今年は花粉症がかなりキツく、外来でも妊婦さんに花粉症の薬を処方することがとても多くなりました。
妊婦さんにも使える薬はあるので、花粉症で辛い時は、かかりつけ医に相談して下さいね。
それで、今回は花粉と同じ時期に問題になることが多い「黄砂」と、妊娠の関係についてみていきたいと思います。
黄砂は、中国やモンゴルの砂漠から飛んでくる非常に細かい砂で、毎年3〜5月に最も多くなっているのですが、この黄砂と妊娠中の「常位胎盤早期剥離」の関係が指摘されているのです。
それを検証した日本の論文がこちら。
この論文では、2009年から2014年にかけて、9つの都道府県で常位胎盤早期剥離と診断された3,014人の妊婦さんを対象に検証しています。
結果
9つの都道府県によって、黄砂が多く飛んだ日数は15〜71日と幅があったのですが、黄砂によって常位胎盤早期剥離のリスクが1.4倍となっていました。
また、妊娠35週以降に限って検証すると、そのリスクは1.6倍になっていました。
常位胎盤早期剥離は、0.5〜1%程度の確率で起きると言われていて、血圧が高くなったり、喫煙がリスク因子になると言われてきましたが、今回のデータから「黄砂」もリスクになる可能性が考えられました。
典型的な症状としては、出血や腹痛、頻回の張りが挙げられるのですが、これらの症状は切迫早産でも起きることがあり、発症初期には区別が付きにくい事もあります。
急な腹痛から安静にしても引かない痛みが続き、出血も伴う場合には常位胎盤早期剥離を強く疑う所見であり、救急車を呼んでもらう必要も出てきます。
妊娠期間中は常に起きる可能性がある常位胎盤早期剥離ですが、特に黄砂が飛んでいる時期には、より慎重に症状に気をつけて頂き、場合によっては外出を控えるなどの対策を取ってもらっても良いのかもしれません。