今回は「門脈」という血管と妊娠に関する少し珍しい話をしようと思います。
門脈とは、胃・小腸・大腸・膵臓・脾臓などのおなかの臓器から帰て、肝臓に入って行く静脈のことです。
この門脈が、何らかの原因で血流が悪くなると、門脈周囲にその流れを補う新たな細かい血管が作られるのですが、これを「海綿状血管腫」と呼んでいます。
この門脈海綿状血管腫と妊娠に関する論文がこちら。
この論文では、門脈海綿状血管腫と診断された8人の妊婦さんの妊娠経過について評価しています。
・8人の妊婦さんのうち、1人だけが妊娠28週に静脈瘤破裂が起きていました。
(門脈の血流が悪くなると、そこに流れ込む予定だった血液が他の細い血管に流れてしまい、その血管が腫れてしまう「静脈瘤」ができる事があります。)
・6人は帝王切開の予定をしていましたが、2人は胎児ジストレス(赤ちゃんの元気がなくなる事)や胎児発育不全で緊急帝王切開となりました。
・1人を除いて、産後に血栓症予防の薬が処方されていました。
・出血や血栓の合併症が起きた方はいませんでした。
・4人に胎児発育不全を認めましたが、流産や死産はありませんでした。
門脈の血流が悪くなると、そこに血栓ができたり、脾臓という臓器の血流が増えて血小板が減ってしまい、出血しやすくなる合併症が懸念されます。
(もともと脾臓は血小板を蓄える臓器で、脾臓への血流が増えると、それに伴って脾臓内に血小板が蓄えられ、体の他の部分での血小板が減る事になります)
そう言った合併症が妊娠にとってハイリスクであるものの、門脈海綿状血管腫を伴う妊娠は、比較的良好な結果となっていました。
8人という少人数での検討なので、より大人数での検討が必要ではありますが、門脈海綿状血管腫そのものが妊娠を禁止する状態ではない、という事が言えそうです。
今回は門脈に関する病気と妊娠に関する論文を見ていきました。
かなり珍しい病気ではありますが、もし該当する方がおられたら、参考にしてみてくださいね。