妊娠初期の中絶として、以前は掻爬術や吸引法といった外科的治療がありましたが、昨年から一部の施設限定ではありますが、内服薬による中絶法が認められました。


そこで、今回は外科的治療と内服薬による中絶を比較した報告を見ていきたいと思います。




https://www.ajog.org/article/S0002-9378(25)00111-5/abstract



対象

妊娠11週6日までの内服薬または外科的治療による中絶を受けた644人



主なアウトカムは、参加者が報告した重度の中絶後の痛みでした。二次アウトカムには、出血の重症度と、予想される痛みと経験した痛みと出血の間の不一致が含まれていました。



結果

644人の参加者のうち、516人(80%)が回答し、347人(67%)が薬による中絶を受け、169人(33%)が手術による中絶を受けました。


4分の1は激しい痛み、35.0%が大量出血、31.6%が予想より強い痛み、33.5%が予想より多い出血を報告しました。




痛みが強くなるリスクとしては、


・薬による中絶: 4.69倍


・重度の月経痛の既往歴: 2.60倍


・うつ病の既往歴: 2.13倍


が挙げられました。




想定以上に痛みが強くなるリスクとしては


・初めての中絶: 2.03倍


・初めての妊娠: 2.21倍


・帝王切開での出産歴: 2.06倍


・うつ病の既往歴: 1.72倍


が挙げられました。





自己申告での大量出血は


・薬での中絶: 9.19倍


・うつ病の既往歴: 2.15倍


がリスクとなっていました。




以上のことから、それぞれのリスクがどの程度あるかによって、出血や痛みに対して事前に備えておく事が大切である、という結論となっています。





元々、日本では掻爬術といった外科的治療しか認められていませんでした。


その後、子宮により優しい吸引法が認められ、最近になって内服薬での処置も認められるようになりました。



手術をしなくて済むので、内服薬の負担の方が軽いように思われがちですが、実際に子宮の中から赤ちゃんが入っている袋が出てくる時には、子宮が強く収縮するため、それなりの強い痛みを伴います。


また、レバーのような塊として出血が沢山出る事もあります。



中絶ではなく、自然流産される方の中には、痛みが強すぎたり、出血が多すぎて、救急車を呼ばれる方もいます。



そのため、内服薬であれば負担がより軽いと一概に言えるものではなく、それぞれのメリット、デメリットを考慮して、治療法を選ぶ必要があると言えますね。