響/効果を説明できる理論を含まない。
∴フリードマンの主張には論理的基礎がない。また、実際の経済は、生産、流通、消費、
さらには投機という様々な活動からなり、新古典派経済学は、それらの活動間の関係を
説明し得る基礎理論を含まない(にも関わらず、現在の「主流派経済学」ではあるが)。
なお、フリードマンの説(マネタリズム)に基づくインフレ制御の試みは失敗しており、
フリードマン自身も自説の誤りを認めている。

主流派経済学(新古典派経済学)での言説に反し、需給関係だけで価格が決まる状況は、
それほど多くない事、一口に需要と言っても、いわゆる「実需」と投機的需要では全く
性質が違う事に注意。(新古典派経済学で仮定される抽象概念ではない)本来の意味の
「市場」で取引されている物の値動きは、概して投機的需要の変動による寄与が大きい。
例えば、長年安定していた米価が2024年夏ころから急騰。これは、2024年の夏に開設
された米の先物市場により、米に対しての投機的需要が喚起されてしまった事が原因。
先物市場とは at DuckDuckGo
米の先物取引を知る:農林水産省
「全国のスーパーでお米5kg1袋の値段は?」小売物価統計調査による価格推移|日本の物価
このような「投機的需要の喚起」による価格高騰は、サッチャー政権が行ったような
さまざまな国営事業の私有化/私企業化によっても起こる。(注意:Privatization は
「民営化」と訳される場合が多いが、事の本質/元の英語の語義は私有化/私企業化)。
「公営住宅を民営化したことで、住宅価格が大幅に上昇… 医療も同様… インフラの」
民営化は、おそらく、99%の人々の予算を圧迫する物価上昇の唯一の主要な原因」
そもそも、一般市民が日常的に購入するものは、産業的に生産され、商業的な流通経路を
通じて販売される。生産には、生産物ごとに一定の生産期間が必要で、生産期間中には
生産量に応じた生産費用がかかる。流通過程での取引は、一定期間継続する事を前提に
行われるのが普通で、販売価格は、ある程度の期間維持することを前提に「生産ないし
流通費用に想定できる利益を加えた値」として決まる。価格設定時に想定された期間内の
需要の変動に対しては、価格変更ではなく、生産量の調整で対応される場合が大半。
生産ないし流通経路のどこかで独占/寡占状況があれば、「独占/寡占状況がある場」の
主体が価格に強い支配力を持つので、不当に大きな利益を得る場合が多くなる。その場合、
「(そういう主体は)「超過利潤」を得ている」と言われる。
こうした観点をも考慮した、インフレの現実的な考察は、例えば下記の記事に見られる。
マイケル・ハドソン「インフレの推進力」英語原文Google翻訳

上記の一般論から、どんな期間についてであれ、多くの物についての生産/流通費用の
構成要素のうち、価格が上昇し続けるものがあれば、多くの物の価格が全般的に上がり、
その結果、いわゆる「物価」が継続的に上がっていく。
古くから指摘されている事の一つは、土地は原則的には「新たに供給される」事がなく、
需給関係としては「需要だけが長期的には増加する」ことで価格や利用する際の費用が
上昇することの影響。また、土地は投機の対象でもあり、その結果としての価格上昇も、
例えば住居費上昇という経路で労働者の生活費増加、その結果としての賃金上昇を招き、
多くの物の生産/流通費用を増加させ、販売価格の上昇させる。前述したサッチャーの
新自由主義政策の結果は、その典型例。なお、サッチャー政権下では労働組合への弾圧
によって賃金上昇が物価上昇に対して抑えられ、庶民の生活水準の大幅な低下を招いた。
cf. 英国庶民のサッチャー死去の報道に対する反応

直近の日本での状況については、以下の (1)-(3) の要因が大きい。
(1) ロシアや中国への西側諸国の「経済制裁」で、世界のサプライチェーンが攪乱された
(ロシアや中国が生産している安い物が、多くの生産工程や流通経路で使えなくなった)。
結果的には「制裁」というより「自傷行為」になっている。 e.g. ドイツ経済の苦境)。
(2) 日本と他の欧米諸国との金利差により、日本の通貨(円)で他国の通貨を買い、
他国での金融投資に振り向けて利鞘を稼ぐ事(円キャリートレード)の増加による
「投機的需給関係での円売りの増加」で円の為替相場が下落し、日本の輸入品価格を
軒並み上昇させた。
(3) 米国とイランの戦争でホルムズ海峡経由で入ってきていた石油、LNG、肥料などが
こなくなった事で、供給量の減少による需給関係の変化に加え、紛争の長期化が予測
されている事で、先行きのさらなる需給逼迫の予想に基づく投機的需要を増加させた
(石油やLNGは、多くの物の生産工程/流通経路で、何らかの形で使われるため)。
cf. 西アジア産石油の代替として日本が購入した米国産石油は、パナマ運河の輸送容量が
ネックで到着が遅れる見通し。→当分は石油製品(e.g. ナフサ)の品薄は解消しない。
パナマ運河、通航量増加し大混雑 中東情勢が影響、供給網見直し
パナマ運河「封鎖中」→米国から買った原油を日本に運ぶことができない
米国のナフサ輸出が過去最高 日本やベネズエラなどが購入
【2026年度版】ナフサの輸入先はどこから?
他のアジア諸国には、日本より備蓄で持ちこたえられる日数が少ない国も多いので、
米国産石油の購入がアジア全体で増えた結果、こんな事に。下記は、3月時点で
早々にピンチになったベトナムとフィリピンに、中国が恩を売ったという記事。
中国 ベトナムとフィリピンにディーゼルなど燃料供給 禁輸にも関わらず