産後数週間から数ヶ月の間、極端に悲しくなったり、怒りやすくなったり、今まで興味のあったものに関心を失うなど、産後うつと呼ばれる状態になる事があります。


今回は、その産後うつに対して、出産直後に薬を使う事で症状が改善したという報告が出てきたので見ていきたいと思います。






この論文では、デクスメデトミジンという薬が産後うつを改善するかどうかを検証しています。


デクスメデトミジンは、麻酔の時に患者さんが眠るための薬です。



対象

2022年〜2023年にかけて中国で予定帝王切開を受けた平均年齢31.5歳の338人。


EPDSという産後うつの評価スケールで9点以上だった18歳以上の方が対象です。



EPDSについてはこちら



スコアが9点以上で産後うつのリスクが高いと言われています。



対象となった338人を2つのグループに分け、産後、デクスメデトミジン0.5μg/kgを10分間点滴する群と、薬剤を点滴しない対照群で比較しました。


結果


手術7日後にEPDS:9点以上となった割合は、


・デクスメデトミジン群: 12.6%(167人のうち21人)

・対照群: 32.1%(165人のうち53人)


と、デクスメデトミジンによってリスクが0.39倍に下がっていました。



手術42日後にEPDS: 9点以上となった割合は、


・デクスメデトミジン群: 11.4%(167人のうち19人)

・対照群: 30.3%(165人のうち50人)


と、こちらもデクスメデトミジンによってリスクが0.38倍と下がっていました。



副作用としては、デクスメデトミジン群で血圧低下が18.3%(対照群では9.5%)と、2.15倍のリスクとなっていました。



以上のことから、産後比較的早くにデクスメデトミジンを使うことで、産後うつのリスクを下げられる可能性がありそうだ、という結論になっています。



産後うつに関しては、カウンセリングのような関わり方や、育児サポート、心療内科的なアプローチなどがメインになるという認識でした。


それが、産後すぐにデクスメデトミジンという麻酔の時の薬を使う事で、産後うつのリスクが下げられる、という報告は非常に興味深いものでした。



デクスメデトミジンは鎮静剤と言って、高用量では眠ってしまいますが、低用量では不安や興奮を鎮める作用があり、それに期待して産後すぐに低用量で使用しているようです。



クリニックレベルでは全く関係のない話ではありますが、産後うつのリスクを下げられるのであれば、日本でも導入が進んでいくといいのですが、、、