先日、腕に埋め込むホルモン剤として、インプラントというタイプの避妊効果について、ブログでご紹介しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0002937824000619
この論文で報告されているのは「Annovela」というホルモン剤が染み込んでいる避妊リングで、自分で腟内に入れて使うタイプになります。
この避妊リングの使い方としては、自分で腟内に入れて21日間過ごし、その後に自分で取り出して過ごす、というサイクルを13回、つまり1年近く使えるタイプのものとなっています。
対象
避妊リングを使用した2,064人のリング自然脱落率と妊娠率について調べています。
結果
75%の女性は一度も自然脱落した事はなく、1ヶ月あたりで計算すると91〜97%の女性が脱落せずに使用できました。最も脱落率が高かったのは、最初の1ヶ月間の9%で、次の2〜8ヶ月では脱落率が約半分に、さらに次の9〜13ヶ月では脱落率が約3分の1になっていました。
脱落した人のうち、62〜84%の人は1ヶ月あたりの脱落回数が2回以下でした。
人種や年齢、BMIは脱落率に影響していませんでした。1年間に妊娠する割合を示すパール指数で比較すると、1ヶ月目に脱落した人では3.99、全く脱落しなかった人では2.39と、脱落した人の方がややパール指数が高い傾向がありましたが、自然脱落が妊娠のリスクを高めると言えるほどの大きな差ではありませんでした。
ちなみに、その他の避妊法によるパール指数は以下の通りです。
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/24b8aaafa1f584a840da5d0fbc600d8f.pdf
これらと比べると、避妊リングの避妊率はピルやミレーナと比較してやや高いことになりますが、コンドームとほぼ同等か、それ以上に高い避妊率が期待できるといえそうです。
今回の報告では、1ヶ月目の自然脱落により妊娠率が非常に高くなる、という結果ではなかった事から、自然脱落が妊娠率上昇のリスクとは考えにくいとされています。
それは、自然脱落に早めに気付いて、再度挿入した事による効果であったり、リングが脱落したとしても、リングに含まれるホルモンが継続して体に作用する効果などが原因だったと思われます。
このように、自然脱落するリスクはあるものの、避妊リングはピルやミレーナが難しい方にとって、避妊法の一つの選択肢になるのではないでしょうか。
最後に、避妊リングである「Annovela」のメーカーサイトで、その特徴を確認しておくと
・35歳以上の喫煙者は使えません
これはピルにも似たような条件があるのですが、避妊リングにも女性ホルモンが含まれている事から、血栓症を引き起こすリスクがあり、喫煙によって更に血栓のリスクが上がる事になります。
また、ピル同様、使い始めと、4週間以上使用中止してから再開する時に血栓リスクは高くなります。
・HIVやその他の性感染症の予防効果はありません
ピルやミレーナも同様ですが、性感染症のリスクを低くする為には、継続してコンドームの着用が勧められます。
・高血圧
・糖尿病(35歳以上or20年以上or腎臓、眼、神経などの合併症を認める)
・ひどい偏頭痛
・肝機能障害
・女性ホルモンが関与する乳がんなどの癌
・原因不明の不正出血
・C型肝炎治療薬
といった方たちは避妊リングが使えない事になっています。
また、副作用としては、
・血栓症 ・アレルギー ・肝機能障害 ・高血圧 ・胆道障害 ・コレステロール異常 ・頭痛 ・不正出血 ・うつ ・子宮頸がんリスク ・口や目の周り、喉の腫れ ・顔の色素沈着
などがあります。
最も多い副作用としては、避妊リング使用者の約5%に
頭痛、吐き気/嘔吐、カンジダ感染、腹痛、おりもの異常、尿路感染、胸の痛み/張り、不正出血、下痢
などが挙げられました。
以上が日本ではまだ認可されていない避妊リングについての説明となります。
いずれは日本でも認可される日が来るかもしれませんが、もし海外から輸入して提供できるようであれば、また改めてご紹介したいと思います。