百日咳という病気は、咳やくしゃみから始まり、徐々に咳が酷くなっていく病気で、比較的小さい子供に感染者が多くなっています。



また、6ヶ月以下の乳幼児では重症化するリスクもあり、その予防が大切になっています。









日本では生後3ヶ月から三種混合ワクチン、もしくは四種混合ワクチンの定期接種が始まり、それによって百日咳の抗体がつくのですが、ワクチン接種が始まる生後3ヶ月までの間は、赤ちゃんが百日咳に対して無防備になっています。




その期間の赤ちゃんを百日咳から守るために、海外では妊娠中に妊婦さんがワクチンを接種して、赤ちゃんが生まれる前に百日咳の抗体を移して、赤ちゃんを守る方針が取られています。



実際にイギリスでは妊娠16週以降の妊婦さんが妊娠中に百日咳に対するワクチンを接種することで、3ヶ月未満の赤ちゃんの百日咳感染数を78%、入院数を68%減らし、百日咳による死亡を95%予防する効果が確認されました。








アメリカの産婦人科医の代表である「ACOG」という団体では、以下のように推奨しています。






・妊婦さんは、妊娠するたびに妊娠2736週にTdapを接種すること



(海外では、百日咳、破傷風、ジフテリアの3つの病気に対するワクチンをTdapと呼んでいます)



・赤ちゃんと一緒に暮らす事になる家族も、赤ちゃんを迎える2週間以上前にはワクチンを打っておくこと



・もし妊娠中にワクチンを打たなかった場合、大人になってからTdapワクチンを接種していなければ、産後できるだけ早く接種すること



・妊娠27週以前にワクチンを接種していたら、追加のワクチンは必要ないこと






実際に妊娠中の百日咳ワクチン(Tdap)を接種した場合の効果について、いくつか論文を見ていきたいと思います。








アメリカで20112015年にかけて、妊娠2736週にTdapを接種した場合、赤ちゃんが百日咳で入院するリスクを5872%予防し、人工呼吸が必要になったり、百日咳が原因で亡くなる赤ちゃんはいませんでした。







こちらの論文では、Tdapを接種するタイミングとして、妊娠中と産後で比較しているのですが、産後にTdapを接種するより、妊娠2736週に接種した方が、出生8週間までの百日咳を85%予防できる結果でした。






20102015年にかけて、妊娠中にTdapを接種した148,981人の赤ちゃんでは、出生2ヶ月までの百日咳を91.4%予防し、生後1年までの百日咳を69.0%予防しました。




以上のように、妊娠中のTdap接種は、生まれたばかりの赤ちゃんを百日咳から守る効果が非常に高いことが伺えます。





ただ、ここまでまとめてきた「Tdap」というワクチンですが、残念ながら日本ではまだ認可されていません、、、




そのため、日本で接種するとすれば、個人輸入された「Tdap」を接種するか、Tdapと組成が少し異なる「トリビック」というワクチンを接種することになります。




まず、個人輸入されたTdapのメリットとしては、海外で多く使われており、データがしっかり揃っていることが挙げられます。



クリニックや病院ごとに個人輸入されているため、対応している医療機関を探さないといけませんが、お近くにあれば利用しやすいかと思います。



デメリットとしては、日本ではTdap接種が認可されていないため、万が一なにか副反応が生じた時に以下のような補償がない、という点になります。








一方で、日本で認可されている百日咳のワクチンとしては「トリビック」というものがあります。



こちらは、百日咳、破傷風、ジフテリアの3種類に対応したワクチンで、いわゆる「三種混合ワクチン」として使われているものです。



そのため、万が一副反応が生じた場合に上記の補償制度の申請が可能になります。




デメリットとしは、Tdapとトリビックの組成が少し違うという事が挙げられます。



トリビックでは、Tdapに比べてジフテリアの量が多く、破傷風の量が少なくなっているのです。



これに関しては、いずれも「不活化ワクチン」として妊娠中の接種が問題ないとされているタイプになりますので、その組成の違いが問題になる可能性は低いと言えます。




このあたりは、それぞれのメリットとデメリットを比較して選んでもらう形になります。






日本国内では年間1万人近い患者数が報告されていた百日咳ですが、2021年には700人ほどに激減しています。




これは、その他の感染症でも同様の傾向があり、おそらく新型コロナに対する感染対策が功を奏しているからだと思われます。



そういった感染対策が徐々に緩くなっていく中で、様々な感染症が増えていくリスクを考えると、百日咳に対するワクチン接種についても、積極的に考える必要が出てくると言えます。




接種するワクチンをトリビックにするのかTdapにするのかという点はありますが、妊娠中の方は一度検討してみてくださいね。